第196話 秘密基地
たった一週間では研究もそこまで進まないが、鍛冶師たちの休暇も終わったから、鍜治場を返さないといけない。
拠点の鍛冶職人も色んな合金を作ったり、その性質を調べて、どんなものに使えるかなどを研究してるから、魔鋼を教えて、魔石が溶かせるか調べて貰っても良いのだが、現状はまだ早いので教えない。
魔石って温度を上げ過ぎたら、最終的に気体というか魔素に成ってしまうんじゃないかな? 金属のように粘度のある状態になるんだろうか?
この事でひとつ思い付いてる事があるから、今度、週の休みに一人で、確認するつもりだ。それぐらいなら一日で出来るだろうから……。
サイラスから連絡が来る前に、孤児たちの受け入れが出来る準備を始めないといけないから、その計画を今練っている。
「サラ、サラの国にも王都に孤児はいたでしょ、どのくらい居たか知ってる?」
「私は病気でしたから、ほとんど知りませんね」
そうだよな。サラは貴族で子供の頃は貴族街から出ないだろうし、成人してからは病気で外に出ることも無いから、良く考えれば普通の人より世間を知らないんだろうな。
「それなら、父の屋敷に居る平民上がりの騎士とか料理人あたりに聞いてみましょうか?」
「それはありがたい。お願いして良いかな」
「分かりました。婆やにも丁度用事があったので行って来ますね。だけど、ユウマさんくれぐれも自重して下さいね。行動に移す前に報告ですよ」
サラに釘を刺されたが、今回は事前にフランクに報告してるから問題ない。孤児の事はちゃんと言ったからね。ただ、これからやろうとしてることは言っていない。
これは秘密なのだ。孤児院は普通に作るけど、それ以外も作るつもりだからそこは言えない。
今回作る孤児院と王都から来てもらう冒険者の宿舎は併設するつもりだ。そうすれば孤児院を冒険者が警備してるようなもんだし、交流があれば色々学べるだろうしね。
冒険者に家族がいれば、孤児院の仕事をしてもらえるし、子供は孤児院の学校で勉強も出来る。
ここまでは地上に作る普通の施設だが、俺の今回のメインは地下に作る俺専用の作業場と試作武器の試験場と冒険者と孤児の訓練場。
私設軍隊を作るつもりだから、今はまだ誰にも言うつもりはない。ある程度形になってから、これは報告するかしないか決める。
秘密に関しては絶対に守られるという保証はないけど、冒険者は契約書で一応は守秘義務を負わせるし、孤児に関しては多分大丈夫だろうと思っている。
王都からわざわざこの辺境まで来てでも、生活を変えようと思う孤児なら秘密は洩らさないだろうと思う。洩らせばこの生活自体が無くなるかもしれないんだから。
毎日ちゃんと食事出来て、寝るところもある。それどころか風呂まであるし、清潔に生活できるのを捨てるようなバカはいないだろう?
人数が分からないと規模が決められないけど、余程小さくない限り、現状ラロックには作れない。お義父さんの屋敷でさえ魔境の森に作ったんだから。
魔境の森も少し開拓したから、ある程度ならまだ土地は余っている。此処に作るのは決定なんだけど足りるかどうかなんだよ?
お義父さんの屋敷ぐらいで足りると思うんだけど、もしもの事があるから、建設予定地の所だけ、もう少し奥側まで木を伐採して開拓して置こう。
どうせ施設の周りを囲う防壁に必要になるからね。土魔法で今は作っても問題ないでしょうが、それをするとまだ他の人から異様に見えるからね。
木の伐採が終わり、整地が済んだ頃、サラが戻ってきた。
「ユウマさん、またこんな事してフランクさんに怒られても知りませんよ」
「お帰りサラ、大丈夫だよ、森の開拓ぐらいじゃもうフランクさんは動じないから」
「そうだ! サラ、この魔方陣を使ってウインドカッターを使ってみて。それでこの辺りの木を間引きしてくれない。魔法の練習にもなると思うから」
開拓してない所の木を間引きすることで、魔物を発見しやすくするのと、住み辛くしようという事。それをサラにやらせれば魔法の正確性をここで実験できるからね。
「ついでに魔物が居たら倒して良いからね」
「魔境の魔物をついでとかいうのユウマさんぐらいでしょうね」
「それはそうと、話は聞けた?」
「はい、聞けましたよ。グーテル王国は小国ですから、参考になるかは分かりませんが、王都のスラムに100~200人ぐらいの孤児はいただろうという事でしたよ」
「それって成人前の子供ってことですよね?」
「そこまでは分かりませんが、見た目的に子供と思える人の数でしょうね?」
そうりゃそうか。スラムで栄養状態が良くなければ、成長も遅いだろうから、見た目で判断するしかないか。
グーテル王国でこの人数だと、この国では王都だけでも最低この倍はいるだろう。周辺の領まで入れたら、さらに増える。
まぁこの国は国全体の景気が良くなっているから、多少は仕事も多いからその分を加味すれば、余裕を見て冒険者と孤児で500人ぐらいとみれば良いかな?
これで国も動いてくれたら良いんだけどな。スラムの孤児が居なくなれば国も気づくだろうから、この機会にスラムに手を入れて、解体出来れば良いんだけどな……。
この世界って公共事業が少なすぎる。もっと国が金を出して、経済を回せばスラムも少なくなって治安も良くなるんだがな。そこまで俺が口を出す気はないけど……。
500人ぐらいなら、一部屋に4~6人で計算すれば、孤児の施設はそんなに大きくなくても大丈夫だろう。土魔法で三階建の団地みたいなものを建てれば、3棟もあれば足りるし、余裕を見て、冒険者用の物も含めて5棟という所かな?
広さ的には病院の半分もあれば十分だな。それだと開拓する必要なかったかも?
まぁ、いっか……。
サイラスから連絡が来た、約束の1か月目には囲いは出来ていたが、サイラスの報告してきた人数が予想より少なくて、建物を建ててもかなり余裕が出来てしまった。
「ユウマさん、大き過ぎません?」
「小さい子供いるでしょうから、遊び場もいるでしょう」
サラにそう言われて、自分でも大き過ぎたとは思ったが、適当な言い訳をしてサラを誤魔化した。この世界にない遊具付きの公園でも作るかな……。
今回も二段や三段のベットと食堂で必要になるテーブルや椅子など、兎に角必要な家具全てをラロックの家具職人に依頼したら、ラロックだけでは手が足りず領都の職人にまで仕事が依頼され、また好景気になった。勿論、そこには陶器職人やガラス職人も含まれている。
次の連絡が来た2か月目にはもう建物も出来ていて、俺は地下で作業をしていた。
地下作業も慣れているから作業は順調に進み、最終的に孤児や冒険者が全員来るまでには地下の秘密施設は完成していた。
サイラスの2か月目の報告の後から徐々にラロックに孤児が冒険者が、分散して到着し始めていて、3か月目には全員が揃った。
孤児が全部で250人、冒険者と家族が70人ぐらいで、結果的に施設が無茶苦茶余ってしまった。
「ほら、ユウマさん大き過ぎたでしょ」
「だって、まさかこんなにこの国の孤児が、少ないと思っていなかったからしょうがないしょ」
実際、此処に来た孤児たちは見た目だけではなく、殆どが本当に年齢の低い子供ばかりだったのだ。成人前でも働ける年齢の子供は殆どが仕事についていたので、此処には来なかった。
新商品がラロックから売られていた頃は、ラロックとゾイド辺境伯領だけが好景気で人手不足だったが、今では商品を買い求める国外の商人もいるから、国中が好景気で人が足りず、真面目ならとスラムの孤児も就職出来たから、低年齢の孤児しかここに来なかった。
中には兄弟の兄だけが王都に残って仕事して、小さな弟だけをここに送った人もいるようだ。姉妹はその辺は違って姉妹で来ていた。その理由は孤児なので読み書きが全く出来ないので、女性でも出来る仕事が少なかったからだ。
読み書き計算が出来れば、錬金術師や薬師の手伝いという仕事もあっただろうが、流石にそれが出来ないと力仕事だけに成るから、女性には仕事が少なかった。
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