第63話 いよいよ法律の施行

 フランク達と話し合いをしてから早2月、もう季節は冬、年末なのです。


 今更だがこの世界の暦について

 1日 24時間 秒や分の概念はない

 1月 30日

 1年 12月(360日)

 1週間 7日 無、火、風、土、水、闇、光が曜日

 この国は12~2月が冬、3~5月が春、6~8が夏、9~11が秋


 この2か月間は本当に皆やることが多くて大変だった。


 生産組は兎に角、在庫を増やさないといけない、それもそれぞれにやることが別にある中でだ。


 ミランダ達は俺と教科書の作成、レンガ職人は拠点の防壁プラス建物の外壁塗り、フランクは店の事、ガラス職人の修行、求人関係の準備、魔石の確保。


 当然フランク一人で全部は出来ないので、グラン一家は交代でお手伝い。


 グランは商業ギルドとの燻製品関係と特許の打ち合わせ。


 俺は森の拠点とラロックの拠点を頻繁に往復して新設の建物を建てたり、教科書、いつもの商品を作ったりした。


 グランはこの2か月で王都の近くに燻製の生産拠点を確保、今回まではグラン商会として生産を始める事が出来た。


 しかし法律が施行されたら、この拠点は売却する予定だそうだ。


 これから先もっと忙しくなるのに地元から離れた所まで管理するのは大変だから。


 それにグランも出来るだけ王都には近づきたくないみたい、特許の法律が出来れば自分が直接販売しなくてもユウマには利益が入るし、ユウマという手札を持っているのはグラン一家だから、新商品の窓口は全てグラン商会になる。


 自分だけが儲けると当然やっかみも出るだろうから、利益を独り占めにしないに越したことはない。


 ユウマに利益が入るとは言ったが、残念ながら匿名での登録は出来なかった。


 だからグラン商会として登録、グラン商会からユウマに特許収入を払うことにした。


 当然だった。世界初の特許の法律だから、匿名何ていう事は考えられていない。匿名が必要になるのはそれなりの事件が起きたり不都合が出てからの事。


 いずれは出来るように成るかも知れないが、これはまだまだ先だろう、だってユウマ以外の発明者が沢山出てこないと問題も起きないから。


「グランさんいよいよ明日ですね、今年は色々お世話になりました。来年もよろしくお願いします」


 ユウマは前世の年末の挨拶の様な事を言った。


「こちらこそお願いしますね。来年も色々あるだろうが私は今ワクワクしてるよ、これ程心躍ってる年末は初めてだよ」


 グラン商会は創業以来初めて、年末年始3日づつ休みにしてる。


 従業員も殆どが実家に帰った。残っているのはグラン一家とロイス、ケイン一家ぐらいだ。


 ユウマと関係が深い人だけと言ってもいい。それに今はフランクの店ではなく拠点にいる。


 年末年始を拠点で過ごそうと言う訳だ、拠点には風呂もあるし大人数で食事もとれる。


 しかし此処には錬金術師三人衆はいない、三人はグラン商会の休みより早くそれぞれ実家に帰っている。


 何故なら彼女たちの実家は王都から近い所にある。だからこそ王都で錬金術師の弟子に入った。


 普通はそんな遠い所の実家には帰る事はしないのだが、今回は別の要件もあって帰って貰った。


 別の要件とはそう弟子探し、女性の錬金術師は当然のごとく少ない。


 いないわけではないが弟子入りしても長く続かない人が多い、男尊女卑が最も強いのが錬金術師だから。


 三人衆のように錬金術スキルがそれなりの年数で発生すれば独立しても食べるぐらいは出来るが、年数が掛かれば掛かるほど辞めていく。


 そこで今回その辞めて行った女性と地元で仕事を探してる女性を中心に勧誘して来て貰う為に早めに実家に帰した。


 勿論、グラン商会の従業員たちにも地元でこちらは男女構わず勧誘してもらう。


 年が明けてそれらの報告を受けてから、どのくらい求人を掛けるか決めるつもり。


 年が明け、法律が施行された。グラン商会の特許は既に申請済みで許可も下りている。効力が発生するのが今日から。


 グラン一家の子供達、フランクの長男キース5歳、ジーンの長男ボスコ10歳、ジーンの長女キャロン8歳は今かるたで遊んでいる。


 キースにはちょっと不利だけど、絵も描いてあるからなんとかできるでしょう。

 遊びながら文字が学べるし、日頃親たちが忙しくしてるので何か遊び道具をと思って作った。


 勿論、他にも作ってはいるけどまだ出さない、異世界物定番のリバーシ、将棋、トランプ、など色々。


 今回出したのは、正月だというのも加味して、福笑い、コマ、竹馬、凧、羽根突き。


 それを見たフランクの一言


「ユウマ頼むよ、暫く勘弁してくれ」


 俺は売るなんて一言も言ってないぞ、商売にしようとしてるのはフランクだ。


「売るつもりで作った訳じゃないよ」


「売れると解ってる物を見逃せるかい?」


 それはフランク側の問題でしょう。子供たちの為に用意しただけなんだから、その疲れたような眼差しはやめて欲しいよ。


「売らなきゃいいじゃん」

「売るに決まってるだろ」


 こらこら子供の物を取り上げて調べるんじゃない。グランとジーンまで加わったよ。

「キャロンちゃん、駄目な大人はほっといてお兄ちゃんと福笑いしようか?」


「うん! お兄ちゃんこれどうやってやるの?」


 キャロンちゃんに福笑いのやり方を教えて二人で遊んでいたら、今度は女性陣が寄って来た。


 面白そうから始まり、次から次と順番に交代、結局また福笑いも大人たちに奪われた。


 しょうがないから子供たちを集めてどろケイを教えて遊んだが、流石にこれには大人たちも参加しなかった。


 これじゃ遊び道具もうかつに出せないな。リバーシとか出さないことを決めてて良かった。


 正月休みも一応楽しく終わった。しかしその最終日、帰省組が戻って来た時に

 びっくりすることが起きた。そしてそれはその2日後にも繰り返された。



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