第316話 大事件

 学校に続いてグラン一家の騒動を解決した足でフランクと一緒にカルロス達に会いに行った。


「カルロス様、ビクター様、本当にユートピアに行くんですね? 奥方様や陛下の許可は勿論あるんですよね?」


「あ、あぁ……」


 何だか怪しいぞ。今の中途半端な返事はかなり気に成る。本当に大丈夫なんだろうか? 奥方達はまだ良いとしても、陛下の許可が出ていないとかなりの問題になるぞ、特に陛下の僻みという問題が……。


 まぁここで追及してもどうにもならないし、陛下に確認を取るのも逆に危険だ。陛下まで行くなんて言い出したら、ユートピアに行くのが間違いなく10日以上遅れる。そんな危険をおかすぐらいなら、後で嫌味を言われた方がまだましだ。


「フランクさん、この後はどうしましょう? 飛行船に乗るためには魔境の俺の家に行くことに成りますが、それでは子供達や女性陣が大変ですよね」


「そうだな、兄さんの所は子供達がもう成人してるし、身体強化も教えているらしいから問題ないが、うちの子はまだ成人前だからな。それに母さんがちょっと厳しいかな」


 おぉ~、そうなんだ。ジーンの所のキャロンはもう成人したのか。長男のボスコが成人したのは知っていたけどキャロンもとは……、俺が年を取るはずだな。そうするとフランクの所のキースは12歳ぐらいか? あれ? ローレンしか厳しいと言わないという事は残りのシャーロットとフランソアは身体強化が使えるのか?


 グラン家の女性陣もパワーレベリングをしたことはあったけど、その後の事は殆ど知らないからな。子供達とレベル上げをしているとは聞いたことはあったけど……。それにジーンは魔境で俺と一緒に一度もパワーレベリングをしたことが無いけど、大丈夫なんだろうか? ジーンが個別に魔境の入り口でレベリングをしていたのは知っているが……。


 ん~~~、俺ってこう見ると、グラン一家と関りが深い割に、あまり多くを知らないんだな。子供達のスキルはどうなったんだろう? まだ早いと言っていたフランクを押し切って勉強するように言っておいたけど……?


 もしかしたら、もうダブルスキル持ちだったりして? 否、もしそうならフランクが自慢するよな。それをしないという事はまだなんだろうな。俺は最近殆ど子供達にあっていないし、拠点ですれ違うぐらいだったから鑑定もしていない。まさか父親のフランクも鑑定してないなんて無いよな……?


 グラン家の事を色々考えたけど、この際だから出発場所を此処にした方が良いと思ったので、


「どうするか考えるのも面倒だから、いっそのこと魔境の入り口から出発しましょう。入り口ならラロックからも見えませんし、夜ならもっと見えませんからそれが良いでしょう。俺とフランクさんで飛行船を取りに行けば問題ないですしね」


「それが良いな。それならビクター様やカルロス様も問題ないからな」


 おぉ~~、すっかりカルロス達の事を忘れていた。貴族のこの人達に走れと言うのは酷だよな。お義父さんのような脳筋でも走るのはしんどいと言っていたぐらいだから……。


「先ほどから黙って聞いておったが、何やらわしらを忘れておらんだったか?」


 やべ! フランクはどうか分からんが、俺は確かに完全に二人の存在を忘れていたから、下手なことは言えない。


「そんな事はありませんよ。女性や子供がいるからそれを優先して考えていただけです」


 よく考えたら、ビクターは別にしてもカルロスが身体強化が使えるかどうかも考慮するべきだった。今更言ってもしようがないが、何とか誤魔化せたかな?


「それでは、明日の夜に出発しますので、お二方も準備の方を宜しくお願いします」


「集合場所は此処で良いのか?」


「はい、明日の夜にお義父さんとサラに迎えに行って貰いますから、此処で待っていてください」


 夜だから、幾ら魔境の入り口でも危ないから、レベルの高いお義父さんとサラが拠点まで迎えに行った方が良いだろう。


「フランクさんは明日、昼前に此処を出て俺の家に飛行船を取りに行きますからそのつもりで」


「おう、了解だ!」


 そして翌日の夜、俺とフランクで取りに行った飛行船が魔境の入り口に到着した。


「おぉ~~、これが飛行船か!」


「カルロス様凄いですね! これが空を飛ぶ乗り物なんですね」


 ビクターとカルロスが驚嘆きょうたんの言葉を言っているのに他が静かだったからグラン一家の方を見ると、ん? 何だ? フランクが何やら家族全員に取り囲まれているが? 


 これは近寄ってはいけない奴だと、俺の本能が警告を鳴らしているから、俺はそれを無視して、お義父さんとカルロス達を飛行船に案内した。許せフランク……。


「あなたフランクさんを助けなくても良いんですか? もしあなたが行きにくいなら私が行って来ますよ。このままじゃ出発も遅れますから」


「サラがそう言ってくれるならお願いできる? 俺が行くともっと時間が掛かりそうだから」


 フランクが飛行船を前に問い詰められるとすれば、自分だけという事だと思う。グラン一家の中で一人だけだもんな。飛行船に何度も乗っているのは……。ロイスが此処にいればロイスも囲まれていただろうが、今回はユートピアに残っているからね。スーザンに感謝しろよロイス、二人の関係をもっと近づける為に俺も今回は気を使ったからな。


「ユウマ殿、いや、コンドール国王ともう呼んだ方が良いな。この飛行船はどうやって浮かんでいるんですか?」


「止めて下さいよ。公式の場所なら仕方がありませんが、そうでない時は今まで通り呼んで下さい。それと飛行船については申し訳ありませんが今はお教えできません。今知ることはエスペランス王国にとっても良くないと思います」


「そういう事なら今はまだ今まで通り呼ばしてもらうが、いずれ慣れないといけない事だから、諦めも必要だぞ。それは良いが、何故、飛行船について知ることが良くないんだ?」


「それは先日学校であった事が原因です」


「それならわしが校長にちゃんと伝えてきたからもう問題ないだろう」


 確かにカルロスに学校のこれからの事とか、学校の方針に逆らう生徒は退学にして良いと伝えて貰ったが、彼らの認識を考えると俺が何と言おうと彼らの母国は飛行船の持ち主がエスペランスだと当分疑うだろうから、飛行船について知らない方が良い。


 知っていると、どこから情報が洩れるか分からない。知らなければ洩らしようも無いから疑われていても知らないで通せる。


「飛行船の持ち主がエスペランスだと疑われているうちは知らない方が良いのです。今回の神聖国の時のような事が起きないとは言い切れませんからね」


「そういう事か。わしとビクターだけならそうはならないと思うが、用心に越したことは無いか。残念だが今は諦めるしかないな」


 カルロスにはこう言ったが、俺としては当分作り方を教えるつもりはない。どうしても飛行船が欲しいなら、ユートピアで作って売るという方法を取るつもりだ。


「それにしてもサラはどうしたんじゃ? やけに戻りが遅いが……」


 そうだな……、サラが行けばフランクの吊るしあげも直ぐに収まるはずだから、もう戻ってきてもおかしくない。そう思っていた矢先、


「ユウマさん、ちょっとお話があるのでこちらに来てくれません」


「どうしたんですシャーロットさん? サラはまだでしょうか?」


「そのサラ様についてお話があるのです」


 サラについての話? いったい何だというんだ? まぁ相手がシャーロットだから特に警戒する必要もないからついて行ってみるか。


 何が何だか分からないが、素直について行った場所でシャーロットによって俺に告げられたことは、俺にとって天地がひっくり返るぐらいのとんでもない事だった。


「ユウマさん、あなた一体どういうおつもりですの?」


「どういうつもりと急に言われても何事かも分かりませんが。それに何でシャーロットさんが怒っているんです?」


 飛行船とフランクの事で怒っているようには見えないからいったい何なんだろう?


「どうしたもこうしたもないのです。何故サラ様を走らせたりしたんです?」


「……?」


 サラを走らせたらいけないの? 貴族だからいけないの? シャーロットが言っている意味が俺には全く理解ができない……。


「これだから男というのは鈍感なんです。うちの主人と全く同じです。あの人も全く気付きませんでしたからね」


「鈍感? フランクさんと同じ? いったい何なんです?」


「鈍感なユウマさんに教えてあげます。!」


 え? 何を言われるかと思えば、おめでとうございます?


 ――! も! も・し・か・し・て、! 


「そうですよ。やっと分かりましたか。今が一番大事な時です。それなのに走らせるなんて、もっての外ですよ。今回は身体強化をしていたので何とか事なきを得ましたが、使っていなけれ大変なことに成っていましたよ」


 赤ちゃん……、俺の子供……。「やったー!」「サラ~~」


「はい、あなた」






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