第147話 賢者候補と見習い
なんだかなし崩し的に王家や貴族と関係が出来てしまっているけど、このままその流れに乗せられては溜まらないので、ここはきちんと対策を取らなければいけない。
その為にも賢者計画は一刻も早く軌道に乗せなくてはいけない。
候補が到着した翌日から早速、研修を開始した。
「長旅の疲れも抜けていないでしょうから、今日はこれからここで学ぶことについての事を話してから、皆さんで会議をしてもらいます」
「ユウマ、先ずは自己紹介だろう。お互いに初対面なんだしそれから始めないと」
そうだった、そんな当たり前の事すら忘れているなんて、俺かなりテンパってるのかな? まぁそれもしょうがないか、今俺の目の前に目をギラギラさせてワクワクが止まらないぞという顔をしたマーサがいるのだから。
何て言ったらいいのか、この人には圧倒されるんだよね。スーザンと同じタイプなんだけど、それだけじゃない、オーラみたいなものが溢れ出ているんだよ。
「それじゃ、先ずはフランクさんたちから自己紹介をしてもらって、次にグーテル王国側の方にしてもらいましょう。フランクさんお願いします」
こちら側の自己紹介の最中ずっとマーサは目をパチクリさせて驚いていた。そりゃそうだよね、錬金術師は女性だけだし、商人が二人もいる。
良く考えるとうちのメンバーにも貴族が一人いるんだったな。あまりにも貴族ぽく無いから忘れていたけど、スーザンは貴族だった。
「では続いてグーテル王国の候補の方々の自己紹介をお願いします。但しマーサさんについては俺から先に紹介します」
自己紹介でも良いのだが流石に王女ですからね。最低限の儀礼として、王女の紹介は俺がする。
「こちらのマーサさんですが、グーテル王国の王女様です。ですが王女様より堅苦しいのは嫌いだという事と生徒であるというお言葉を貰っていますから、特別形式ばった話し方はしなくも良いです」
そう紹介した時、こちらの候補全員の目が俺に向かった。お前は何を言っているんだという目で……。
グーテル王国側の候補のメンバーは旅の間に、マーサに言いくるめられているんだろう、普通に接しているからな。
「おい、ユウマ流石にこれはきついぞ。どうしてそうなった? お前は拒んでいただろう、王家との関係」
フランクが小声で俺に聞いてきた。
「分かるよ、その気持ち、でもね俺が一番きついのよ。それを乗り越えて頑張っているの、協力して欲しいな」
俺はどうしてこうなったのか、円陣を組んで皆に小声で
「そういう事ですか。それではしょうがないですね。サラさんの幼馴染ですからなんとか対応しましょう」
「ありがとうございます。よろしくお願いしまよ、ミランダさん」
説明を終えて、仕切り直してからグーテル王国側の自己紹介が始まった。
「私は王宮で役人をしているロベルトと言います。年齢は27歳です。よろしくお願いしたします」
「私は王都で薬師をしているガーギルと言います。年齢は25歳です。よろしくお願いします」
こんな感じで自己紹介が進んだ。まぁごく普通の自己紹介ですね。
錬金術師がノリス、30歳。魔法士がローマン、28歳。鍛冶師がゴラン、30歳。そして最後の商人がミレーヌ、20歳。グーテル王国側は男性5人の女性2人。
お父さん良くこんなメンバー揃えられたな? 弟子制度がまだ普通の国で、平民の職業スキルを持った人を集めるのは難しいはずなんだが……。
弟子制度が普通という事はギルドも権力を持っているから、余程うまく引き抜かないと反発される。
マーサは自己紹介の時、驚いていたが商人はグーテル王国側にもいるし、尚且つ女性だ。年齢が20歳だからサラやマーサと同い年だが、どういう理由で選抜されたのかイマイチ分からない人物だな?
ただこういう人物程、何か特異なことは間違いないはず。そうじゃないと選抜されない。
まぁそれを今追及してもしょうがないし、追々分かってくるだろうから、今は放置する。
「それじゃ、自己紹介も終わったので、これからの事について説明します。先ずはこれからいう組み合わせでペアを組んで貰い、授業の間はいつも一緒に行動してください」
実質は賢者候補とその見習いという形なんですが、それを正直に言うとプライドを傷つけそうなので、ただのペアという事にしている。
組み合わせは
フランク → ロベルト
ロイス → ミレーヌ
ニック、スーザン → ガーギル
ミランダ → ノリス
エマ → ローマン
ローズ、サラ → マーサ
俺 → ゴラン
「このペアでこれからお願いしますね。それと一つだけ守っていただきたいのは、この先私がOKを出すまでは、絶対にこちら側の指示に従ってください」
これは暗にこちら側が師匠でそちらが弟子だよという事にする為です。直接的には言えないので、こういう言い方をしました。
これだけ言っておけば後はどうにかなるでしょう。実際授業が始まれば実力の差や知識の差は実感するでしょうから。
「それでは初めに言っていたように、皆さんで会議をしてください。議題は研究、改良についてです」
フランクたちはもう研究や改良の必要性やその思考が身についていますが、グーテル王国の人たちはその意味すら理解できていないでしょうから、そこを議論という形で知って貰おうと思います。
「私は参加しませんので、ゴランさんは今回だけ、フランクさんの組に参加してください」
俺が会議に参加してしまうと、授業しているみたいになってしまうので、今回は参加しない。多分これでかなり双方に実力の差がある事が分かると思うので、言い方は悪いが良い洗礼になるでしょう。
「フランクさん進行役をお願いします」
「いきなりそんなこと言われてもどうやれば良いんだよ?」
「そうですね、先ずこのラロックで行われていること全てを説明した後に、グーテル王国の方々に質問をしてもらう形でいいと思いますよ。その時にフランクさんがその回答者を指名して貰えれば良いと思います」
「ユウマ見学はするんだろう?」
お! 俺の意図が分かっているみたい。見学を後にしてることに意味があるんだよね。知識としてどんなことをやっているのか、分かった上で見学すると効果が倍増する。
見学してから知識を入れるとそれほど大きな効果が得られない。見たことを復習してるだけだからね。
知識をもって見学すればその場で出る質問にも違いが出るはず、より高度な質問が出ると思うだよね。
「明日予定しています」
「それじゃ、ここで行われていること全てを話しますが、質問は申し訳ないが最後にまとめてお願いしたい。だから疑問に思ったことなどはメモしておいてください」
一時間ぐらいしてフランクの説明が全て終わった時には、疑問はあるんだろうがグーテル王国の人たちは兎に角唖然としていて、次の動作に移れなかった。
何故? ここに来る前に予備知識は貰っているはずなんだけどな? 全部じゃなくても……。
おかしいと思い聞いてみると、予備知識は確かに貰っていたけど、大使の報告や実物として伝わっていることだけで、お父さんが視察した内容は殆ど教えていなかったらしい。
頼みますよお父さん! 何か意図があってそうしたんでしょうが、こちらは苦労するんですから。
人を困らせるのが趣味なのか?
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