第227話 いよいよビーツ王国へ
「何だなんだ。何かあったのか?」
「おい! そこ! 何こそこそと話してるんだ。冗談でも誤解を生むようなことをいうなよ」
日頃は敬語で出来るだけ話してる俺だが、今回ばかりはローズの悪戯には強く出ることにした。
「ユウマさん、何怒ってるんです? ちゃんと正確に一から説明してるだけですよ。昼過ぎまで二人が寝ていたので、降りれなかったと説明してるだけです。それに研究をしていたので寝過ごしたのを私達が誤解して、いやらしい事をしてたんじゃないかと疑ったとちゃんと説明してますよ」
何という反論……。確かにその通りだが一々そこまで正確に説明する必要ないだろう。事実じゃなくても恥ずかしいんだよ当人たちにすれば、見てみろサラの耳が赤いじゃないか……。
これ以上何かを言うともっといじられそうだから、敢えて反論せず、フランク達の成果を聞くことにした。
「フランクさん、森の調査の方はどうでした?」
「おう、それなんだがな。全部は調査できなかった。以上」
ちょっと待てよ、この人達は示し合わせてでもいるのか? 何が以上だよ、それじゃ何も分からないじゃないか?
「全部は無理なのは当然でしょう。たった3日しかなかったんですから。それでもいくら何でもそれだけで以上はないでしょ。せめてどこまで調査したとか、どんなものがあったとか。それぐらいはお願いしますよ」
「フランクさん、流石にそれは無いですよ。ユウマさんが言ってる事の方が正しいです」
流石は錬金術師のまとめ役のミランダ、ちゃんとそういう道理は弁えているな。
「ユウマさん、恐らく今回は森の半分も調査出来ていないと思います。ですが、魔物に関してはそれ程危険な物は居ませんでしたが、殆どが新種というか? 私達が見たことない物ばかりでした」
これが報告だよ。いくら内容が薄くても事実を報告して貰わないと何の意味もなくなってしまう。前回はほぼ直線的に山に向かっての調査だったから、今回は細かく調査したんだから半分も出来れば御の字だ。
「私からも付け加えさせて貰うと、植生に関しては私達が知っている薬草では殆どが原種。それ以外に初めて見る植物には食用の物や薬効のある物もありました。一応ユウマさんからお借りしたアイテム袋に魔物と一緒に持って帰ってきました」
何だよ十分な内容じゃないか。それなのにフランクはどうしてあんな報告をしたんだろう?
俺がフランクの報告に疑問を持っていてそれが顔に出ていたのか、ミランダが近寄って来て、小声で俺とサラにフランクがなぜあんな感じなのか教えてくれた。
「実はですね、フランクさんの鑑定に変化が起きたんですよ。ユウマさんが依然言っていた、人の鑑定で数値が見えると話があったでしょ。あれの前兆のようなことが起きたんです。ですが結局森の調査中これでもかと鑑定し続けてもそこまででそれ以上に成らなかったから、あの調子なんですよ」
成る程、フランクは拗ねてるわけね。30半ばのおっさんがまるで子供のようだな……。
ミランダから教えてもらった状況から、フランクの鑑定がそれ以上進化しなかった理由が何となく分かる。
恐らく、人物鑑定不足だと思う。この島に来て新しい物を沢山見たことや鑑定スキルの可能性を感じたことで、成長が止まっていた鑑定スキルが再び成長を始めたが、数値という人物鑑定でのみ見える物なのに、それをやらずにいくら物の鑑定をやっても成果が出るはずがない。
でも、予兆というのも初めて聞くし、スキルについてのこれも新しい発見だ。
拗ねてるフランクには少し意地悪して、俺の予想は教えないことにした。どうせビーツ王国に行けばそこで人物鑑定をやらせまくれば答えが分かるだろうから、ここでは不貞腐れていればいい。
そんな感じでフランク達の報告を聞いたから、不貞腐れてるからなのか俺達の報告を聞いてバカにしたかったのか、お前たちはどうなんだという感じでフランクが俺達に聞いてきた。
「ところで、ユウマ達はどこまで調査できたんだ?」
フランクがちょっと偉そうに俺達に質問した時、ロイスとローズは「あぁ~あ、聞いちゃったよ」という感じの顔をして、空を見上げた。
それを聞かれたなら答えてやろうと俺が、話始めようとしたら、俺の一歩前にサラが出てそれはもう水を得た魚のように、親切丁寧に調査開始から現在までの事をフランクに語って聞かせた。
その内容の濃さにフランクは途中からタジタジになっていたが、それに食いついた人物がいた。そう、予測通りにエマがこちらもサラ同様、身を乗り出して聞いていた。
その後はもう予想通り、エマとサラは付与の話で盛り上がったが、それだけに留まらず、二人で日が暮れるまでパルオイスを狂ったように捕獲していた。
残る俺達はロイスが主人であるフランクの慰め役、ミランダとローズと俺はこの島の今後をどうするかの話し合いをしていた。
採取できる薬草の効果が異常だから、この島の存在は秘匿しないといけない。勿論、最大の理由はミスリルの鉱脈とこの島の保全の為だ。
問題はその範囲だ。ここにいるメンバー以外にも秘密にするのか? それとも国に対してだけで最低でも賢者候補には知らせるのか? 見習いには?
「そんなのお前の土地にしてしまえば良いじゃないか。この島の存在は誰も知らないし、他に大陸があったとしてもここまで来れる奴は居ないだろう。いるならとっくの昔にこの大陸と交流をしてるはずだ」
フランクはそういうけど大陸の位置関係からすると、他の大陸からこの大陸に来ようとしたら一番に魔境の森にぶち当たるんだよね。
インカ大陸
北極点 アト大陸
ムーア大陸
島
この配置だからこのムーア大陸の北東から北そして東から南東には魔境の森があるから、言ってみれば天然の要塞のようになっているんだよ。ましてや魔境の森のどの辺りかは不明だけどドラゴンが生息する地域があるから、回り込まれない限り鉄壁の守りと言ってよい。
今回の調査ではこの近辺に島は発見出来なかったが、もっと調査すればあるかもしれない。ただこの星の殆どが海であることは大陸の位置関係で分かっている。
まして南半球には大陸はないことも分かっているが、もしかすると南半球には島が多くあるのかもしれない。
日本列島だって実際の面積は小さくないけど小さな島国だと言われている。アフリカ大陸に隣接しているマダガスカル島でも日本の国土面積の1.6倍の面積だ。それでも島である。
ここはフランクの意見を聞いて、この島は俺の物という事にしよう。上空から見た感じだとこの島に上陸出来る場所はこの海岸ぐらいしかないから、船による上陸だけに備えておけば良いだろうから、海岸に何か所か立て札でも立ておこう。
勿論、偽装工作をする連中もいるかも知れないから、森の中にも何か所か作って置けば言い逃れ出来ないだろう。
「それじゃ、この島は俺の所有物という事にしますね。近いうちにまたここに来て拠点でも作ってしまえばそう簡単に盗られることもないでしょう」
そろそろ夕飯なんだけど、どうしようかな?出来合いというのも寂しいしよね。折角海まで来てるのに……。
あ! そうか、サラがBBQようの網を加工してしまったんだった。予備は無いからどうするか?
そう言えばあれがあったな。あれを捌いて刺身とステーキにして食べようか。しかしあれを捌くのは此処では出来そうにないんだよな。インベントリでやれば解体も簡単なんだが、さてどうする?
やっぱり流石にインベントリの解体機能はばらせない。仕方がない海の調査でぼつぼつ集めた小型の魚で鍋でも作りますか。
昆布を回収して乾燥させているし、土鍋なら土魔法で作れるから何とかなるでしょう。野菜もインベントリにあるしな。醤油と柑橘系の果物でポン酢も作れるから大丈夫だな。この島最後の晩餐だ盛大に行こう!
最初に獲ったパルオイスの貝柱も入れて豪華な海鮮鍋だ。海鮮を鍋で提供したことは無かったから。
「うめ~~~ なんだこれ、魚介類ってこうして食べると最高だな」
「本当は冬に食べる方が良いんだけど、この南国で食べるのも良いでしょう」
そうだ明日出発前に塩だけは作って置こう。錬成陣を使えば簡単に作れるだろうし、錬成陣が使える人数も多いからな。
そう言えば大量の砂も持ち帰らないといけないから明日は忙しくなりそうだ……。
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