第286話 予想外

 恐らくドラゴンクラスの魔物がいるであろう魔力スポット付近から離れて、一度落ちつこうと思い、海上まで飛行船を移動させた。


「それにしても、いきなりでしたね。それも新種とは驚きです。それで圧倒的に強い魔物って何なんでしょう?」


「いや~~、俺も正直今回ばかりは急展開過ぎて焦りました。まだまだ修行が足りませんね。まぁ反省は後にしてサラが気にしている魔物の事から考えましょう。一つは新種の魔物ですが、俺の鑑定には熊の魔物がヘビの卵を食べて生まれた突然変異種と出ていましたから、妊娠前か妊娠中にヘビの卵を食べた母熊から生まれたのがあの新種という事に成ります」


 今はキマイラとか、ミュータントというのは言わないでおこう混乱するだけだ。今後このような魔物に遭遇することがあればその時にゆっくり説明すれば良い。夢の話としてね。


「それは凄いですね。でもあれは一匹だけなんでしょうか?」


 そこなんだよ、前世では普通熊は複数子供を産むから、この世界の魔物の熊がどうなのかは分からないけど、まだいる可能性はある。


「それは分かりませんが、可能性はありますね」


 ただね、今俺はそんな事よりもっと凄い事で無茶苦茶不安なっているんです。それは卵が原因で変異種が生まれたという事です。あり得ないとは思いますが、今俺達が積極的に広めようとしている玉子でも魔力の向上が見られているからです。微々たるものですがエミュの玉子ではその兆候がはっきりと出ているから、ガルスの玉子でも長期に摂取したら何らかの影響がでる可能性がある。


 これまで魔力の向上があるなら良いなくらいにしか思っていませんでしたが、この現状を見せられると物凄く不安です。母から子へ影響するなら何代も先の子孫にも影響が出るかも知れないのです。ミュータントとまでは行かなくても人間の構造が変わるかもしれません。例えば生まれて直ぐの魔力量が今の子供と比べたら10倍になるとかね。


 これが悪いとは思わないけど、良いとも断言できない。確かに前世でも肉食が多く成ったり、栄養が良くなることで人も進化してきているから、これも進化の一つだと思えば良いのですが、原始時代ではないですからね今は……。


 魔物肉では変化がないのに卵にだけはあるというのが気に成るんですね。これはどうしたら良いんだろう? サラに話せば怖がるかな? でもこのまま黙っているのもおかしいよな……。


「サラ、ひとつ気になることがあるんですが……」


 サラに俺は卵の効能について話し、その影響が将来的に出る可能性について話してみた。すると、


「ユウマさんそれは確かにあるかもしれませんが、今回の魔物のような変異種が生まれるという事はないと思いますよ。せいぜいユウマさんが言うように将来的に子供の魔力量が増えるという事ぐらいですよ。それに、もしそういう事が起きればその時に考えれば良い事です」


 すげ~~、女性と言うかサラは胆が据わっているというか、楽観的だな。勿論いい意味でだが……。確かによく思い出したら前世でもある食べ物やアルコール、喫煙、薬品、によって奇形が生まれるなんて言う事もあったし、それにアレルギーなんていうのもその一種だ。だからと言って食品については因果関係は証明されていないとも言っていたな。


 それに、今回の場所も影響してるかもしれない。異常な魔力濃度だったからね。そういう場所にあった卵だからという可能性も十分にある。変に考え過ぎかな? 俺はやはり生来の小心者なんだろう。こういう時もそうだが、この世界に転移して来た時から、兎に角目立たないとか、世の中に出して良いとか悪いとかいつも考える人間だったからね。


「それはまぁ良いとして一応は報告だけはしといた方が良いですよね」


「良いと思いますよ。ただ今回の変異種についてはもっと調べてからの方が良いと思います」


 そうだよな、万分の一の確率で起きたことを必ず起きると報告する訳にはいかないよな。どうして俺は年長者なのにこういう事に疎いのかね。本当に情けなくなるよ。


「それではその件はそうするとして、もう一つの圧倒的に強い魔物と言うのはまだ予測でしかありませんから何とも言えませんが、あの二種の魔物両方ともに魔力隠蔽のスキルを持っていましたから、それから判断しました」


「それって魔力感知に掛からなければ、捕食も楽だし脅威からも隠れられるという事ですか?」


 なんでそう簡単に答えに辿り着くかな? 俺は結構分析してやっとだったのに……。本当に夫として自信を無くしそうだよ。優秀過ぎるよ家の嫁さんは。話が早くて良いんだけどね。


「そうです。あれだけの魔物がスキルを発現するには相当なプレッシャーが掛かり続けたからじゃないかと思います。本能で隠れなきゃと思い続けた結果ではないでしょうかね」


「そうすると、レベル的にどのくらいでしょうか?」


「少なくとも40以上、下手をすると50とか60と言う可能性もありますね。嫌、もっと上100というのもあり得ます。だって俺達はあそこから近い所に魔力スポットがあると考えていますが、そうではなくもっと奥にあるけどスポット自体が強力過ぎて、あの位置でもあのレベルの魔物が生息できるという事も考えられます」


 もうひとつ可能性があるのが、奥ではなくこの先の海岸沿いという可能性。まだこの先の濃度は測定していないからね。それにあの魔物達は争っていたから奥からその勢い出てきた可能性もある。本当に今の段階だと可能性という言葉ばかりになるがそれしか言いようがない。


「この先森の上空は危険かもしれませんね。海岸沿いを飛行しながらの測定の方が安全でしょう。その海岸で濃度が高ければかなり危険ですね」


「私もユウマさんのような魔法が使えたら、もっと楽なんですけどね」


 レーザー系の魔法は説明が難しいんだよな。確かに覚えれば現状殆どの魔物に通用するから、戦いが凄く楽になるのはそうなんだが……。レーザー(ビーム)で一番簡単なのは虫眼鏡の太陽光の収束なんだが、これでもこの世界の人には意味が分からんだろうな? 


 まぁ魔法はイメージだから見て覚えるという方法もあるけど、やはり内容を理解しているのとそうでないのとでは、消費魔力量も違ってくる。レーザー系が無理なら、後は高硬度の物質を高速で撃ちだす、ライフル的な土魔法が良いかな? これならまだ説明しやすい。


「サラそれじゃ、次に海岸に降りた時に一つ魔法を教えましょう。今度は土属性の魔法です。俺の魔法より威力は落ちますが、それでもかなりの魔物に有効ですよ」


 海岸なら石英があるからこれを弾丸の形にイメージしても良いし普通の土壌なら窒素とホウ素の化合物をイメージしても良い。窒化ホウ素はダイヤモンドより硬いからね。まぁこれは土や砂を圧縮弾丸の形に固める魔法が出来るようになってからだ。


 普通に土魔法で弾丸を作り回転させて高速で撃てるように成ればそれだけでも御の字だけどね。もしくは弾丸だけ先に作っておいてそれを風魔法で飛ばすという方法もあるが、これは魔銃の考え方と似ている。


 魔銃、???? あ! 俺と言うやつはどこまでバカなんだ。俺のインベントリには魔銃があるじゃないか! これをどうにでも改造できるんだから、そうすればサラは魔力を流すだけで撃てるように成る。レーザー系だろうと土魔法系の魔法だろうとね。


 俺は魔法の魔法陣を見れるんだからどんな魔法でも魔銃に出来る。言ってみれば魔銃は魔方陣魔法の進化系。極端なことを言えば、ティムの魔銃だって出来る。ただティムの場合は命令をその場で変更できないが。


「ユウマさん、先ほど、あ! と言われていましたが、何かありました?」


 これは拙いぞ、あ! の部分だけは聞かれてたか。どうする? 魔銃の事話すか? 話すのは良いが、サラがそれを知ってしまうと益々戦闘狂に成りそうなんだよな。


 フランク達に魔刀をあげてからその方向にかなり進んだからな。もうどこが商人なんだと言えるレベルまで来ているしね。魔銃何て魔刀より簡単に魔物が倒せるからサラが面白がってレベル上げしそうなんだよな。ただこの先を行くなら戦力は多い方が良いのも確かだから悩むな……。よし! 決めた!


「サラ、もう少しだけ操縦頼める? ひとつだけ作りたいものが出来たんだ」


「別に構いませんよ。ただこのまま陸から離れた場所で良いんですか?」


「ん~~、嫌、やっぱりこのまま停止しといて良いです。サラはその間休憩でもしといてください。ただ風に流されないようにだけはしといてくださいね」


「分かりました」
















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