第315話 団体旅行
学校での騒動を利用して、俺の事とユートピアの事を世界に広めて、世界の注目をユートピアに集めることにした。これでラロックから暗部もいなくなるんじゃないかな?
だからと言って暗部はユートピアには来れない。地上の孤島状態になっているからね。自給自足も出来ているし、飛行船や帆船を使えば交易も出来るから、反ユートピアの国でもどうする事も出来ない。
「学校もこれで当分は大丈夫かな?」
「そうでもないと思いますよ。ユートピアに行く前にカルロス様から校長に話をしておいて貰った方が良いと思います」
「それってもしかして、学校の方針やエスペランスに反抗するなら退学にして良いよと言って貰うってこと?」
「そうです。あんな自分達の立場も分からない国の人に教えてやるものはないと、はっきり言ってやるべきです」
サラがやけに怒っているな。まぁあの訳の分からん理屈じゃそうなるのも無理はない。無茶苦茶な思考をしてたからな……。貴族というのは本当にどういう教育をされたらああなるんだ? 自己中にもほどがあるよ。
彼らはまだ分かっていないんだろうが、いずれラロックの学校は無くなる。大学や研究所のような物に変える予定なのは国王達とも話がついている。エスペランスでは卒業生が教師役に成れる位成長しているし、スキル持ちが全員工房を開けるわけじゃないから、そう言う人達が専門学校のような物を作ればスキル発現はさせられる。
専門学校になったら留学生なんて引き受けないし、引き受けたとしても高額の授業料を取るようになるだろう。自国民や同盟国の人ならその授業料を安くして差別化するかもしれない。これは学校でも同じだ。学校が大学や研究機関のように成れば留学生を取るかどうかも分からない。何時までもあると思っているとその時に後悔するのは、今日校長室に来ていた生徒の国だろうな。
この後病院にも寄ったが病院には問題らしいことは殆どなく、順調に医者の育成が行われていた。ただ一つ気に成ることはあるとすれば、怪我の患者がラロックの冒険者や学校の冒険科や魔法科の生徒が最近多いという事。かなり無理をしてるのかな?
原因は何だろう? 普通にレベル上げしてる分にはそう怪我はするはずないんだけどな、特に学生は引率のベテラン冒険者がついているから……。
その答えは最後に寄った孤児たちの所で判明した。
「やぁみんな元気かい!」
「あ! ユウマさんだ! お久しぶりです。みんな元気ですよ。でも中々会えないから寂しがってる子も居ますよ」
「ごめんな、最近色々あって忙しいんだよ」
「結婚して忙しいなんてお熱いんですね」
「おいおい、冷やかすなよ。それで皆はどんな感じだい?」
「それぞれ自分の進みたい物の為に頑張っています。初等学校にも通って勉強もしていますし、冒険者に成りたい奴はサイラスさん達ベテラン冒険者について冒険者に必要なことを習っています。最近ではその時に討伐した魔物素材が結構な値段で売れるので、ここの生活も裕福になって来ました」
ん? 結構な値段? 魔境の入り口付近の魔物なんて今ラロックではそう高値では売れないだろう? おかしいな、まさかもっと奥に入っているのか?
「高く売れる魔物って、いったいどの辺まで魔境に入っているの?」
「聞いた話だとたしか、歩いて半日ぐらいの所までは普通に入ってるみたいですよ。場合によってはそこで一泊してくることもあります」
あぁこれで怪我人が増えている原因が分かった。サイラス達冒険者には魔法武器を渡しているし、結界の魔道具もあるから、奥まで入れるけど、普通の冒険者はそんなもの持っていないから、無理して競って怪我をしてるんだな。生徒も似たような理由だろう。孤児に負けたくないと引率なしで魔境に入っているんじゃないかな?
もうそろそろ、魔法武器や結界の魔道具も少し売りに出すか。時期的に見てももう良いころだろう。拠点のメンバーも一人では作れなくても、それぞれのスキル持ちが協力すれば作れるはずだから、作り方を伝授するかな。
魔境の開拓を始めてもいい頃合いだしな……。ただ売る相手は気を付けないといけない、他国の人間にはまだ売れるような状況じゃない。学校の留学生を見る限り……。
これはユートピアに帰ったら、賢者たちを交代でそれぞれの国に帰して、少し教育をしてもらう必要がありそうだ。
「ベテラン冒険者がついているなら問題ないだろうけど、近いうちにまた来るから、あまり無茶はしないようにな」
「はい、それは皆分かっています。折角貰った機会を無駄にはしません。生きるすべをゆっくりでも確実に身に付けろがユウマさんの教えですから」
「うん、それが分かっているなら安心だ。それじゃまた」
「孤児たちの方がよっぽど素直で努力家ですね」
サラはまだ学校の事を気にしているようだ。ここまで気にするとは余程腹が立ったんだろうな。
この状態はあまり良くないので、急いでここを出たいけど、その前にビクター達の件とグラン一家の件を片付けないといけないから、拠点に戻って、ビクター達の事を相談しようと、フランクに会いに行ったらそこでも問題が起きていた。
「これはどういう事?」
「さぁ、どういうことでしょう?」
拠点のフランクが住むグラン一家の家に行ったら、家の入り口に大量の荷物が置かれていて、フランクとジーンが困惑した顔でその荷物を見ていた。
「フランクさん、これはどういうことですか? まさか離婚……?」
「ユウマ! 滅多な事を言うなよ。俺とシャーロットにそんな事はあり得ない。だがその危機ではある。シャーロットが、否、グラン家の女性陣がユートピアに行くと聞かないんだ。連れて行かないと二度と家に入れないとまで言われたからな……」
それでジーンもこの状態なのか。それにしてもグラン家の女性陣は急にどうしたんだ?
「どうしてそうなったんですか?」
「それは父さんとビクター様達が原因だ。何でも父さんがユートピアに行く時にも母さん達も行くと言っていたらしいんだが、それが無理だったのに、今回ビクター様達が行くかもと俺が言ったからこの状況になったんだ」
それは自業自得という物でしょ。帰って来た時のシャーロットのあの態度を見ていて、そんな事言えば、そうなって当たり前。何か月も家を空けておいて、また出掛ける、それも自分達じゃない人を連れて何て言ったら、シャーロットが切れて当然。そういう所は男の甘えというか、鈍感だから起きる事。幾ら愛情があっても放置は良くないよ。行動力のある女性に対しては特に……。
「それでこの荷物。という事は連れて行けば問題は解決ですね」
俺はビクター達からの要望が出た時にもう決めていた。グラン一家全員をユートピアに連れて行く事を……。いろんな理由はあるが、一番はやはり家族が一緒に居ないのは良くないと思うからだ。
「それはそうなんだが、母さん達は暫く向こうに住むと言っているから困っているんだ。俺はまだ良いが兄さんはこちらに仕事があるから、ここを長くは離れられない。そうなると兄さんだけが此処に残ることに成るんだよ」
逆単身赴任という事だな……。
「ジーンさんが居ないと拙いですか? 今の現状だと居なくても従業員だけでも商会は回せるでしょ」
「――回るか……?」
商会メンバーも拠点メンバーも全て優秀だから、ジーンがもっぱらやっているのは国との折衝とか、貴族の相手ぐらいだ。その国の重鎮二人がユートピアに行くならジーンの仕事は減るから、貴族の相手が出来る人がいれば何も問題は無くなる。
貴族の相手と言っても殆どがご婦人方が中心だから、拠点の美魔女化粧品を作っている錬金術師たちなら十分相手は出来るからこれも問題ないかな? 魔道具に関しては王都の商会が代理店だからそれも問題ない。
ん? これってジーンが居なくても何も問題ないという事では? いらない人……。
そこまで言ったら流石に可愛そうだが、まぁ居なくても仕事は回ることは確かだ。それなら、皆でユートピアに行っても問題ない。
「それじゃ皆で旅行のつもりでユートピアに行きましょう。グラン一家の団体旅行です。家族サービスになって良いじゃないですか」
フランクとジーンの子供達は将来の賢者候補だと俺は思っているから、この機会は良い経験になるだろう。若いうちに世界を見るのも良い事だし、父親の背中を見せるのも良い事だ……。
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