第328話 やっと……
「前から思っていたけど、このレベルの上げ方は世間に広めて良いのか?」
「大丈夫ですよ、フランクさん。フランクさんの今の鑑定の習熟度なら見えるかも知れませんね。今度試しに犯罪者の称号を集中して見てみて下さい。その称号に効果がついていることが分かると思いますよ」
「称号に効果?」
「はい、犯罪の重さで違いますが、経験値が半減とか三分の一に成るとかの効果がついています」
「それは本当かね? それが本当ならこのレベル上げの方法を犯罪者が知っても効果は殆どないという事だね。いや、無いどころか、犯罪者は元からレベルが上がりにくいという事だ」
そう、これからこの世界の人のレベルを上げるように国が動いても、犯罪者はその恩恵も受けられないし、一度罪を犯せば、罪を償って真面目に生きない限り、何時かは
一般人にすらレベルで負けることに成る。そうなったらもう盗賊なんて出来ない。襲っても返り討ちに会うだけだからね……。
今まではレベルを上げる人があまりいなかったから、盗賊が称号でペナルティーを貰っていてもそんなに効果が無かったけど、これからは変わっていく。暴力による犯罪は減るだろうね。だけど、逆に知識を持つ人も増えるから知識犯罪が増えるかも?
普通に考えて、いきなり盗賊になるような奴はあまりいない、ましてボス、頭目クラスはね。そういう奴はそれなりにレベルが上がっているから、チンピラのような様な奴には勝てるし、称号が付いてからはその差が縮まらないからずっとボスや頭目でいられる。盗賊の頭目に冒険者崩れが多いのもそれが原因だったりする。
「だからこのレベル上げの方法を世間の人が知ったら、逆に盗賊に成ろうとか、犯罪を起こそうとする人が減るでしょうね。生き辛くなるんですから……」
「確かにそうだな。そんなペナルティーがあるなんて今までは知らなかったから、称号が付くぐらいだとしか思っていなかっただろうからな」
「しかし、鑑定のスキルにも先があるんだな。そうなると他のスキルにもまだ先があると言うことなんだろうか?」
「そうですね。魔法でもスキルでも、まだまだ分からないことはありますから、それを研究するのも面白いですよ」
魔法は普通にもっと色んな魔法が開発されるだろうが、俺はスキルの進化が面白いことになるように思っている。例えば、スキルの統合。俺の場合は成らなかったけど、普通の人には起きるような気がしている。スキルの成長が遅いから逆に起きるんではないかとね。
ひとつのスキルを極めながら、他のスキルを取得して、それを同時に使うようになると、引き摺られると言ったら良いかな、それによって元のスキルが変化するというのが俺の推測。例えば錬金術がある程度の習熟度まで上がっている人が、鍛冶のスキルを発現させて、同時に使うようになると錬成術いうスキルに変化するんじゃないかと思っている。そしてこの変化は鍛冶スキル持ちだけに限った事ではなく、スキルのないガラス職人や陶器職人にも可能性はある。そしてそれが鍛冶錬成術、ガラス錬成術の様に細分化されるかもしれない。もしくは錬成術のスキル表示は同じだが、得手不得手がはっきり出るかも知れない。
鍛冶と木工だったら、技巧術とか、鍛冶、木工、ガラス、陶器全てだったら、マイスターなんて言うのに変化したら面白いよね。
残念なことに、俺の場合はそれぞれのスキルの成長が早過ぎて、差がないから起きなかったと思っている……。錬成術、技巧術、マイスター、カッコイイのにね……。
「カルロス殿、一つ提案があるんですが、このままエスペランスの王都まで送りましょうか?」
「あぁそうだったね。もう飛行船を秘匿する必要はないから、それも可能なのか」
「そうです。大騒ぎになるから出来るだけ見せないようにはしてきましたが、飛行船自体があることはもう世界中に知られていますから、存在自体を隠す必要はありません」
どの道このまま一度ユートピアに戻っても、直ぐにラロックに送ることに成るならこのまま送った方が効率がいい。まぁ本心は早く帰って欲しいというのが一番だけどね。
「そういう事ならそうして貰おうか。職を辞することなどは抜きにしても、早く帰る方が良いからな。当然その足でビクター殿も送るのだろう?」
「勿論そうするつもりです」
これを思いついたのには、早く帰って欲しいという理由の他にもう一つある。それは魔境の俺の家で飛行船をもう一機作る為と魔刀を作りたいからだ。ユートピアに戻ったら城作りの続きもしなくてはいけないし、グラン一家のレベル上げや賢者の従者達のレベル上げもしなくてはいけないから、飛行船は多い方が良い。それに魔刀を早く作って渡してしまえば、カルロス達がユートピアに来る必要も当分なくなるし、俺も行く必要が無くなる。
カルロスの承諾を得たのでそこから進路を変更し、その日の深夜に王都に到着したので、大きな騒ぎにもならずにカルロスを送ることが出来た。王都の門番は腰を抜かしていたけどね……。
そのまま今度はビクターを送るために、ゾイドに向かったが、ビクターがゾイドではなくどうしてもラロックに送って欲しいというのでそうした。
何故そうして欲しいのか聞いたら、至極まっとうな事だった。だってカルロスを送って来た護衛の騎士達や当然ビクターの護衛もラロックで待機しているんだから、二人とも勝手に帰っては護衛が可哀そうだ。
それはそうなんだが、そこまで気にしなくても俺は良いと思っている。護衛の騎士達には良い休暇に成っていると思うからね。美味しい料理に温泉で毎日体を癒せるんだよ、それが嫌な人なんていないよ。
「ビクター殿、ラロックに着きますが、時間が時間ですので、ちょっとした騒ぎに成るでしょうから、ビクター殿を降ろしたら、直ぐに離陸しますのでご挨拶は此処で済まして置きます」
「それは構わんよ」
「それと申し訳ないのですが、出来たらラロックに後2日程滞在していてくれませんか?」
「それは構わんが、どうして?」
「それは2日後のお楽しみという事で」
こんな感じでビクターとの挨拶をすませ。ビクターをラロックに降ろし、すぐさま離陸、魔境の俺の家に飛行船は向かった。
「ユウマ、何でビクター様をラロックに滞在させたんだ?」
「魔刀ですよ。魔刀を作って渡す為です」
「あぁ~~、でもそんなに急ぐ必要はないだろう?」
「何を言っているんですか、早く渡さないとまたユートピアに来たいと言い出しますよ。それにフランクさんが飛行船を売り込んだからそれも催促されかねません」
「そういう事なら、俺にも責任があるな。でも飛行船はあくまで俺達が作れるようになってからだとは言ってあるぞ」
人の欲望とはそんなに軽い物ではないのだよ。一度手に入ると思ったものは一時でも早く欲しく成る物。それを軽く見ていると催促の嵐に見まわれる。
魔境の家に着くと同時に休む暇なく、飛行船作りのレクチャーを四人にした。基本作れるのはフランクとロイスだけだが、作り方を知るのも知識の吸収に成るから、従者の二人にも参加させた。
「先ずは骨組みから作り始めて下さい。それには先ず、スライム素材の回収からお願いしますね」
「そこからかよ。確かお前の話だと、理由は分からないが、此処のスライムは異常に増えるらしいから、とんでもない数に成っているんじゃないのか?」
そうなんだよな。此処のスライムは汚物やごみを流さなくても増える。川から引いている水に何か混じっているのか、見た目に餌がないのに、期間をあけたら必ず増えている。
「飛行船を作るには大量にスライム素材が必要なんですから頑張ってください」
飛行船の骨組み以外に飛行船のガスもスライム由来なんだから、絶対に避けられない作業なんです。こういう素材から確保出来て初めて全ての工程を覚えられる。
フランク達が素材集めから、骨組みを作っている間に俺はフランク達が採掘して来てくれたミスリルで魔刀を4本作る。カルロスとビクターにはフランクの持っている雪月と同じタイプの物。残る二本はエスペランスの国王とグーテルの国王にロイスの持っている雪華のタイプを作る。このように作る物を変えたのは魔力量が違うから。それとグーテルの国王にも作ったのは親戚だし僻まれないようにね……。
翌日の夕方には魔刀が完成したので、次の日の朝早くロイスにラロックにいるビクターに届けて貰った。
それから更に2日後三機目の飛行船が完成。その三機でユートピアに帰還する為、魔境を後にした。
ロイスのクルンバで一応連絡は入れてあるけど、予定より大分遅れたから、サラが怒っていなければ良いのだが……。
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