第46話 ガラス職人
陶器工房の親方から紹介された二人の職人は二人とも修行3年目のもう少しで一人前と言う若者。キッド18歳とロベルト18歳。
二人ともこの世界の常識ともいえる、農家の三男坊で成人と同時に親方の所に弟子に入ったという。
フランクがノームに紹介してくれる人は半人前でもいいから真面目で根気の有る人をお願いした結果がこの二人。
二人にもノームと同じようにユウマの陶器を見せて、同じくノームの反応と同じことを繰り返してから、承諾を貰った。
勿論、守秘義務の契約もして、拠点が完成したらそちらの工房で働いてもらうことも承諾してもらった。
ノームにはいつでも拠点の工房に出入りできる権利を与え、身分証を作った。
流石に工房主が何日も工房を空けるわけにはいかないので、時間がある時にいつでも拠点に来て技術を学んでもらうことにした。
他の拠点で働く従業員も全て守秘義務契約を結び、身分証を作ってある。
当然拠点の護衛も雇いたいが、正直冒険者は真面目な人の方が少ない程なので、秘密ばかりの拠点の護衛を任せられるような人がいない。
仕方がないので当分はユウマの魔石による結界魔法で拠点全体を囲ってもらうことにした。悪意のある人は入れないからね。
パワーレベリングしたメンバーなら一人一つの魔石に毎日少しづつ魔力を入れれば維持できるので、護衛が見つかるまではこの体制でやる。
陶器職人は見つかったが難航したのがガラス職人、当然と言えば当然なのだ。ガラスと言う未知の物を作るのだから、現在そんな職人はいない。
ラロックの農家の真面目な次男坊や三男坊は既にロイスがレンガ職人として雇ってしまっているので、正直残ってるような奴は真面目じゃないので信用出来ない。
フランクはどうしたものかと悩みに悩んだが良い案はいくら考えても出てこない。
異世界定番の奴隷制度でもあれば解決策の一つになっただろうがこの国には奴隷制度は無い。
この国というかこの世界にないのだ。犯罪者は刑務所のような鉱山で隔離されてるし、借金の返済が出来なければ犯罪者と言う括りになって期間限定で鉱山行きだから借金奴隷も存在しない。 借金を肉体労働で返すと言う事ね。
それに生産職の多くが弟子制度を取っているので、それなりに雇用もあるし、最悪冒険者になれば食って行くぐらいは普通にできるので借金をする者が殆どいない。
病気や怪我の治療費で借金何ていうのが異世界物のテンプレだが、この世界は違う、ポーションや薬で治せるもの以外は諦めてしまうのだ。
ましてポーションは高額でもそこまで酷い怪我を負うのが冒険者ぐらいだし、この世界の不治の病には薬も存在しないから安価な薬で対症療法の延命をするぐらい。
話を戻すがこんな世界だから奴隷による解決策は案としてもフランクには浮かんでこない。
考えに考えた結果フランクが出した結論は、なんと自分が技術を学ぶと言うものだった。
元々新し物好きのフランクだから当然と言えばそうなのかもしれない。店舗経営者だからこれまでは自分で作るという発想は無かったけど、どうしても職人がいないのなら最終的にこの結論に至るのも必然だった。
経営者なのに、錬金術や薬の本を持ってるぐらいだから、切っ掛けがあればそうなる。
フランクが拠点完成後にユウマにガラス職人は自分がやると言った時のユウマの反応は「そうなるか」だった。
ユウマは本来ガラスも錬金術で作れるのは知っていた。だって材料さえ有れば錬成陣にイメージを魔力として入れれば作れるのだから、ガラスも当然作れる。
言い換えればイメージや工程が解っていれば何でもできると言うのが錬金術の究極の答えだ。
ただ鍛冶や陶器のように作る工程は知っていても錬金術では専門の職人が作るものと同様の物は作れない。所謂劣化版が限界なのだ。
錬金術で純鉄は作れる。純鉄と言うのは凄いかもしれないが、本来鍛冶には向かない。ある程度不純物が混じってる方が強度があったりする。だからこそ専門職がいる。
それ故ユウマはガラスを結界魔法を使って普通のガラスを作る工程を結界魔法を駆使して作っている。
拠点完成までに何とか職人は手配出来たがその間にもラロックの村と領都ではそれぞれで問題が起きていた。
ラロックでは本格的にユウマ製ではない燻製の肉、川魚、ベーコンの販売が開始された、当然価格も安くしたのも影響して、味は落ちても飛ぶように売れた。
始めはラロックの飲食店や宿屋に販売していただけだが、噂が広まってからは冒険者や個人での購入も増え、燻製業者は本来の塩漬けの商品の製造が出来なくなっていた。
そこに上乗せで、ラロックに行商に来ていた商人が目をつけ、燻製品などを領都に持ち込んだ結果、瞬く間に広まり製造が完全に追いつかなくなってしまった。
フランクの店にはユウマ製の高級燻製品を置いているのだが、割安商品が出回れば、販売数は落ち着くと見ていたんだが、こちらも結果として商品はあっというまに完売、問い合わせの嵐がまた戻ってきてしまった。
領都での問題はそうあの医者絡み、ローレンとジーンが領都に戻って辺境伯夫人との面会を申し込もうと動き始めた時に、これまた偶然街中でジーンが医者に見つかってしまった。
留守番のフランソアも最近は極力、町には出ないようにして用心していたのだが、暫く留守にしていたジーンは本店の店主として商売上戻ってきた以上挨拶に行かなければいけないところもあるから、仕方なく町に出ていた。
「ジーン見つけたぞ、今日こそはシャーロットの病気について教えてもらうぞ」
この医者スベンは領都ではそれなりに有名で腕もいいのだが、高額な診療代を請求する事とけっこう悪い噂のある人物。
医者と言う表現をしてるがこの世界の医者は少しの治癒魔法と薬師のスキルを持っている人の事を注す。
教会は治癒魔法専門でそれなりに使える人が在籍しているが、そこは異世界テンプレで暴利をむさぼっているし、治癒魔法では病気は治らない。
だからこそ少しの怪我と病気を治せる薬師のスキル持ちが医者を名乗っている。
「私に聞かれても何も答える事は出来ませんよ。妻からも同じことを言われたでしょ」
「そんな事言っていいのか? 金輪際お前の家族の診察はしないぞ」
正直ジーンはその時どうでも良いと思っていた。だってユウマと言う未知の病気でさえ完治させる薬を作れる存在がいて、尚且つ今は公表できないが、ポーションだって効果の高いものが頼めば簡単に手に入る。
今は初級だけしか手に入らないが、近いうちには中級も上級も手に入れる事が出来るようになるだろうし、販売を始めるのは家の店なのだからそう思ってしまった。
「そうですかどうぞご自由に、では失礼致します」
「おい! まて!」
流石に往来の真ん中でそれ以上は出来なかったのだろう、後で何か騒いでいたようだがジーンは無視して先を急いだ。
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