第216話 初めての他国?
「言っていませんからね」
今回の休暇の本当の目的が食材集めだと言っていなかったことをフランクに言ったらこの返事が返って来た。
「俺はてっきりレベル上げと飛行船を完成させるのが目的だと思っていただけだ。他にも何か作るんだろうとは予測していたが、流石に食材探しが目的だとは思いもしなかったぞ」
冷蔵庫や冷凍庫が馬車で利用できるようになったから、魚介類などの運搬は出来るようになったけど、あくまでこの国が出来るだけで、他国はまだ無理。
それならこちらから出向いた方が未だ見たこともない食材と出会えるかもの知れない。情報として玉子とそれを生む魔物の情報は既にあるのだから、行く価値は十分にある。
俺の家に来て1週間はそれぞれ自由にしていていいという事にしたが、いつもならレベル上げに行きそうなフランクでさえ俺の作業を手伝ってくるほど、全員が飛行船の改良に協力した。
それでも俺の指示で時間を決めてロイスとサラ、ローズの三人はレベル上げと魔法の訓練をさせた。その他にも朝起きたらフランクと一緒にやった事もないだろうが、全員に素振りをさせて、武器の使い方を学ばせた。
これからは誰がどこに行くか分からないし、皆の見本になって貰わないといけないから、やらなくていい事は何一つない。全てに関してそこそこ出来るようになって貰う。
その中で、自分の得意なものが見つかればそれで良い。
「ユウマさん、このスライム素材って使い道がまだまだありそうですね。研究しても良いでしょうか?」
「別に研究するのは構わないが、当分は公開できない技術ですよ。それでも良いなら構いません」
「ミランダさんやエマさんも研究テーマがありますが私にはないので、是非やってみたいです。勿論、魔法も訓練しますけど」
「ローズさんが良いなら、どんどんやってください。失敗しようが出来なかろうが問題ないので、試行錯誤してください」
フランクが錬金術を発現させたことと、サラが風魔法を一つマスターしたことが刺激になったのだろう。ローズのやる気が物凄い。
「よ~~し! 完成だ! 」
「とうとう出来ましたね。これでようやく出発できますね」
気球部分が三連になったので、搭乗制限も15人に増えたから、これからはある程度の人数で色んな所にける。インベントリに入れられない物の輸送あるだろうから、この大きさでも将来的には物足りなくなるだろうが、今はこれで十分だ。
「出発は2日後、それまでに備蓄用の食事やここから持っていける食材などの準備をします。ミランダさん達にはポーションや化粧品の生産をお願いしますね」
「俺もポーション作りに参加して良いか? もっと経験を積みたいから」
フランクが錬金術をするなら、サラとロイスにはこの近辺で魔物を狩ってきてもらいましょうかね。手土産に燻製品を持って行きたいので……。
出発前日の夜、今回の目的地までのルートを操縦の出来るフランクとロイスに説明した時の反応が凄かった。
「おい! ユウマ、これは絶対に人に見せるなよ。大事になるぞ」
別にただの地図なんだがどうしてそこまでの事を言うのだろう? まして俺が行ったところ以外は詳細な地図でもないのに……。
「この詳細に分かっているところが問題なんだよ。これってお前が行ったことがある所だよな。それはこれから行くところもそうなるという事だろう? そんな事が知れたら大事になるぞ。地図なんて国家機密なんだからな」
「ユウマさん、普通の地図は物凄く簡略された物です。それならば国も咎めませんが、ここまでの地図だとそうはいきません。商人たちが持っている地図なんて、ギルドが厳重に保管してるぐらいですよ。普段はそれを目的地までの部分だけ簡略化して使っているだけです」
「お前の地図は町や村の大きさまで分かるし、道路がどのようにつながっているかや、森がどこにあるかまで全て分る。勿論他にも色々不味いがな。川の位置が分かるという事は水の補給に苦労しないという事だ。こんなの軍が見たら涎を垂らすぞ」
フランク達が言ってることは異世界あるあるだから理解出来るけど、ちょっと異常なぐらいの反応だな?
まぁごく最近戦争に成り掛けたというのもあるんだろうな。それに物差しや定規、コンパスなどが売りに出されれば、測量技術が無くてもそれなりの地図が作られるようになるだろうから、危機感を持っているんだろう。
ここまで考えられるように成っただけでも物凄い成長なんだから喜ばしい事だ。
「それで今回のルートなんだけど、前回のように魔境の上を行くわけじゃないから、高度は高くして、街道に沿ってではなく出来るだけ街道から外れたところを通りたいんですよ」
「それだと大体の方角で飛行するしかないから、かえって遠回りに成ったりしないか?」
前回の帝国との仲裁で飛行した時にも感じたんだが、この世界の街道って基本直線なんですよ。森があったらそれを迂回してるだけで、結局は元の直線に戻る。途中にある村や町もその経路上にあって、その中を道が通っているという構造。
だから、初めだけ道の方向を確認できれば、その方向に飛ぶだけで街道は無視しても最終的には目的の方向に向かえるという事。
もしくはビーツ王国の国境に近づけば山脈が見えますから、それの沿って進めば良い。今回の飛行船なら高度もかなりあげられるから、上手くすれば山脈越えも可能だと思う。
いくら山脈だと言っても全部が同じ高さの山ではないのだから、低い所抜けることも出来るだろうし、渓谷だって存在するはず。
まだ未定だけど、もしトンネルが掘れそうなところがあったら、極秘にビーツ王国とフリージア王国を繋げて交流が出来るようにしようと思っている。
現状だとフリージア王国が一番孤立しているんだよね。そこを解消できればこの先の同盟関係や共和国との揉め事が起きた時の対抗策になる。
「全員乗りましたね。では出発!」
今回は男性だけではなく女性陣にも操縦を覚えて貰います。前回と違って長距離の移動ですし、この先の事を考えたら操縦できる人は多い方が良い。
それに俺の地図魔法を使ってもっと正確な地図を作るためには、俺が操縦をあまりしない方が良い。目で見て意識すれば本当に詳しい地図が出来るからね。
出発からほぼ一日で、ビーツ王国との国境に到着した。高度が上がったからなのか気流に乗って速度も上がり、帝国に行った時より格段に速い速度で飛行出来て、距離的には3倍ぐらいあったのに、予測していた2日の半分で到着した。
「フランクさん、少し迷っているんですが、どちらが良いと思います。国境を越えて、ビーツ王国側の山脈伝いに行くか、国境を超えずに山脈伝いに行くか?」
「そうだな。超えた方が良いんじゃないか。超えないと共和国の領土も通過することになるから、見つからないとは思うが用心した方が良いだろう。ビーツ王国なら見つかっても対処が出来るが、共和国はそうはいかないからな」
「そうですよ。共和国は鉱山を持っているらしいですから、山脈沿いに町がある可能性もあります」
商人のフランクでも知らない情報を知ってるサラはやはり貴族だな。そういう事も貴族は学校で勉強するんだろう。
この世界の商人なんて、今までは殆どが国内だけの商売だったから、他国の情報なんて余程の事が無い限り知らない。稀に本当に少しの情報が入ってくるぐらいだろうし、鉱山の鉱石の情報なんてフランクの商売柄からしたら知る必要もなかっただろうからな。
「それじゃ、山脈の様子を確認しながら、フリージア王国を超えて海まで出ましょう。そこからビーツ王国の南部に直接乗り込むことにします」
「おいおい、それじゃ俺の助言は無視か?」
フランクの助言は確かに的を得ているんだが、俺としてはこの際だから出来るだけ地図を作りたいから、危険でも共和国も通過したい。山脈付近だけでも……。
鉱山を発見できれば、共和国の情報も手に入るから損にはならない。
「さぁこれからは空の上ですが国外に出ますから、気を引き締めていきましょう」
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