第278話 やっぱり学校

 フランクの活躍で資源の宝庫という事が分かれば、後は足りない物を補えば良いのだが、考える必要もなく学校という答えが出てくるけどこれが難しい。


 俺達はここにずっと居れないから、当然学校を作るなら教師が必要になる。その教師をどうするかが一番の問題。施設なんかはラロック同様俺だけでも作れるから問題にもならないが教師はな……。


 資源発見の夜サラと二人に成った時サラに相談してみた。


「サラどう思う? ここには絶対学校が必要なんだけど、教師がいないんだよ」


「そうだと私も思っていましたよ。ロベルトさんの話から此処にはスキルを持っている人が少な過ぎますからね。教師はラロックから連れてこれないんですかね?」


「俺もそれは考えたけど、そう簡単じゃないと思う。ここに連れてくるには馬車でも良いけど、そうすると俺達が頻繁にここに来ることが出来なくなる。飛行船の存在を知っているなら問題ないけどね」


「そうですね、ここは大陸の外れですもんね。そんな場所に来てくれる人がいるかも分からないし、飛行船の事を教えないと色々不都合ですね」


「そうなると国も絡んでくるから、更に問題なんだよ」


「国と直接関係ない拠点のメンバーには妻帯者もいるでしょ。拠点で結ばれた人達が……。あの人たちなら家族で来てくれる人もいると思うけど、それを勝手に決めては拙いと思うんだよ」


 国に丸投げした以上こちらも俺達以外は好き勝手に出来ない。それにフランクやニックには家族もいる。家族の方は気にしていないようだが、やはりそれはいけないと思うんだよね。家族を早くに失った俺としては特に気に成る。


「それなら期間を決めて、赴任して貰うというのはどうですか? 移住ではなく転勤場所として……」


「それも良いんだけど、上手く行くかは分からないけどひとつこれはどうかなというものはあるんだ。サラは知ってる? ロイスさんとスーザンさんの関係?」


「あぁあの二人ですね気づいていますよ。恐らく全員が。もしかして二人をくっつけてここに残そうという事ですか?」


 教師云々もそうだがやはり責任者が必要だから、その適任者がスーザンなんだよ。ラロックでも学校と病院の両方の責任者だったし、十分過ぎる位立派にこなしていたからね。ただスーザンは貴族、一方ロイスは庶民だから俺同様身分差があるからそう簡単にくっつけられない。


 俺の場合は特殊な関係だったからまだ何とかなったけど、ロイスは賢者候補だけどそこまで目立っていないし、貢献度が低いから叙爵 は無理だろう。全く可能性が無い訳ではないけどね。国際会議には出ているから……。


「くっつけて残すんじゃなくて、残してくっつけるが正解かな。ロイスに実績を作らせて、叙爵 させられないかなと思っているんだよ」


「あぁそういう事ですか。でもそれならやりようは他にありますよ。賢者候補と見習い全員を叙爵 させれば良いんですよ。個人ではなく全員で見ればその資格はあると思います」


 確かに国から身を隠せと言われるぐらい今の俺達は重要人物だ。それなら身を守るためにも平民じゃない方が良い。貴族なら手出しするのが難しくなるからな、これは良い考えだ。


 それにしても皆気づいていたのね。ロイス達の事……。俺だけだと思っていたのに……。


 サラが良い案を出してくれたから、これにもう一つ付け加えてエスぺランス王国に許可を貰うか。上手くけば行けば良いけどな……?


 結婚式の時に王家との伝書クルンバを作っておいて良かった。こういう時に直ぐに連絡できる。相変わらずクルンバとアクイラの世話はロイスがしてくれるから俺は何もしなくていいしね。本当に好きだよなあの人。


 俺が転移箱作ったら怒るかな? 転移陣の事は知っているからそのうち出来るだろうとはもう気が付いてるかもしれないけど。


 ロイスにはまだ感覚共有の魔法教えていないけど教えたらどうなるんだろう? 今であれだよ、考えただけでも怖くて今は無理と思ってしまう。


 早くめどをつけて島に行ってその後に移りたいんだけど、どうなるかな? もしくは島を後にする手もあるけど、ダンジョンがあるからフランク達が許してくれないだろうな。


 それから三日経って王家から連絡が来た時には村人も収穫を終え村に帰って来ていた。村人が帰って来た時には、予想通り崇拝騒ぎが起きてそれを治めるのに苦労したが、今は何とか落ち着いた。何を言っても聞かないだろうと思ったから、こちらから頼むからと頭を下げてお願いしたら、逆に村人が恐縮しまくって折れてくれた。


「これは俺の希望が全部通っているな。これなら次に進めそうだ」


「あなたそれってどういうことですの?」


 サラには王家に出した要望を教えていなかったな。


「それはね、先ず教師の件は拠点のメンバーを使うのはOK、但し馬車での移動にする事。その代わり、賢者候補と見習いの叙爵 はOKで従者も付けることを許可してくれた。叙爵 は男爵位、それも一代限りではない正式な男爵位。名誉が付かない爵位だよ」


「女性が叙爵! それも男爵! 凄いです! よく許可が下りましたね?  ただ馬車の移動という事ですがそれだとビーツ王国は通れませんね」


 その通りなんだよね。ビーツ王国何て通って来たらエスペランスとユートピアの関係がバレてしまう。だから共和国、フリージア王国経由での侵入に成る。女性の叙爵については俺も良く許可したなとは思うし、男爵位は驚きだった。騎士爵で十分だと思っていたからね。多分囲い込みの為だろうけど思い切ったものだよ、俺は形式上グーテル王国の貴族になってるからそれもあるよな。


「だからトンネルを使って来てもらうんだけど、ミル村の境には堀があるから誰かが迎えに行かないといけない」


「その誰かってあなたしかいないでしょ。堀を一時的に通れるように出来るの何てあなたしか出来ないんですから」


 はい、良くお分かりで、我が奥様は……。堀なんか掘らなきゃ良かったかな? でもミル村をフリージア王国にただ利用させるのが惜しかったのと、当分は秘密にしたかったからなんだよね。


ただ不思議なのはこの堀が未だに話題にも上っていない事。それだけ人が来ない場所という事なんだけどね。


 夕食の時に今回の叙爵について皆に報告したら、フランクは椅子から転げ落ちるは、錬金術三人衆他、庶民組はポカンとして一言も喋らないもの、口から食べてる物を吹き出すものなど、十人十色の反応を見せた。


「な! 何ていう事をしてくれたんだよ」


「私が男爵……」


「……」


「まあまあ、私はユウマさんのやった事は正しいと思いますよ。王族の立場から言わせてもらえば、良く言ってくれただと思います。貴族になるという事は忠誠もありますが逆に庇護下に入る事でもありますから」


 流石はマーサ、グーテルの王女だけはある、叙爵の意味をちゃんと分かっている。


「あぁそれから叙爵しましたから、従者を付けてくださいね。拠点から教師を呼びますから、それに同行させてもいいし、ここで探しても良いです。ただここで探す場合は十分考えてくださいね。秘匿してることが多いですから」


「あなた、私はどうなるのですか? 叙爵は必要ないですけど、従者は付けて良いのですか?」


 サラも呼びたいんだよね。皆に。従者が付くなら自分もエリーを呼びたいんでしょ。今回は付いて来ていないけど、本当は離れたくなかったんだよね。でもな~~俺の計画では皆を島に送って行った後、新婚旅行に行く予定にしてるからな。エリーが来ると俺にもついてきそうなんだよ。ましてそれをサラも許可しそうなんだよね……。


 この世界に新婚の二人だけでする新婚旅行の習慣は無いからね。どんな旅行でも貴族なら従者が付いてくるのが普通だから気にしないんだよ。


 結局みんな従者は気心の知れた相手が良いという事で、賢者候補組は拠点から、見習い組はグーテル王国から呼び寄せることにしたので、教師の選抜や従者の集合から移動を考えたら、ひと月は掛かるという事で、学校施設の建設が終わったら一度島に行くことに成った。


 その間にロベルトたちには学校に通いたいもしくは通わせたい人の人選を任せた。定員は50人、今回は規模も小さいからこれで行くことにした。本来なら元領都に作るべきなんですが、資源の場所が近い事と、ミル村に近いからここに作ることにした。ここならミル村からも留学させやすいからね。


 兎に角トンネルの事は当分広まって欲しくないからこの方が良い。



 学校はもう自重しないので、一気に俺が魔法で作っていったから、約一週間でラロックの学校の縮小版が出来上がった。建築風景を見ていた、マックスたち元宮廷魔導士や俺の魔法を見たことがないメンバーは驚愕したと同時に、魔法の可能性に希望を見出していた。魔法職ではない薬師や鍛冶師のメンバーもね。






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