第130話 オックス捕獲大作戦

 賢者計画の教育を始めてから、考え方が論理的になってきて、ティム魔法や闇魔法の講義も終えて。いよいよ第二段階飼育に入る為、オックスの捕獲をして、最終的に牧場建設まで進める。


 正直、論理的思考が出来るようになっているから、飼育の授業は必要ないのだが、牧場が出来れば、乳製品が作れるので益々食文化が進歩する。この個人的欲望の為の建設。


 と、その前に、グランさんに報告しないとね。何処に作ろうかな?


「グランさん、報告があるんですが今良いですか?」


「何やらまた何かするみたいだね」


 もうユウマが何をしようがあまり驚かなくなったグランは、自分は何をさせられるのか、その点だけが気になっていた。


「以前グランさんに話したことありましたよね。オックスのこと」


 確かにオックスの居場所はグランに尋ねていた。だがそれだけだ。


「あぁ、オックスの生息地だったかな? それがどうしたんだい?」


「えっと、そのオックスを飼いならして牧場を作ろうと思いまして」


「え! オックスを飼いならす? 牧場?」


 俺はティムの魔法や牧場を作って乳製品の開発をするという計画をグランに説明した。


「話は理解したよ。それでオックスの居場所を知りたいと言うことだね」


 またとんでもない事を言い出した俺に呆れながらも、グランは冷静に答えてきた。



 グランが言うには、オックスは一か所に留まっている事はないそうだ。草食の魔物なので、餌が無くなれば移動する。


 ただ暑さには弱いらしく、暑い時期は北よりの比較的涼しい所に移動してくる。


 それが今なので、比較的にこのラロックから近い所に来ているはずだという事。


 それなら冒険者ギルドに情報がないか確認してみることにした。オックスは農耕牛に使われているが、本来は牛肉でもあるから狩りの対象だ。


 ただ、オックスは怒れば襲ってくる魔物だし、集団で行動してるから、冒険者にとって狩り難い魔物。


「ロイスさん、どうでした? オックスの情報はありました?」


「はい、ありましたよ。ただ予想より少し遠いですね」


 予想では、ラロックから1~2日以内だろうと思っていたのだが、3日~4日のところらしい。ただ移動はしてるので、もう少し距離は近くなる可能性はあるようだ。


「ところでロイスさん、冒険者ギルドでは絡まれたりしませんでした?」


 ロイスの見た目はどうみても商人だからね。無い訳ではないが普通商人が直接冒険者ギルドに依頼することは無いので、目立つことで冷やかされたり絡まれたりすることがある。 通常は商業ギルドを通して依頼する。


 護衛依頼などは特にギルド経由にすることが多い。ギルドの信用問題になりかねないので、どちらのギルドもへたな人を紹介できない。


 まぁ例の事件で冒険者の管理が厳しくなってからはそういうのも減ってはいるらしいが、粗暴な奴は今でもいる。


「はい、ありましたね」


「はい? もの凄く軽く返事したけど、大丈夫だったんですね?」


 現実に怪我も無いロイスが目の前にいるのだから、大丈夫だったことは分かるが……


「あぁはい、ちょっとひねっってやりましたから」


 おいおい、何だか物騒な返事だぞ。ひねった? これ以上は聞くのを俺は止めた。

 戦闘狂を作ったかもしれないと、以前思ったからね。 何したんだろう?


 異世界あるあるを俺ではない人が体験したみたいだけど、そこは放置することにした。 やっぱりあるんだね~~


 3~4日はちょっと遠い。捕獲してからの移動を考えたら、出来るだけ近い方がいい。


 それなら、先に牧場の準備をしてから捕獲した方が効率が良い。規模に合わせて捕獲する量も決められるからね。


 牧場の場所はもう決めてある。ラロックからゾイド方面に行く街道沿いの草原に作る。


 そこなら魔物も弱いから、防壁も強固に作る必要が無い。それに追加で用心の為に空堀を作っておけば盗難防止にもなる。


 規模的には50頭の飼育が出来る広さを考えている。でも実際は25頭を捕獲する予定。 牧場の餌場を半分に区切って交互に使うことで、餌の確保に余裕を持たせる。


 オックスは暑さには弱いが、餌がなくなる冬も問題になる。特にここラロックでは。


 餌問題はスライム肥料でなんとかなると思っている。その他に寒さ対策は牛舎を作ってやれば何とかなるだろう。まぁそもそも、飼育の授業でもあるんだから、後は試行錯誤するしかない。


「さて牧場も出来たし、最新情報を確認したら捕獲に行きますよ」


「相変わらず、お前は異常だな。何でこんなに早く牧場が出来てるんだよ」


 今回も自分の仕事? をこなしてからひとりで牧場を作ったので、フランク達は作っている現場を殆ど見ていない。


「フランクさん馬車の用意は出来てます? それと馬の方も」


「あぁ出来てるぞ、馬車も馬もな。だけどお前、馬に乗れるのか?」


 答えはNOです。乗れません。でもね多分一日練習すれば大丈夫になると思うんですよ。


 経験値100倍ですよ俺は。1日練習したら100日したのと同じなんです。間違いなく乗馬スキルが発現します。


 スキルが発現すれば上手くはなくても普通に乗るくらいは出来ます。


「しかしなんで馬が必要なんだ?」


「あぁそれは、オックスを捕獲した後に群れの警備をするためですよ」


 嘘である、警備が必要ないということはないが、俺がいれば魔物が近づけば直ぐに分かるので、それからでも対処は可能だ。


 それならなぜ? はい!俺が乗ってみたいだけです。


 身体強化すれば馬より速く走れるから、本来必要はないんですが、前世でも乗ったことないから、乗れる機会と訓練に時間が掛からないなら乗るでしょ。


 人の欲望はこういう時発揮される。 by ユウマ


 今回のオックス捕獲は闇魔法スリープとティム魔法の実験も兼ねている。


 闇属性も発現には条件があると思うから、スリープだけでは発現しないだろうが、誰でもスリープは使えるのか? これは検証する必要がある。


 光属性が少ないのと同じで、闇属性も適性がある人は少ないと予測している。


 魔法の属性にも細かいルールがあると思う。今は無属性は誰でも使えると予測してるが、実際使える魔法に個人差がある。 この個人差は時間で解決できるのか?


 属性としてステータスには出ないが、いくつかの属性魔法は使えるという可能性はある。無属性の魔法だけが特別ではなく。他の属性でも同じかもしれない。


 この世界の属性魔法(自然現象由来)は歪なので、実験はまだだが、ファイヤーボールの魔法を教えたら、属性表示はされないが、この魔法だけ使える人はいるかも知れない。


 もしこの考え方が正しければ、極端な話、ステータスには表示されないが全属性の一部の魔法は使える人もいる可能性が出てくる。


 例えば、光属性は表示されないがヒールだけは使える。闇属性は表示されないがスリープだけは使える。こういう人がもしいれば、物凄く外科医向きじゃないだろうか?


 俺の欲望と飼育の授業という目的の為のオックス捕獲作戦には、他にも色々と関係している事がある。


「それじゃ、皆さん出発しましょう!」

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