第194話 魔鋼
ミランダの美魔女ブランドの化粧品は、フランクから担当がいつの間にかグラン一家の女性陣に変わり、積極的に協力している。
まぁ貴族とかに売るならローレンやフランソア、シャーロットの協力は不可欠。勿論、この三人が一番に使いたいというのもあるだろうが……。
俺としてはサラが独自に研究してるので、そちらを応援している。
売れないけど……。
魔石の研究と言えば俺もやっている。今は武器に使える金属に、魔石を混ぜて作る合金の研究。
この世界の鉄は普通の鉄だと思っていたけど、どうも違うようだ。
結論から言えば、この世界のあらゆるものに魔力? この場合は魔素が含まれていると言った方が良いか。
だから高魔力帯の果物は季節に関係なく育つし美味しい。言い方を変えれば、この魔素が濃い物が美味しいと言っても良い。
そうすると、この世界の鉄に魔石を混ぜると魔素の多い鉄が出来るという事。これを俺は魔鉄と呼ぶことにした。これに炭素を含ませれば魔鋼が出来ると思う。
元々、魔素が含まれているのだから、その時点で魔鉄ではあるのだが、全ての物に魔素があるなら、これは無いと考えても良い事。
増やしたり減らしたりすれば、性質が変わるから、その時に初めて呼称が変わるべき。
これの最たるものがミスリルである。この世界の銀にも魔素は含まれているけど、その濃度が濃くなることでミスリルが生まれる。
この事から今までの難題が解決するかもしれない。それは配線の問題。
これまではミスリルを利用した配線ばかり考えていたが、銅と魔石の合金ならもっと安価に作れるのではと思っている。勿論、魔石の混合比がどのくらいかにもよるけど。
ミスリルは兎に角人工的に作るのに時間が掛かる。それなら魔石を使った方が時間が掛からない。ミスリルは銀に魔石を混ぜても作れない物だから。
合金というより変質してるからね。宝石でいうならダイヤモンドのような物。元は炭素が色々な作用で変質したものがダイヤモンド。ミスリルは魔素によって銀が変質した物。
変質しない鉱物、天然の魔鉄も存在するかもしれない。だけどそれがあるとしたら、魔境の相当深い所の鉱脈。
色々な合金は拠点の鍛冶職人も作っているから、それは追々試すとして、今は魔鋼を作って、それに魔法付与が出来るかの確認が先決。
魔素を多く含んだ金属に魔法付与が出来れば凄い武器が出来る。勿論、それが出来れば、ミスリルを多く含んだ刀にも出来ることになるが、失敗して刀をダメにしたくないので、魔鋼で初めに試す。
拠点の鍛冶職人には1週間の休暇をあげて、拠点の鍜治場を俺が独占して使う。流石に今回はまだ見せられないから、拠点メンバーに交代で休暇をあげるという名目で鍜治場を空けさせた。
今回は俺の目論見での休暇だが、この際だからと思い、グラン達と相談して拠点メンバーに休暇を定期的に設けることにした。年末年始と週に1~2日の休みは今までもあったけど……。
ただ言われた本人たちは、どうして良いのか分からず、戸惑っていた。この世界に休暇などという物は存在しない。良くて年末年始に少しあるぐらいで、殆どが、一度奉公に出たら何年かに一度里帰りが出来るぐらい。
先ずは魔鋼を作るのに、使う魔石の量と質を変えて作ってみる。物凄く面倒だが、先ずは合金の種類を沢山作ってみないとその先に進めない。
本来なら、鉄鉱石から製鉄するのだろうが、大量に必要でなければ、錬金術で純鉄が作れる。純鉄が出来れば合金も作りやすい。
次の工程も普通なら純鉄を溶かしてそれに、魔石を砕いたものを加えて、溶かすのだろうが、魔石を熱で溶かしたことが無いから、出来るかも分からない。
錬金術で魔石を使う時は錬成陣で溶かすから、物理的に溶かせるのかはやったことがない。一度駄目してみる価値はあるかな? どのくらいの温度で溶けるのかも分かるから。
熱では溶けないという可能性も……。
今回は最終目的が、魔鋼で作った武器に魔法が付与できるかだから、その辺は簡略化して、錬成陣を使う。
正確に同じ純鉄のインゴットは作れないから、正確な合金の配合の分量は計れないけど、大まかには答えは出るだろう。
先ずは、純鉄のインゴットを大量に作る。インゴットが出来たら魔石の量を変えて錬成陣で合成していく。次は魔石の質を変えて、高レベルの魔石も量変えて合成。最後に、高魔力帯の魔石で同じことをする。
出来た合金を今回は鍛造ではなく、鋳造で剣の形にして、少し叩いて成形し、研いで剣を作る。
俗にいう鋳造の剣。この世界の剣の基本形。
全部のインゴットを剣にするのに、3日掛かった。出来た本数は30本、配合を変えた魔鋼の剣が30本出来たという事。
ここからが本番、魔鋼に魔法が付与できるか?
これをやる前に、普通の鉄の剣で付与魔法が出来ないことは確認済み。付与が出来ないことは魔法が弾かれるから直ぐに分かった。
今回付与する魔法は創造魔法で作った、斬鉄(高周波振動)、研ぎが必要無くなる不壊、他にもできる可能性はあるけど、今回はこの二つだけ。
一番初めに付与するのは高魔力帯の魔石を一番多く使った物。なぜこれかは、結論をいきなり出したいから。
だって、一番可能性が高い物で出来なかったら、そこで研究は終了。剣に魔法は付与できないと一発で分かるからね。
これは俺の想像だけど付与にも相性があると思うんだよね。今回付与する魔法でも、順番によっては出来ない可能性もある。
不壊という魔法が魔法付与も弾くなら、後から斬鉄は付与できない。やるなら斬鉄を先に付与して、後から不壊を付与する方が確実。
ということで、先ずは斬鉄から付与してみる。剣に触りながら、高周波振動をイメージして、それが剣に付与されているというイメージを作る。勿論、アニメの高周波ブレードもイメージしてる。
俺の鑑定EXの目が、魔法の発動と同時に魔方陣を認識、そのまま魔力を流し続けると、魔方陣が吸い込まれるように剣の中に消えていった。
「お~~ これは成功したのでは!」
魔石魔道具の時と同じ現象。魔石に魔方陣が吸い込まれたという事は、魔法が付与されたという事。
確認のために鑑定EXで鑑定してみると、魔鋼の鋳造剣、斬鉄の付与ありと表示された。
魔法付与が出来ることが解れば、当然不壊を付与してみる。勿論、これも成功! 鑑定でも問題なく付与されていることが確認できた。
この時、俺は無性に試し切りがしたくなったが、目的は魔法付与がどのくらいの合金まで出来るかを調べる事だから、試し切りがやりたい衝動を必死に堪えて、次の剣に付与をした。
その後も可能性が高い順番に付与して行ったが、途中で魔法が弾かれた。
魔法が弾かれた剣の前の配合の合金が、付与できる限界という事。それにそれが一番安く作れる剣ということになる。
結果分かった配合は、高レベルの魔石がインゴットの半分の重量の物が限界だった。
魔法付与した剣を作ろうと思えば、魔境の森の魔物の魔石が剣の重量の半分の重さになる、量が必要だという事。
大剣を作ろうと思えば、相当な量の魔境の魔石が必要になる。そうなると魔境に面していない国では魔石を輸入するしか作れないという事になる。
魔石を混ぜた剣には付与できたが、他の物でもできるのか? その配合は今回と同じような配合なのか? 付与する魔法によって配合は変わるのか? 同じ不壊を付与するにしても、ガラスだと魔石のレベルは変わるのか?
今、思いつくだけでも疑問はこれぐらいある。この先本当に研究しようと思えば専門的に研究した方が良いだろう。
ただそうなると、鍛冶職人+付与術スキル持ち、ガラス職人+付与術師のように、職人だけでは作れない。
ガラスに不壊なんて付与したら、壊れないガラス食器や防弾ガラス以上の不壊ガラスが出来る。
こうなると付与術も習熟度や魔力量が関係してきそうだな。高度な付与は習熟度と魔力量がないと出来ないとか……。
この場合の習熟度にはイメージ力も当然関係するだろうな。
こんな研究をしてると、益々引きこもりたい。いっその事、出来るか分からないが、闇魔法で魔法契約書を作って秘密保持を厳密して、情報を公開、拠点メンバーにやらせるか?
いや、その必要はないかな? 今回は材料と魔石を錬成陣で合成したけど、錬成陣なら完成品に魔石を合成できるかも?
それが出来れば、情報の公開は賢者候補だけで済む。今は、だけどね……。
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