第193話 高級化粧品 美魔女
「ユウマ、ミランダから聞いたが、またとんでもないものを作ったな」
「そうなんですよ。ミランダさんは凄いものを作りました。あれは特許登録しないでくださいね。必要ないですから」
「必要ないのか?」
「必要ありませんよ。あれは改良品ですから、秘匿して高級化粧品として売った方が良いです」
本来この考え方なら、改良ポーションもする必要はないものだが、それを敢えて登録したのです。
その理由はこの世界が改良とか発明をするような考え方が出来なかったから、刺激剤として登録した。それに特許制度が無かったのだから、改良ポーションが基礎技術に成っただけの事。
基礎技術は登録して、保護しないと使われ放題に成ってしまうが、改良品は基礎技術へ対価を払った上での物だから、秘匿しても問題ないし、するべき。
今回のミランダの成長は喜ばしいが、本来なら、改良ポーションにも同じ発想をして欲しかったな。たぶん誰も改良ポーションに、魔境の森のレベルの高い魔石を使っていないんだろうな。
拠点の錬金術師なら使っているかもしれないが、それを鑑定していないのだろう。俺がしていなかったのだから、当然だけど……。
魔石のレベルで違いが出ると思わなかった。魔石は魔石だと思い込んでいたのが原因。
魔物のレベルの違いで、肉でさえ味に違いがあったのだから、魔石にも違いがあって当然だったのに、違いの認識が魔力量や大きさにしか目がいかなかった。本当は魔力の質にも違いがあったのに……。
これからすると魔道具にはレベルの低い大型魔物の魔石が、一番効率が良いということになるのか?
魔方陣は魔力を一定に吸い出して魔法を発動する。 魔道具ではそうだし、魔方陣魔法も同じだ。正確に同じ魔法が繰り返せるから、属性魔法のカギになると考えたんだか。
そうすると、魔力の質によって変わるのは何だ? 同じ魔道具にレベルの違う同じ魔物の魔石を使えば分かるか?
火の魔道具なら火力が上がる? いやそうじゃなく、火の温度が上がる? 水の魔道具なら一度に出る量が変わる? それとも水の質が変わって美味くなる? ライトの魔道具なら、明るさが変わる? もしくは全く何も変わらず、高額なレベルの高い魔石が無駄になるだけか……。
「ユウマ! お前、無言で考え事をしてるつもりだろうが、全部口から出てるからな」
「え! 今まで俺が考えてたこと全部聞いてたという事?」
「まぁ途中からだけどな。魔石のレベルがの所ぐらいからだ。初めは黙って考えていただけだが、少ししたら、ぶつぶつに変わり、途中からはぺらぺらと盛り上がって行ったぞ」
やばい、俺の癖が悪化している。今までは黙って考え込むだけだったのに、とうとう口に出すようになってしまった。
「なるほどな、お前が今までこの状態になった時は、こんなことを考えていたんだな」
「いやいや、納得しないで。恥ずかしいから、今の事は忘れて」
「別に恥ずかしい事じゃないだろう。ユウマは流石だな~~ と思うだけだぞ」
「聞かれたなら、諦めて聞くけど、俺の話をどう思った?」
「全部聞いたわけじゃないが、聞いていて分かったのは、簡潔に言うと魔石の研究が必要だと思ったかな」
それが分かってくれたんなら、この先付与魔法に魔石を繋げても理解出来るだろうな。
「それにしてもお前、俺と話す時、敬語で話す時もあれば、そうでない時があるが、そろそろ、どちらかにしろ。俺が気持ち悪い」
それは俺も自分で気づいていたけど、何故か中途半端にしか出来ないんだよな……。
「話は戻すが、ミランダは今まで発売した化粧品関係の商品全てに魔石を入れて、実験してるそうだが、お前はどう思う」
「ヒントを上げたのは俺だから、当然そうするだろうと思っていたよ。それにそれで効果が上がれば、高級化粧品としてブランド化して売り出せば良いと思う」
「ブランド化ってなんとか印のといかいうやつか?」
「なんとか印は、流石に言い方が古いけど、まぁそんな感じだね」
「それだと、ミランダ印の高級化粧品という名前になるのか?」
「なんとか印から少し離れようよ。そうだね高級化粧品、ブランド名は美魔女なんてどうかな?」
このネーミングは商品の効果に老化防止があるから、年齢の割に若く見えるところから取っているし、魔法のある世界だから、美魔女はぴったりだと思う。
化粧品関係も今は俺が作り出した基本的なもから香料を入れたり、肌に良い薬草を入れたりしてるから、その薬草と魔石が反応して効果が良くなるものが出てくるはず。
全部の商品で効果が良くなるとは思えないから、兎に角試すしかない。
「それなら、グラン商会で出資して、ミランダに商会を作らせるかな?」
「それは本人と相談して決めてよ。ただミランダさんは賢者候補でもあるから、その辺は考えてくださいね、いや考えてよ」
「わざわざ、言い直すな。もっと気持ち悪いわ」
「それじゃ俺も話を戻すけど、魔石の研究には他にもあるんだよ。それも含めて、俺個人の新事業をやるんだけど、それに協力して欲しいんです」
「新事業?」
「新事業というか? 俺が新たに始める事って言った方がいいかな?」
それからフランクに、俺が考えた孤児の事や冒険者にやって貰うことなどを説明した。
「それはお前個人がやるんだよな? 国とかは関係なく」
「そう、あくまで俺個人がやる事。グラン商会にはその手伝いをして欲しいというお願い」
「確かに定規や物差しの事業でも人が集まるか心配してたから、子供の手でも借りれるなら、こちらとしてもありがたい。それにお前の言ってる孤児の未来についても理解できるからな」
フランクに説明した内容には隠していることもある。冒険者にやって貰う事の目的、それは戦争になった時の為の備えだという事。もしくは戦争の抑止に使うという事。
国には関係ないと言ったが、こういう意味では国と直結している。それに絶対に今は言えないが、私設軍隊を作る目的もある。
ラロックがスベンと冒険者に狙われたことがある様に、今度は国が相手になる可能性がある以上、備えは必要。
これは俺が招いたことでもある。世界を刺激し、競争意欲を持たせたから、人に元からある、欲も刺激してしまっている。だから何が起こっても良いように備える。
フランクと話をして10日程経った頃、ミランダの研究は進展し、基礎化粧品に薬草的なものを入れたものに効果の上昇が確認された。
ただやはり、使い続けないと効果は落ちていき、元に戻ってしまう。当然と言えば当然、細胞を活性化してもそれが永遠に続くわけではないのだから、それが当たり前。
薬草的なものが使われていない物に、効果の上昇が全くなかったわけではないが、高級な商品として売りに出すほどの上昇は無かった。
恐らく、薬草や植物が触媒のような役目をして、効果の上昇が起きている。だからその薬草や植物の種類でも効果は変わってくるだろう。
簡単に考えればこれで終わりだが、科学的に考えれば、薬草の成分の中に効果を抑えるものがあったとしたら、それを取り退けば、効果は上がると言いう事。
水を蒸留水に変えただけで、ポーションの効果が上がったように……。
ここまでくると、もう魔科学の分野といえる。これから何十年と掛けて研究を続ける事。前世でいえば、UVカットの化粧品とか、美肌の化粧品とか、男の俺では分からない女性の美の探求は続くものだ。
今回はまだ化粧品だけだが、石鹸、シャンプー、リンスなどでも効果の上昇はありえるから、ブランド化は絶対にやるべき。
しかし、こんな物を発売したら、世の中の女性はどうなるんだろう? それだけじゃなく、そういう奥さんがいる男性も正直苦労するだろうな。
高級品という事はお金が掛かる。自分が働いている女性はまだ良いが、専業主婦の人の旦那は稼がないと奥さんから何を言われるか分からない。
それを考えるとご愁傷様である……。
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