第146話 なんで? 

 サラの両親がラロックに住むという事は半ば強引に決まってしまった。


 その話を聞いたグランは腰を抜かして、あわあわするだけだった。


 そりゃそうだよな。貴族の訪問ぐらいなら王様も来たことを考えれば大したことじゃないが、流石に貴族がまして元とは言え、公爵が住むとなれば驚愕する。


「お父さんここに住むのは良いのですが、屋敷はどうするんです?」


「そうだな、いくら隠居の身とはいえ、護衛騎士も従者もいるから、それなりの広さは必要かのう」


 それなりってどれくらいだ? 俺は貴族の屋敷を見たことがない。全て職人に任せて作らせるのなら問題はないから問題なのは場所だけだが、多分俺が作ることになると思うから両方問題になる。


 俺が作らなくても問題はないけど、やはり義理の両親になる人の屋敷だから立派なものを、作ってあげたいじゃないですか、好きな女性に良いところを見せたいですからね。


「サラさん、実家の屋敷の大きさってどれくらいあります?」


「そうですね、騎士や使用人の住居も合わせると、この拠点ぐらいありますね」


 嘘! マジか~~ この拠点と同じ広さまでは必要ないにしても、半分は必要だろうな。 


「お父さん、ここに住まれる時の人数は全部でどのくらいになります?」


「そうだな、今回ここに来てる人数より少し増えるぐらいか」


 ん? ここに来ている人数は? 確か? 騎士と使用人合わせて15人だったかな。

 そうすると20人ぐらいは住むという事だよな。


 いや! 違うな。騎士や使用人の家族も上乗せされるのか。お父さんそこは考えていないよね。


「騎士や使用人の方の家族もこられるんですよね?」


「そうだな、それを失念して負った。そうすると40~50人ぐらいかのう?」


 50人! それじゃどう考えてもこの拠点の半分では無理かな。余裕を持たせれば此処と同じぐらいはないと無理だな。


 そうすると場所の選択が難しくなったな。ラロック近辺で纏まった土地がもうないんだよな。


                   学校 畑 スライム

                         養殖場

 ゾイド辺境伯領    ラロック(町)  温泉銭湯   ココ!   ユウマ

(領都)ゾイド                    魔境     (家)   

   蒸留所               拠点    (病院)

                       スライム

                (牧場)     養殖場       

                                川



 残るは魔境だよね。病院と同じように森の外に入り口を作って地下で繋いで魔境の森の中に囲いを作って屋敷を建てるしかないかな……。


 こんな感じで色々今後の事について話した結果、両親の再度の訪問は三か月後という事に成った。


 俺が作れば時間が掛かっても一か月で出来ると思うけど、そこはあまりに早く出来てしまうと色々説明をしなくてはいけなくなるからね。


 それにもう少ししたらグーテル王国から賢者候補の人が来る予定だから、そちらにも少しは時間が取られるでしょうから、余裕を見て三か月という事にした。


 それに俺にはこの後ちょっとした計画がある……。


 翌々日、ご両親は帰路に就いた。本当に疲れたよ、こんな経験初めてだったから、物凄く気を使った。良く前世の俺の数少ない友人たちは結婚の挨拶とかに行けたな? 俺には多分無理だったろうな。


 今回のように、なし崩し的に相手の両親に会うなんて言うことになったから、なんとか流されたように対応できたけど、これが覚悟を決めての挨拶だと躊躇しただろうな?


 何が挨拶を考えていただ。それが現実になる時には悩みに悩んで、行くまでに相当時間が掛かっただろう。 所詮俺って小心者なんだよね。


 上司と部下の板挟みになるのがお似合いの性格だったんだと痛感してる。


 それから15日後、グーテル王国からの賢者候補が到着した。


 お父さんたちが滞在してる時に手紙は出していたのに、予想よりかなり遅い訪問である。


 遅くなった理由はどうやら、お父さんたちが帰国した時に候補たちが出発する寸前だったのだが、人選を聞いたお父さんが変更させたらしい。


 お父さんが視察した内容を踏まえると、グーテル王国の人選では良くないと判断した結果、選び直したので、到着が遅くなった。


 人数は当然こちらの要望通り7人、薬師1人、魔法士1人、錬金術師1人、鍛冶師1人、

 役人1人、商人1人、ここまでは全員平民、だが最後の一人がとんでもなかった。


 な! なんと、グーテル王国の王女様だったのです。


 俺が王家や貴族との接触を拒んでいるのを知っているのに、どうしてお父さんはこの人選を了承したんだろう?


 その理由は直ぐに分かった。サラを見つけた王女の行動で……。


「サラ、本当に元気になったのね! その報告を受けて安心していたら、今度は婚約ですって! どれだけ私を驚かせれば気が済むの?」


「これはマーサ王女様、お久しぶりです。見ての通り元気になりました。ですがどうしてこちらに?」


「何を他人行儀な。私とサラの仲でしょ。これまで通りマーサと呼んでちょうだい。それと此処に来たのは私が候補の一人だからよ」


 聞くところによるとサラとマーサは同い年で、王家と公爵ですから正真正銘の親戚ですから仲が非常に良いそうだ。


「それじゃ普通に話すわ。マーサ、こちらが私の婚約者のユウマさんよ」


「ご挨拶が遅れましたが、この度サラ様と婚約することになりました。グーテル王国から名誉伯爵を拝命いたしました。ユウマ・コンドールです。お見知りおきを」


「硬いはね。普段はそうじゃないんでしょ? 私はそういう事気にしないから、普通に話してくれると嬉しいわ。それにこれから私はここで学ばせてもらうのよ。先生が生徒に減り下っていてはいけないでしょ」


 確かに理屈はそうなんだが、俺のイメージというか、前世の知識が王家というものに距離を取ってしまうんだよね。


 前世では普通に暮らしている人がイギリス王家の人と直接関わるなんて絶対にないからね。日本でいえば天皇家と関わるということだよ。


 学習院で天皇家の人と同級生なんてどんな気分なんだろう? それにどう対応していたんだろう? 俺なら兎に角関わらないようにいていただろうね。


 俺は小心者ですよ。話しかけられても何も答えられずに、逃げていたと思うな。


 物凄く失礼だとは思うけど……。



「それではお許しも頂けたので、これからは普通に話すことにします。それでどうしてマーサ様が候補になったんです?」


「それはね、私が今回の事に物凄く興味があった事と、サラに会いたかったからよ」


 おうふ! それが理由? あまりにも自分勝手というか自由奔放な理由なんですね。そこはやっぱり、王家の人というべきかな。


「そうですか、失礼ですがマーサ様はこれまでどのようなことを学ばれていますか?」


「まだ硬いわね。マーサでいいのよ。いえそう呼んでちょうだい」


 この人もスーザンタイプか、一度言い出したら聞かないタイプの人だな


「ではお言葉に甘えてマーサさん、どのようなことを?」


「そうね、貴族の子弟と同じようなものね。強いて言えば、剣術を学んでいたかしら」


 はぁ~~ 剣術? 一国の王女でしょ、それが剣術を学ぶ? 脳筋なのか? お父さんと同じタイプなの? そうだったこの人選はお父さんが関与しているんだった。


 お父さん勘弁してくださいよ。多分同族意識で王女の候補入りを許可したな……。







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