第36話 女性は怖い
今日は取引の日、いつものように森の出口で待ってると馬車が2台やってきた。
フランクとロイスで検品を済ませると、フランクが
「ユウマ、今日は村に寄ってくれないか?」
村に寄りたがらない俺にわざわざそう言ってきた。なぜだ? そんなことを思ってると
「今日はユウマに相談したい事やお願いがあるんだ」
「それならここでも良いじゃないか?」
「いやそれが……時間もかかるし話があるのが俺たちだけじゃないんだ。」
「誰? 貴族とかじゃないよな?」
「違うよ、父さんやシャーロット達だよ。特にシャーロットかな?」
なんか歯切れが悪いな、それにシャーロット達?
考えても仕方がない、フランクが悪いようにはしないはずだ。ここは頼みを聞きますか、あまり自分勝手なのも気が引けるしな。
「まぁ良いよ、じゃ一緒に行こうか」
行かないとやばいという気もする、何だかこういうの最近多いな。
村の門までくると
「よう! 久しぶりだな、元気にしてたか?」
門番に声を掛けられる。ここは堂々と当たり障りない返事をして、身分証を見せて通ることに。
フランクと俺の関係はあまり知られたくはないけど、こればっかりは仕方がない。
フランクの店に到着、裏口から入って案内された場所にはグランとシャーロットは解るが、ジーンとローレンが居たのには驚いた。
そして、ここから言い方がおかしいが恐怖の話し合いが始まった。
「ユウマ君 今日はすまんな無理を言って来て貰って」
グランの謝罪から話が始まった。
「先ずは、色々報告することがあるからそれを聞いて貰おう」
報告の内容は、商品別に担当者を決めたこと、先送りにする商品の事、それぞれの進捗状況など、これからどう進めて行くかという内容だった。
燻製については作り方をもう教えているので、後は任せて問題ない。問題は残りの商品の作り方をどう教えるかだ。
レンガはロイスがかなり一生懸命に森にいる時に学んでいたので、そう時間は掛からないだろうし、ロイスに教えればいいだけだと考えていると。
「ユウマさん! 石鹸類の他にも女性向きの商品があるそうですね?」
ものすごい勢いで、シャーロットが俺に聞いてきた。
横ではローレンもそれを教えなさいという、表情圧力をかけている。
「あ! あります」
あまりの圧力に思わずそう答えるのが精一杯だった。
「それはどういうものなのです?」
「手の荒れを治すハンドクリームと肌に潤いと張りを与える化粧水です。」
「潤いと張り! それは顔のということですの?」
今度はローレンがくいついた。
「そうですね、乾燥した肌に潤いと張りを与えるものです。個人差はありますが」
「「その商品は直ぐに作れますの!」」
今度は二人同時に問い詰めてきた。
これか~~~あの予感は……良かった作ってきておいて……
「それですが、もう作ってあります。近いうちに試してもらおうと思ってたので」
「す! 直ぐに見せてください。私と義母さまで試しますから」
圧力凄いな、やはり女性はこういうものには目がないんだな。本当に作って来た自分を褒めてやりたい。
でも何で知ってるんだろう? あ! ロイスか確かにそんなことを口走った覚えがある。
なんで話すかな~ 出来るかも程度に話したことを、そういう目線でロイスを見ると、目を反らしやがった。
仕方がないので、ハンドクリームと化粧水を出して、試してもらうよう伝える。
これで落ち着いたかと思ったのが甘かった。
「今日、ユウマさんに来てもらったのは、石鹸などを作って貰う為の錬金術師が手配できましたので、器具や作り方について相談したかったのです」
まだ7日だよ? もう手配できたの? 錬金術師の手配は時間が掛かると思ってたんだけど?
「もうですか?」
「え~ 商品を餌に女性の錬金術師に声を掛けましたら、直ぐに数人飛びついてきましたわ」
今餌って言った? 餌ね~~ 本当にこういうときの女性って、発想力も行動力も凄い、ついでに言葉使いも……
「でしたら、始められそうですね。器具はガラスがまだ無理だと思い、俺が作っておきました。」
「流石はユウマさんですね、有難うございます」
これで出来てなかったら、多分数日のうちには作ってくれと言われてただろうな。
「作り方を教えるのは何時頃から出来ますか? それと時間はどれくらいかかりますか?」
本当に話が止まらない、今日中に決めてしまわないと納得しないなこれは……
「材料は揃ってますから、いつでも始められます。時間は~ そうですね錬金術師の習熟度にもよりますが、5日~7日もあれば作れるようになると思いますよ」
「それなら、次の取引の日からお願いできますか? 場所と人はそれまでに決めておきますので」
「わかりました。それではその日から始めましょう。そうすると俺の泊まる所考えないとな~」
その時少し不安に思ってしまった。5日ならいいが7日掛かると家の結界が持つかどうか? 思案顔になってたのだろう、シャーロットが問い詰めてきた。
「何か気になる事でも? 何でも言ったくださいまし」
「いや、ちょっと、7日掛かると家の結界が持つか気になったから」
すると、一瞬考える素振りをしたかと思えば、とんでもないことを言い出した。
「それなら、ユウマさんのお家で作り方を教えてもらえばいいのですよ」
はぁ~ 何言ってんだこの人。俺の家? それも今回は女性が数人相手だぞ
そう思ってたら、更なる爆弾発言
「錬金術師3人と私で行きますわ」
その言葉に黙っていない人がいた。そうローレンだ。
「それなら私も同行しましょう。責任者の一人として当然ですね」
ちょ! ちょっと待て~~ 何言ってるんだ? 女性が5人?
俺はパニクった。どう答えたらいいか解らなくなっていると、黙っていない人がいた。そうフランクだ。
「母さん、シャーロット何言ってるんだ。魔境の森だよ」
「「道中は極めて安全だと言われてましたよね、義父様、あなた」」
シャーロットとローレンの二人はグランに向かって同時に同意を求めた。
「あ、あぁ、道中は安全だったよ」
グランは二人の圧力の籠った言葉に、そう答えるしかなかった。
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