第195話 付与魔法の法則

 魔鋼で付与付きの剣が出来たが、これって何剣? 魔刀はミスリル合金に魔力を通すことで切れ味が増し、強度が上がる。魔法の付与はしていないけど魔刀と呼んでいるから、魔鋼に付与した剣なら、魔剣? 魔法剣?


 付与してない魔鋼の剣は魔鋼剣と言った方が良いのかな? それとも魔鋼で出来た剣?


 良く考えると、ミスリルで出来た刀を魔刀と言ってるけど、これも違うよな。魔鋼で刀を作っても魔刀だもんな……。


 これは名称を決める前に、二つ確認する必要が出てきた。魔鋼だけで作った付与なしの剣に魔力を通すとどうなるのか、確認する必要がある。


 もう一つは、ミスリルの魔刀に付与してみること。


 確認する為には、また魔鋼の剣を作ることになるのか?


 いや、あるじゃないか! 魔法付与が出来なかった配合の剣が!


 付与できなくても魔力が通せれば、確認は出来る。ミスリルじゃないから魔力の通りは良くないだろうが、俺の魔力量なら問題ないだろう。


 結果は、魔力を通せば多少だが切れ味が良くなるという事が解った。しかし結構な魔力を使うから、実戦向きではない。


 残るはミスリルの魔刀に付与してみる事。ミスリルの魔刀に付与したらどうなるんだろう? もしかして付与できないなんてないよね?


 当然ありませんでした。魔力を良く通す物質に魔法が付与できない訳がない。


 出来ないかもと思っていたのは、前世のアニメでミスリルで作った鎧には魔法攻撃が効かないというのがあったからなんです。


 これって結局は魔法を魔素として吸収しちゃうから、効かないという事なんでしょうね? これも今度実験して確認しなくては……。


 これで名称を決められる。魔鋼で作った剣も刀も魔剣、魔刀、結局は魔鋼にしろミスリルにしろ、魔素を含んだ金属だから魔素を含んだ金属で作られているから、魔剣と魔刀。


 魔法付与してる魔鋼の剣とミスリル合金の刀は魔法剣と魔法刀という事になる。


 ミスリルが大量にあれば、ミスリルだけの剣や刀も作ってみたいな。どんな武器になるんだろう?


 ちなみに俺の魔刀は、魔法刀になって、切れ味がとんでもないことになりました。


 今回付与した魔法は斬鉄(高周波振動)だから、魔力を通さないと発動しないと分かりますが、不壊はどうなんだろう?


 スキルにアクティブとパッシブがある様に、魔法にもあるなら、不壊はパッシブで斬鉄はアクティブという事になる。


 これを確かめるには魔力を通さず、硬い物を切って刃毀れはこぼれするかを確認すれば良い。わざとお壊すなんて心が痛むが、これも実験、この先必要なものと心を鬼にしてやってみたが、心配をよそに不壊はパッシブの魔法で、刃毀れすることはなかった。


 この結果は非常に良い前兆だ。魔石を合成した他の物に不壊を付与出来れば、パッシブだから壊れないという事が確約されたのだから……。


 付与魔法も、もっと研究しないとな。今までは魔道具に使える魔法だけだったが、今回のように幅が広がれば、色々違ってくると思う。


 前世では出来なかったことが出来るのが魔法だから、前世にない家電も作れるという事。今までは俺の前世の知識が思い込みを作ってるから、出来ない、作れないと思っている物でも作れる可能性が高い。


 例えばポットのように保温するには前世なら真空状態を作って保温するが、保温魔法が作れたらどうだろう? 真空状態なんて必要なくなるのでは?


 だって飛行船の重量軽減魔法って、一種の付与魔法だからね。それなら保温魔法も作れる可能性は高い。


 重量軽減魔法ってその物体の重力を減らしてるってことでしょ。こんなの前世では特殊な方法じゃないと出来ない。無重力なんて確か出来ても8秒ぐらいだったかな?


 宇宙飛行士が訓練で疑似無重力を体験するのに、飛行機で急降下して体験するのがあるけど、あれだって完全な物じゃないからね。


 アニメとかだと逆に重力を余計に掛けるグラビティだったかな、そんな魔法もあったね。


 これって重力という物を認識していて、それが増えるか減るかと結果がどうなるかをイメージできれば出来るんだよね。重量軽減魔法がそうだから。


 重量軽減魔法=重力軽減魔法という事ですね。これからすると、飛行魔法も可能になる。でも人が空を飛ぶなら、空気抵抗や圧力低下、低酸素、など色々と考えなくてはいけない。まぁそれも3000m位の高さならだけど……。


 これも今度試してみよう。魔法はイメージだから飛行魔法も出来ると思うけど、どうイメージするかで必要な魔力量が変わりそうな気がする?


 重力とかそういう物を一切イメージしないで、ただ飛ぶ魔法のイメージだと、魔力量は多分かなり多くいると思う。


 この魔法の研究はまた今度にして、今は付与魔法のもう一つの可能性について検証しよう。


 先ずは、完成品に魔石を錬成陣で合成できるか? これが出来たら製品作りに物凄く差が出る。


「それじゃ、先ずはガラス食器と陶器に魔石が合成できるかやってみるか」


 結果は成功した。錬成陣で魔鋼を作った時と変わらない、魔力で……。


 でもこれだと大量生産には向かないな。俺ぐらい魔力があっても、一日に作れる量に限りがある。


 実際、魔石の量が増えれば、その分錬成するのに魔力が比例して増えたからな。


 製品に魔石が合成できたなら、次はそれに魔法を付与してみる。その付与する魔法によって魔力量が変わるだろうから、その法則も調べないとな。


 単純に考えれば魔法が高度で複雑になるほど、魔力量が多くいると思うが、物によって変わってくる可能性もある。


「ガラス食器にはどんな魔法を付与しようか?」


 最近一人で籠って研究してるからか、転移して来たばっかりの時のように独り言がよくでるな。それどころかこの間なんか、考えてることが口に出ていたからな……。


 食器なら、冷却? 保温? ……? 食器にいるか? 冷却や保温の魔法ってパッシブ? それともアクティブ? まぁやってみないと分からんな?


 結果はアクティブ、魔力を流してる間だけ効果が出るタイプ。この結果で食器には付与しても、結局はそれを維持するには魔石が必要だと分かった。


 この結果を踏まえると、状態を維持する系の魔法にはパッシブの物とアクティブの物があると分かる。


「どうして? 重量軽減魔法はパッシブなんだろう?」


 重力を減らすのも温度を下げるのも、物理法則によってだよな……。専門家じゃないから間違ってるかもしれないが、減らしたり、下げ続けないと元に戻ると考えるのが普通だと思うんだが、片方は一度減らしたらそれを維持する。


「どういう法則なんだろう? ご都合主義?」


 確かに、冷却や保温がパッシブな魔法だと、冷蔵庫の冷却の魔法に魔石は必要無くなるからな。


 そういえば、食器に保温魔法なんてかける意味あるか? 料理を盛った後に魔力を通せば、料理によって温度が上がった器の温度が下がらないという事だけど、料理自体は密閉されていない限り温度は下がるよな。時間的に下がる速度が遅くはなるだろうが……。


 付与は出来ても意味がなさそうなものもありそうだ。


 魔法自体が物理法則を無視したものがあるんだから、初めからご都合主義ではある。


「法則自体がないのか? 無い事が法則なのか……」


 転移してから時々思う、色んな世界があると考えれば良いのかな?


 前世のアニメやコミックなどでも世界観は色々だ。何も無い所から金が生み出せる能力だったり魔法がある世界もあれば、出来ない世界もある。


 世界観なんて作者が作った物だから、言ってみれば全てご都合主義。法則があるようでないのが普通。それと同じで、神様が作った物だから、ご都合主義で当たり前。


 深く考えないで、でた結果がこの世界の決まり事と、捉える方が良いのかも?


 前世の常識を当てはめるんじゃなく、実験の結果だけを記録して、それをこの世界の決まり事という認識にした方が気が楽だ。


 どうしても、俺に地球の常識があるから、法則があるだろうと決めつけてしまう。全くないとは言わないが、矛盾してることがあってもそれが決まりと考える様にしよう。


 そうしないと、答えなんて何時まで経っても出ない……。








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