第132話 オックス捕獲大作戦 3

「ふぅ~~やっと終わりましたね」


「マジ疲れたぞ、MPポーションで腹もタプタプだ」


 1000頭以上という予想は当たっていたけど、まさか1525頭いたとは……。


 魔法が使えない、スーザンとサラを除いたメンバー全員でスリープとティムを掛けまくったが、当然魔力が足りる訳が無いので、MPポーションを飲みながらだったので、フランクのタプタプ発言になった。


 次の行動をどうするか考えていると、いつの間にかサラ以外の女性陣がいなくなっていた。心配になりあたりを見回すと、女性陣は野営の時に作った簡易トイレの前に列を作っていた。


 そりゃそうなるよね。 あれだけポーションをがぶ飲みして魔法を使い続ければ……。


 スーザンは魔法陣でも使えなかったのが悔しかったのか、必死で練習してたからね。結果的にそのかいあって、ティムはまだだが、スリープは出来るようになった。


 この時俺はスーザンの結果を見て、イメージ力と単純に言っているがこれにも習熟度みたいなものが有るように思えた。


 魔法はイメージ、これは原則なんだけど、高度な魔法になると、そのイメージ力だけでは無理な物がある。ニックとスーザンが良い例、同じイメージをさせてイメージ力に大きな差は無いのに、差が出てたと言うことは、日頃からイメージで魔法を使ってる頻度が影響してる様に思う。 


 イメージをする回数=習熟度ではないだろうか?


 スーザンは貴族だから、本人が生活魔法も多くは使わないだろうから、その差が出ているのかもしれない。一方、庶民は子供の頃から使い続ける。


 魔法に関してはこれからも要検証だな、本当に次から次へと疑問が出てくる……。


「取りあえずティムは終わりましたから、次はどうするかですね」


「そうだな、領や国に任せるにしても、直ぐには無理だからな」


「そこで、この1500頭を三分割して500頭のグループに分けて、ここからラロックまでに分割しようと思います」


 1500頭の集団が数日でこの辺りの餌を食べつくすのなら、分散してやればその期間はのびるから、その間に最低でもラロックと領の対策は出来るだろうと思って俺は提案した。


「ということで、フランクさんとロイスさんは先に戻ってグランさんに報告してください」


 ここから先は丸投げである……。 報告をうけたグランがビクターに相談して対応を決めてくれるだろう。


 俺もラロックについてからは今の規模では全然足りないので、今の最低でも20倍ぐらいの牧場を作る予定だ。そうすれば500頭ぐらいは何とかなる。


**********


「父さん、大変なことになったよ!」


「いったい何があったんだ?」


 フランクはこれまでに起きた事や、これからどうしないといけないのかをグランに説明した。


「はぁ~~ また予想をはるかに超えているな。それをわしにやれと……」


 今回問題なのはオックスの事だけではない。当然スリープやティムの魔法も関係してくる。これをどう説明するかがグランにとって一番の問題だった。


「フランク、今回はお前もついてこい。魔法に関してはわしでは説明できん」


「そうだよな、魔法についても説明しないと、ビクター様も理解できないだろうからね」


「ロイスはユウマ君にこの問題を国まで最終的にもっていけば、また視察が入る可能性が高いから、その対応も考えておくように伝えてくれ」


 当然、新魔法なんていうとんでもない物なんだから、国から何かしらの反応があるのは分かっていた。


 だから俺は、ラロックに戻るまでの数日で残っている女性陣に魔法についてどんな質問をされても大丈夫なように復習させていた。


 それにサラとスーザンには貴族の力を使って俺の存在を出来るだけ、表に出ないようにしてもらうように頼んだ。



「ビクター様、またお願いに来たのですがよろしいですか?」


「よろしいも何もグランが頼んでくるのだ、国の為になる事なのだろう?」


「はい、勿論です。ですが今回は……」


 グランは魔法によってオックスを飼育できるようになったことを説明した。勿論、その魔法が、新魔法であることも。 そして現状オックスが1500頭確保できている事も。


「な! なに~~ それは誠か? それが誠なら、世の中がひっくり返るぞ」


「はい、そのようになると思います。ですからビクター様にお願いなのです」


 ビクターはグランを疑う事はしない。今までグランが嘘をついたことが無いからだ。しかし魔法については疑心暗鬼だったので、説明をもとめた。


「ビクター様、魔法については実際に見て頂くしか方法が御座いません。ティムの魔法はここでは無理ですので、スリープの魔法を披露いたします」


 フランクはビクターの許しを得てから、護衛の騎士にスリープの魔法を使ってみせた。しかしそこでフランクは大きなミスをおかしてしまった。


 フランクは魔法陣が無くてもスリープは使えるようになっていたのに、慎重を期すために魔法陣を使ってしまったのだ。魔法の事は伝えていたが、魔法陣については伝えていなかったから、そこからビクターの追及が始まった。


「フランク、それは何だ? 錬成陣とも違うようだが」


「こ、これは…… 魔法陣というものです。これも薬師の弟子からの授かりものです。これ以上の追及はご勘弁を」


「う~~ん、しかしのう、この魔法を国にあげれば、ただではすまんぞ」


「そこはビクター様のお力で、何とか追及が出来るだけ無いようにお願いいたします。そうしないと国が最終的に損をすることになります。逃げますよあの人」


 フランクは敢えてこの時あの人と言った。普段ならあいつと言っていただろうが、あいつといえばユウマがフランクより若いと知られてしまい、何らかの方法でユウマが特定されると思ったからだ。


「そうだったな。本当に難儀な人だ。こちらはもっと待遇とかもよくして、国に貢献してもらいたいのだが…… しかし今回はどう国を、いや、魔法師を押さえるかな?」


 国の魔法師と言えば、当然国で最高の魔法使いだ。その人達に今回の魔法の事が伝われば、王や宰相が何を言おうとそう簡単には抑えられないだろう。


「恐らくですが、あの人も視察なりがある事は覚悟しているでしょうから、その対応は考えていると思います。ですからビクター様は出来るだけ視察の規模を小さくして頂ければよろしいかと」


 これはグランの釘刺しである。今回の事で今までのように、王や宰相なんかに出て来られたら、たまったもんじゃなから、規模を小さくして魔法師だけ、最悪でもカルロスぐらいまでで押さえたい気持ちの表れであった。


「小さくの~ 出来るか分からんぞ? 流石にこれはわしでも視察したいからの」


 オックスの件なんて本当に些細な事なんだよね。


 魔法や魔法陣に比べれば……。







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