第197話 魔法武器
孤児や冒険者がやって来たけど、当分は此処の生活に慣れてもらうのと、孤児には読み書き計算を覚えてもらい、冒険者にはサイラスの指導の下、魔境に慣れてもらう。
サイラスが連れてきた冒険者は殆どがダンジョンで活動していた人達だから、強さ的には問題ないが、地上での活動に慣れて貰う期間を設けた。
孤児たちの教育はサラにやってもらう事にしたのだが、それを聞いたエリーとお義母さんが私たちもと名乗りを上げた。
お義母さんが出てくると当然のように、お義母さんの従者も付いて来る。専属メイドと専属護衛、どちらも女性だから子供たちにとっては恐怖心が出ないので良いのだが、俺には計画があるから、あまり関わって欲しくない。
秘密が多い俺が悪いんだけど……。
孤児と冒険者が慣れるまでに、俺は地下の作業場で魔法武器の製造をする。地下には魔法武器の製造に欠かせない鍜治場も作ったし、その他の生産も出来るように俺の家にある設備は全てここにも作った。
森の家に帰らなくてもここである程度の実験が出来れば、拠点の設備を借りる必要もなくなるし、フランク達にまだ公表できない実験も出来る。
まず手始めに、以前から思いついていたことを実験する。それは魔石を溶かせるかという事。
普通に金属と同じように魔石が溶かせるなら、これから人任せにするのにこれほど楽なことはないが、実際にやってみないと分からない。
その為に今回耐火煉瓦の材料で器を作った。どれくらいの温度で溶けるのかも分からないから、熱に強い容器が必要だった。
魔石を器に入れて直接火魔法で溶かせるか試したが、暫くやっても溶けなかった。それで次は、陶器を作る窯に魔石を入れた容器を入れて、陶器を作る様に窯に火を入れ温度を上げ続けた。窯の中には容器が二つ、このもう一つの容器が俺のもう一つの実験。
今回地下に作った陶器用やガラス用の窯には、特殊なレンガを作って窯の性能を良くした。その煉瓦は耐熱煉瓦で珪藻土や軽石が見つかったので、他の物と色々配合を変えて、一番良い物を耐熱煉瓦とした。
耐火煉瓦の外側に耐熱煉瓦を設置すると熱が外に漏れ難いので、窯の内部の温度が上がりやすくなる。
更に、この世界ならではの魔法も付与してみた。耐火煉瓦と耐熱煉瓦に魔石を錬成陣で合成、それに耐火の魔法と耐熱の魔法を付与したのです。
耐火煉瓦は普通に劣化しますから、長期間使うことは出来ません。特に高い温度で使えば使う程劣化が早くなる。
耐火と耐熱の付与魔法は何故かパッシブ、一度掛けたら効果は消えない。これどういう事なんでしょうね? 保温も耐熱も同じように熱を逃がさない効果なのに、保温はアクティブ、耐熱はパッシブ……。
使ってる材料と用途が原因でしょうか? 本当に付与魔法は分からん……。
窯の温度がどんどん上がって行く、二つの容器に反応が出たと思ったら、片方の容器の魔石は一気に消えた。もう一つの容器に入っていたものは赤くドロドロしたものに変わっていた。
一気に消えた方は魔石が魔素に変わったのだろう。そしてもう一つの方は俺が魔石と一緒に入れていたものと反応してあの状態になったのでしょう。
この一緒に入れていたものは、この世界の万能魔物スライムの核です。スライムは火魔法で攻撃しても倒せますが、核は残ります。核自体は短時間の熱には強い、だから外部が燃えてなくなっても残る。
スライムって何でも食べるから、この世界の生物に全て含まれている魔素を吸収して生きてるんじゃないかと思った。それなら魔石が魔素に変わる時吸収するんじゃないかと思って今回一緒に入れてみたのです。
これは本当に単なる思い付きだった。スライムって色んなものに加工できるし、核は肥料にも使われていて、魔石じゃないのに高濃度の魔素を含んでいたから……。
今回の反応も不思議でした。前世の常識なら鉱物が溶ける時って徐々に溶けるものですが、魔石は一瞬で消えたし、核を入れていた方も一瞬でドロドロになった。
そしてそのドロドロしたものを鑑定したら、この状態なら他の鉱物と合成できると出ていた。
この反応の仕方だと、全ての鉱物を一緒に溶かすのは無理だと思う。魔石以外は同時に溶かしても良いだろうが、核だけは別に溶かして後から混ぜるしかない。
まぁ錬成陣以外でも合成出来る事が解っただけでも良しとしよう。
これで大量生産も可能になったのだが、今回の目的は剣以外の魔法武器を作る事。
この世界に現状ある武器は剣、槍、斧、弓。防御だと鎧と盾しかない。
今まではレベルも低く、身体強化も無かったのだから、大剣やバトルアックスのようなものは使える人が殆どいない。体格が良く、力自慢の人が少し長めの剣や斧を使っているぐらいで大剣と言えるものはなく、バトルアックスのような使い方が出来るものは無かった。勿論、ハルバードも含まれる。
槍も戦争が無いから、ダンジョンや森での使いまわしが良いように、短槍が主流。これと同じで、弓も射程は短いが短弓が主流で、長槍と長弓は軍隊、騎士団ぐらいが使っているだけ。
この世界にない武器や防具は今後作るとして、先ずはこの世界の武器を魔鋼で作って、魔法を付与した魔法武器を作る。
問題はその武器に合った魔法が何かという事。武器だから不壊は絶対として、それぞれに合う魔法を決めて作らなければいけない。
ここで一つまた俺は疑問がわいた。前回は不壊を先に付与したら拙いかもと思い、斬鉄から付与したが、不壊を先に付与したらどうなったのか? これやっていなんだよね。試験用の剣がそんなになかったし、目的が付与できるかだったから。
これ不壊だけだったら、もっと魔石の配合が少ない物でも付与出来たんじゃないだろうか? だって陶器やガラスに出来たんだから……。
付与魔法にも難易度があって、斬鉄は無理でも不壊は出来るとかありそう。それにご都合主義付与魔法の毒無効とか付与したアクセサリーは作れないとか?
でも魔法はイメージだから作れない物はあるんだろうか? 毒が無効というイメージ……?
いかんまた思考が横道に逸れた。
不壊じゃなく耐久力上昇なら魔石の配合率が低くても出来るかもな。付与魔法としては不壊より効果が低いから。
しかしこうなると、全部の武器で配合の低い物から高配合の物まで作って、魔法も種類を変えて試さないといけないな。
同じ付与魔法で魔法破棄とか出来るかな? これが出来て、再度魔法が付与出来るなら、何度でも同じ武器で試せる。
もしくは魔石を追加で合成して、魔法の上書きとか?
マジこれは、とことん研究しないと魔法武器は作れないな。いや、作れないじゃなく、作れるけど物凄くパターンがあるという事。
先ずは純鉄の槍の穂先を作って、それに魔石を1個づつ増やしながら刺突上昇の付与をしていく。これでどのぐらいの魔石を合成すれば魔法が付与出来るか確認する。
次に市販の槍を買ってきてるから、これに魔石を合成して付与してみる。鉄の純度が違うから、正直結果に興味がある。
純度が違えば、同じ効果を基準にすれば、魔石の配合率も変わってくるだろうな。
付与する魔法は同じく刺突上昇。刺突上昇のイメージは刺さる時の抵抗が減るというイメージでやった。
俺の魔鋼の時と同じく、魔石の分量を重さで記録して、ホーンラビットの魔石を一つづつ足して行って、刺突上昇が付与できる数を探る。レベルが同じラビットなら殆ど魔石の大きさも重さも変わらないから、重量を正確に計らなくても良いが、記録としては取っておく。
そうすればウルフの魔石とラビットの魔石何個とか言うように混ぜることも出来る。
結果、市販の槍にも付与は出来たが、魔石の数がちょっと増えたどころではなく、純鉄で槍の穂先を作った物のと比べたら、2倍以上魔石を使ってやっと付与出来た。
今回の実験で純度の低い鉄でも魔石を合成すれば魔法付与は出来るという事が解ったが、これミスリルにも魔石の合成って出来るんだろうか?
ミスリルという金属に成っているのだから出来るのか? それ出来るとして、元の銀に魔石を合成するとミスリルに成るのか?
こ! これは、物凄い事になったぞ! もしこれが出来たらミスリルが今まで以上に簡単に出来てしまう。ただどれくらいの魔石を使うかは未知数だが……。
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