第77話 スライム養殖場と畑
学校と拠点にはスライム養殖場がある。スライムの討伐?スライムクッションの材料調達?これは今、学生達の仕事だ。
体育の授業で魔物を狩らせているのがこれ、最弱の魔物だから危険が殆どないうえ養殖場だから数が物凄くいるからレベル上げにはもってこい。
ただこの養殖場にいるスライムは魔境のスライムも混じっているから中には中々倒せないのもいる。レベルが高いから素早いのだ。
スライムは核を壊せばいいだけだからコツをつかめば誰でも討伐できる。
だけど一般人はわざわざそんな事はしなかった。今まではね……
最近はクッションの材料に成るから、小遣い稼ぎに子供達がスライムを狩ってフランクの店に持って来ることもある。
このスライムの討伐で核の壊れたものが大量にでる、それの処分の方法を考えてる時に、俺は閃いた!
この核って魔石では無いけど魔力を含んでるのではないかとね、鑑定してみるとやはり魔力を含んでいた。
魔境の森は魔力が濃いから魔物も強いが作物も良く育つ、季節を無視したものまであるほどだ。
それならスライム養殖場の周りに作った畑に核を細かくしたものを肥料のように蒔いたら、作物が良く育つのではないかとやってみた。
案の定育ちが早い、普通四か月掛かるものが二か月で収穫できた。しかし?魔境の森だと土の養分も高い?濃い?強い?のだろう早く成長しても土に影響は出ないが、流石に此処では土が弱くなっている。
それならと普通の森の腐葉土と消石灰、スライム核を畑の土に混ぜたら次も品質が変わらず早く収穫できた。
「これは商売になるのでは?」
ただ懸念もある、それも含めて緊急会議招集です。グラン一家集まれ!
「今日はユウマ君がまた面白い物を作ったのでその取扱いについてが議題です」
グランの「また」の所に疑問はあるが、俺は今回作成した肥料について説明した。懸念も含めて。
「確かに良い物だけど、ユウマが懸念してる事は起きる可能性はあるな」
俺の懸念は、肥料の特許登録をすると
1 一般人が森に入る可能性
2 スライム養殖が出来なければスライムが駆逐される
3 腐葉土が採りつくされる可能性
特許登録しない場合
1 現状の肥料だと早く育ちすぎて供給過多になる
2 近隣の腐葉土を取りつくして遠方より運べばコストが高くなる。
どれも絶対ではないし、解決策はあるけど、こういうことはこの世界の事を良く解ってる人の意見を聞かないと失敗する。
スライムクッションもいつまでも爆発的に売れ続けるのは無理だろうから、スライムの使い道が増えたことは良い事なんだけど、どうしたものか?
その後会議ではいろんな意見が出たが、結局グラン商会だけでは解決できないと言う事に成り、国の食糧問題に直結するので国に話を持って行くことになった。
勿論、肥料の成分の配合割合などの研究も続ける。成長速度をもう少し緩やかにしたり、速度は変わらないが品質が上げられないかとかね。
この研究は学生たちにやらせる。スキルの発現には関係ないが、自分達で配合を調節した結果が解ることで、研究するという事の意味や意義を認識させる。
いいね、学校と拠点が研究施設ぽくなって来た。
翌日、国に話を持って行くためにグランとジーンが領都に向かった。
グラン達から報告を受けたビクターは直ぐに王都に連絡をいれ、対応を検討してもらう事に。グラン達が領都に行って帰って来てから、二週間後に王都から役人がやって来た。
その一行にはまたカルロスとビクターもいる。宰相や領主って忙しいはずでしょ?
カルロスとビクターが一緒に来たわけは国や領の農業政策に関係してると言う事もあるけど、学校でスキルの発現が進んでいることもあるようだ。
到着した日は歓迎会をして、翌日、学校の畑やスライム養殖場の視察をし、その後会議をした。
「凄いですね、肥料の効果は他の場所では作付けしてやっと芽が出たぐらいなのに、此処ではもう青々となっている」
役人の一人がそう言うとみんな頷いている。
「しかし報告にあったようにこの速度で成長すれば過剰供給に成るのも頷けます」
別の役人が言う
「これは確かに国が対応する案件ですね」
また別の役人が言う
グランから懸念については報告されていたから事前に国で協議はしていたが、実状を見て最終判断をしたいと今回の視察になったようだ。
特にスライム養殖場がどういう物か解らなかったのが一番の理由。
この国の汚物処理は教会の浄化に頼っているのでスライム下水処理システムがどういう物か解らなかった。
これはちょっと拙いかも、教会に喧嘩を売る?
この時グラン達はそう思っていた。
だが役人達はその解決策も考えているようだ。スライム下水処理システムは王都や大きな町ではなく、小さな村でやるようだ。
小さな村なら浄化の折り(魔法)に払われるお布施も金額的に多くないので、その分の収入が減っても教会は気にしないだろうという事。
それにスライム養殖場が出来て肥料作成の仕事も増えるし、村の作物が良く育てば飢饉の心配もなくなる。
小さな村は殆どが農家だから、収入源が増えれば経済が回って国全体が潤う。他にも小さな村ほど、日頃から森に入って狩りもしてるから危険度が少ない。
本当に良く考えられている、だが一つだけ問題がある、それはそのシステムをどうやって作るかだ。
これは拙いぞ、ユウマの事は言えないからどうやって作ったか言えない
グラン達はまた困った。
「グランあの下水処理はどうやって作ったのだ?」
聞かれたくない事だったが答えるしかないグランは仕方なく
「依然知り合った土魔法師に作って頂きました」
それならその魔法師にまたお願いすれば作って貰えるかとビクター達は思っていた。
しかしグランは付け足す。
「その魔法師様は今は旅に出て行かれましたのでいらっしゃいません」
これで誤魔化せるとはグランも思っていないが、いない人物といないようにする人物を一緒にすることで少しでも違和感をなくして説明するしかなかった。
当然疑念は持たれただろうが、いないという人の事をそれ以上聞けないのでビクター達はどうするか議論を始めた。
最終的に国の公共事業として土魔法師を募集して工事をすることに決定した。
募集もそうだが川の水を利用するので場所の選定には時間が掛かるから、本格的に肥料事業が始まるのはもう少し先に成る。だから此処での肥料販売も遅らせることになった。
この時、鋭いカルロスはグランが何か隠してると思っていた……
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