第64話 ミランダ達が帰って来た

 1月3日お昼過ぎ、子供達と遊んでいたら拠点に入ってくる馬車が3台。


 ユウマが取引をする時にフランクが馬車3台で来たことはあったけど、フランクの店の馬車に乗用の馬車はない、グランが一台所有してるだけだ。


 フランクは2台の幌馬車を持っているけど、今は一台しかない、一台はミランダ達の帰省に使ってもらっている。


 良く見ると先頭の幌馬車の御者席にはミランダがいる、勿論、御者をしてる訳では無いが。


 入って来たのは全部幌馬車、先頭にミランダいるからあれはフランクの店の物だろう、では後ろの2台は?


「ユウマさん! ただいま!」


 大きな声でそう言って御者席からニコニコとして手を振るミランダ。


 良く見ると後ろの2台の馬車の後尾から上半身だけ出して、手を振ってるエマとローズも確認できた。


 馬車の音とミランダの声に反応して大人たちも建物から出てきた。


 ミランダの馬車がユウマ達の前まで来て停車した。それに伴って後続も停車。


 その後が凄かった、ミランダ達三人の他に女性が10人、男性が3人馬車から降りて来たのだ。


 弟子の勧誘は頼んでいたから、多分そうなんだろうとは思ったがまさかいきなりこれ程の人数を連れてくるとは思わなかった。


「ミランダさんお帰り、もしかして弟子志望の人達?」


「そうですよ、全員じゃないですけど」


 全員じゃない? どういう事?  俺が?のような表情だったのに気づいたんだろうミランダが


「えっとですね、女性は全員そうですけど男性は違います。男性の内2人はガラス職人志望で、1人はローズの幼馴染でニックさんの息子エリック君です。」


 ニックさんの息子? ニックと言えば王都の薬師だよな、俺は会ったことないけどグランさんから聞いている。王都での結核の薬の協力者だったはず。


「そういうことですか、でしたら長旅で疲れてもいるでしょうから、先ずは休憩所に皆さんを案内してください、ミランダ」


 此処は俺が前に出るのは拙いと思ったのか、グランが直ぐにミランダに言って全員を休憩所に案内するよう告げる。


 この世界の旅人は基本手荷物は少ない、今回は馬車移動だったから両手に荷物は持っているがそれだけだ。


 フランクの馬車以外は御者付きで借りて来たそうなので、皆を降ろしたら直ぐに帰って行った。


 御者たちは来る時も帰る時も、お上りさんのように首をせわしなく動かして拠点のレンガの構造物にびっくりしていた。


「ユウマこれからは俺達が話すから少し離れていろ」


 グランとジーンがミランダ達の後を追って休憩所に向かうとフランクが俺の傍に来てそう言った。


「うん、分かった」


 そうした方が良いよな、いずれは色々解ってくるにしても、今は俺と言う人物は矢面に立たない方が良い。


 子供達はフランソアが連れて行った。ローレンとシャーロットは多分お茶の準備をしに行ったのだろう。


 俺とフランクは少し遅れて休憩所に向かい入り口付近で待機した。


「先ずは長旅お疲れ様です。私は現在ミランダ達の雇い主のグラン商会のグランと言います。実質は隠居していますので本来の店主はこちらにいる長男のジーンです」


 グランはジーンの紹介と共に、グラン商会について説明した。本店はゾイドにありラロックには次男が店長をする店があって、この拠点はこれから売り出していく商品を作るための拠点であると言う事を。


 ある程度はミランダ達から聞いているだろうが確認と安心させるために再度行った。


 そこへローレン達がお茶を持って登場、配る前に一応自己紹介、それから少しゆっくりしてもらう間にミランダ達を呼び出して、入り口に待機していた俺達と合流

 事情を聞いた。


 内容は女性の内5人は錬金術師の修行中に挫折、田舎に帰ったり、別の仕事をしていた人達で残りの5人はミランダ達の地元でもう直ぐ成人するが仕事先に悩んでいた人達。


 此処までは予測してしていた通り、そういう依頼だったからね。


 ガラス職人志望の二人は、ミランダ達に持たせていたガラス食器を見せられて職人に成りたいと志望した、農家の次男坊。


 そして一番不可解なのがニックの息子エリックだったけど、これには俺が関係していた。


 2か月前に俺とフランクとミランダ達で話し合いをした時の俺の言葉が原因だった。


 この世界のとは言っていないが病気や薬について知りたいと言ったことで、ローズが里帰りのついでにニックに会いに行き話をしたところ、ニックがそれならエリックにも拠点を見せたいから丁度良いと今回同行したそうだ。


 エリックは薬師のスキルはまだ発生していないが、父親の後を継ぐ為にニックに弟子入りして5年に成る。


 英才教育の割に遅いな、俺はそう思った。


 事情を把握したグラン達は本来もう無くても問題はないけど、一応守秘義務の契約をして貰う事にした。


 此処は生産拠点でもあるけど研究施設でもあるからね。特許の申請前に情報を漏らされても困るから、なぜ必要かを説明した上で契約してもらった。


 全員問題なく契約、その後今日は疲れてるだろうから全員を寮に案内して休んでもらうことにした。


 案内はミランダ達にお願いした、暫くすると「わぁー、きゃぁー」とか聞こえてきたが多分寮の設備に驚いていたんだろう。


 寮には男女別の風呂があるし、食堂も広い。部屋は4人部屋だがフランクに怒られた二段ベットが二つある。


 だって寮と言えばそんな感じじゃん、貴族が泊まる部屋じゃないから俺が家具も自作したんだ。


 簡単なつくりの二段ベッドと簡単なつくりの机と椅子、小さな箪笥を一部屋に4人分作っただけ、それでも怒られた。


 怒られた原因は二段ベッドだけどこの世界にないんだって、箪笥があるんだから重ねるという発想ぐらい出せよと俺は思う……


 結局、俺が怒られた物は全てグラン商会によって特許登録された。 とほほ……





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