第131話 オックス捕獲大作戦 2
「おぅ~ いますね。それにしても多すぎませんか?」
「確かにな。これはどうみても1000頭以上いるぞ」
これはちょっと拙いですね。オックスたちが通って来たと思われる方向には草が殆ど生えていません。
「これはオックスの異常繁殖でしょうか?」
「俺も良く解らんが、毎年この状況だったら噂にはなってるだろうな」
確かに毎年この数が移動して、草を食いつくしていれば噂ぐらいには成っているから、フランク達も知っているはず。
「この先、餌不足が起きたら、こいつらは畑を襲う可能性がありますね」
「確かにその可能性はある。だけど今回の捕獲は25頭だけだぞ、それぐらい減らしても焼け石に水だ」
これはどうしましょうかね? 数を減らすと言うことは決まっているけど、どう減らすかだね。
一番簡単なのは、討伐して数を減らす。討伐したオックスは牛肉として食べるか売ればいい。でもこれって、これから先ティムの魔法を普及させてオックスを飼うということで、乳製品の普及や牛肉の安定供給をすることを考えると、勿体ないんだよな。
毎年このように増える訳じゃないなら、余計にこの異常繁殖は利用したい。
「どうするかは今すぐ結論が出ないから、先ずは魔法の検証をしてからにしましょうか」
「そうだな、確実にティムが出来る事。ユウマ以外がティムの魔法が使える事が分かれば、色々出来そうだ。 それにスリープの魔法もな」
「それじゃ、ローズさんとフランクさんでスリープの魔法の検証から始めましょう」
今回、俺は魔法の検証の方法に色んなやり方を考えている。魔法はイメージだけど、そのイメージというのが難しい事はこれまでの検証で実証されている。
だからそのイメージをやり易くする方法を考えた。
「では、始めに俺が一頭スリープの魔法で眠らせます。良く見ていてください」
オックスは群れで行動するといっても密集している訳では無いので、端の方の数頭でグループになっているオックスの一頭に魔法を掛けた。
魔法を掛けられたオックスは自然に眠るように足をおり、腹ばいになりました。
「次はローズさん、この羊皮紙に書かれている魔法陣を使って魔法を掛けてみて下さい。魔力は多めに入れるつもりで」
「フランクさんはこの紙に書いてる魔法陣でローズさんと同じようにやってみて下さい。その時に俺が使ったスリープの魔法の後に起きたこともイメージしてください。これはローズさんも同じです」
二人はオックスを刺激しないようにゆっくり近づき、ほぼ同時に魔法を発動させました。
結果はローズは成功。フランクは失敗でした。
「次も同じ二人にやってもらいますが、魔法陣はローズさんが紙、フランクさんが羊皮紙でやってください」
結果はローズ失敗。フランク成功。これから解ることは、魔法陣の魔法を発動するには羊皮紙の方が良いという事。二人は魔力量的には大きな差が無い。イメージ力はローズの方が優れているが、魔法陣を使えばその差は関係ない。
これは困った事を発見してしまいましたね。羊皮紙の使い方を見つけてしまいました。魔法契約がないから淘汰されると言っておきながら、魔法陣魔法には使えるということです。紙は魔法が発動する前に燃えてしまいました。
多分、これは羊皮紙が魔物の皮だから魔力に強いということでしょうね。
ここで色々考えるのはまだ早いですね。実験はまだ残っています。
「それでは、次は残りの人全員で同じことをやってもらいます。初めに紙の魔法陣、次に羊皮紙の魔法陣でやってみてください」
結果は紙は全員失敗。羊皮紙はサラとスーザン以外は成功しました。
「次が最後です。サラさんとスーザンさん以外の全員で魔法陣なしでスリープの魔法をやってみて下さい」
結果は全員失敗。
「それじゃ、後は魔力が持つ限り、魔法をかけ続けて下さい。MP回復ポーションを使っても構いません。今日はここで野営します」
結果はローズが成功させた。 やはりローズはイメージ力が優れているようだ。
これで大まかなことは分かりました。羊皮紙の魔法陣魔法ならそこまで多くの魔力量は必要ないということが。
しかし、イメージ力は大きく影響する。サラは魔力量もイメージ力も無いから別にして、スーザンは鬼畜パワーレベリングをしてるから、魔力量はあるのに成功していない。それに引き換え、ニックは魔力量はそうでもないのに成功している。
ニックはスーザンと違って、これまで色々な魔法を見て来ているし、病院でも魔力感知をやっているから、イメージ力がスーザンより高い。
ひとりだけまだ分からない人がいる。 ロイスだ、この人は意外にイメージ力が高いのか? それとも魔力量のごり押しか? 判断しかねる。
野営をした次の日、ティムの魔法も同じように検証したが結果は魔法陣魔法は全く同じ結果だったが、魔法陣なしだとロイス以外は全員駄目でした。
(ロイス、あなたは解らん? 意外性? 無属性の時は一番最後だったのに……)
「魔法については大体わかりましたから、結果を踏まえてオックスの対処を考えましょう」
魔法の事は分かったというのは、皆が魔法の検証をしてる間に俺も別の検証をしていたからです。
それは、ティムの魔法の効力の実験です。俺が知っているティムという魔法にも色々ある。だから、この世界のティムの魔法がどんな物かの検証が必要だった。
今回の魔法は命令への服従をイメージしている。その命令がどこまで出来るかの検証をやったのだ。 どう考えてもアニメなどのように念話が出来るはずもないし、人間の言葉を理解することも無いだろう。
恐らくだが、こちらが命令した事の内容が、行動に制限を掛けたり、逆に行動を促すという事ではないかと思っている。だから複雑な命令は出来ないだろうと予測していた。
結果は単純な命令なら複数でも問題無かった。 逃げるな、人を襲うな、この二つは完ぺきに出来ていたから、オックスに関してはティムの魔法で飼育できることが判明した。
最後にこれは継続して検証しなくてはいけないのが、ティムの魔法は切れる事があるかどうか?
俺は自分の検証した内容も説明した後に。
「どうするのが一番いいでしょうか? 俺は此処にいるオックス全てをティムして必要分以外は、領か国にあずけたらと思っています。皆さんは何か別の方法がありますか?」
「ユウマさん、領や国に預けると言っても、そう簡単には無理ですよ」
「スーザンさんの言う通りなんですが、そこはほら、グランさんに頑張って貰って」
その時、ラロックに居たグランは背中に悪寒が走った。
「おいおい、そりゃ父さんが悲鳴をあげるぞ」
「ユウマさん、流石にご隠居様がかわいそうです」
「グランさん大変だね」
ここにいるメンバーは口々にグランを不憫に思う言葉を発したが、結局は俺の案以外に特に思いつかなかったので、俺の案が採用された。
グランさん、後は頼んだよ……。
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