第45話 森の入り口の拠点完成

 翌日、ローレン達は領都に朝早く向かった。


 昨日はユウマもフランクの店に泊めてもらい、夕食を共にした。


 実はその時もひと悶着あった。会議の後の雑談で森での食事が美味しかったと皆が言うので、当然専属料理人のケインが黙っていない。


 どういう料理だったのか根掘り葉掘り聞くし、ユウマが店に来てからは作り方を教えろと離れない。


 仕方がないので、店にある材料とインベントリに入っていた香草などを使ってユウマが教えながらケインが料理した。


 料理を食べた後ケインは


「今度、森に誰か行く時は俺も行く、これは決定だ」


 その言葉に困惑したのは勿論フランク、店の従業員の料理は誰がするんだ?


 俺はこういう時はわれ関せずが一番だと思い知らんふりをした。その時がくればどうにかするだろうフランクが……


 今日の拠点工事にはレンガ担当だからと言う理由でロイスも付いて来た。だが拠点が見える所まで来たロイスは口をポカンと開けて動かなくなった。


 当然だよね、一日しか経っていないのにもう囲いは門以外完成してるし、空堀まであるんだから。


「ユウマさん、これはどういうことですか?」


「ん! 気にしない気にしない、考えるだけ疲れるよ」


 ユウマは説明するのも面倒だから、適当に返事して誤魔化した。


 ロイスも追及しても答えてくれないなと思ったのか、それ以降は何も聞かなかった。


 それでも流石にレンガ担当だと言う責任感でユウマが黙々とレンガや耐火煉瓦で建物や窯を作って行くのを間近で食い入るように観察、メモを取っていた。


 3日目には殆どの建物や窯が完成、やけに深く穴を掘ってると思えば井戸まで作ってしまう。トイレは空の水魔法魔石を利用した水洗、今回は川の流れを利用出来ないので森と同じ下水システムは作れないけどスライムを使った似たようなものを作る。


 それを見たロイスはもう何をどう言っていいのか解らくなり、グランとフランクへの報告が大変だった。


 4日目からはレンガ職人として雇った農家の次男坊や三男坊たちにレンガの作り方を伝授、5日目に一度森の拠点に帰ると伝え7日後に来るからそれまでに出来るだけレンガを作っておくように頼んだ。


 森に帰ってから6日間は何時もの燻製を作ったり、これから必要になるガラスの材料を集めたり、釉薬を作った。


 最終的には全部人任せにするんだから、材料から必要な物を作れなければいけないから、釉薬の材料も準備した。


 無茶苦茶忙しかったが、今は忙しくてもしょうがない。いずれ楽をするためには今が頑張り時、若返らせてもらって今は17歳なんだから少しぐらいの無茶は全く問題ないので社蓄のように働いた。


 7日後に約束通り森の入り口に着くと馬車はもう来ていたのに人がいなかった。


 多分拠点の方だと思い行ってみると案の定拠点の中に皆いた。


「おはよう、商品持ってきたよ」


 何時も道理にご挨拶、それに反応して全員が振り返る。


「ユウマ君流石に早すぎるよ、ロイスから報告は受けていたけど流石にここまでとは」


 今回もユウマは


「気にしたら疲れるだけですよ」


 適当に返事して誤魔化した。


「はぁ~~そうだね気にしたら疲れる。その通りだ。あはは」


 グランがそう答えると周りも皆諦め顔で頷いていた。


「それじゃ出来たレンガで囲いの内側を補強していこうか、やり方を見せるから良く見て覚えてね」


 レンガで囲い全部を補強するにはどうやっても半年以上かかるだろう。下手すると1年かかるかもしれない。


 あくまでもレンガは補強、補強が終わったらはじめて最終的に完成した事に成るけど、この世界では現状でも完成してる。門が付けば……


 ということで早速、レンガで補強するやり方を見せた後、俺は門の設置に取り掛かり、夕方には完成。


 これで一応の拠点完成をやり遂げた。


「後はおいおいレンガを積んで行ってくれればいいからこれで拠点は完成かな。明日からは石鹸などもここで作ることが出来るよ」


 必要な材料も全て、倉庫に入れたし、錬金術に必要なガラス器具も建物に設置、予備も当然置いたから暫くは俺のすることは無くなった。


 そう思った時……


「あれ? そう言えば、ガラスや陶器は誰が作るの?」


 レンガ職人は左官職人も兼ねてるし、錬金術師はいるけど、ガラス職人と陶器職人がいないことに今更ながらに気づいた。


 遡る事数週間前、初めての会議が躍った時に、陶器やガラス関係はフランクが担当することが決まっていた。


 フランクは先ずフランクの店と取引のある工房を訪れ、親方と話をすることに。


「ノームさんこんにちわ」


「おう! フランクじゃねえか、どうしたんだここにお前さんが来るなんて珍しいな」


「ちょっとご相談したいことがありまして」


「相談? 卸値を安くしろはできねぇ相談だぞ」


 まさかフランクが色鮮やかな陶器を作る事を相談に来るとは思ってもいないノームは普通にこんな返事をした。


「いえいえそんな事じゃありませんよ。一応、秘密にして頂きたい案件なので何処か落ち着いて話せる場所はありませんか?」


「なんでぇ偉く用心ぶけい話だな。そういうことならあっちの部屋で話そうか」


 工房の端に商談で使うような部屋があったので、そこで話をすることに。


「今からある物をお見せしますが、絶対に騒がないでくださいね」


 フランクはユウマから預かっている、色鮮やかな陶器の皿を数枚テーブルの上に出した。


「な! なんじゃそりゃ~~~」


 案の定ノームは大きな声で叫んでしまった、慌ててフランクはノームの口を手で塞ぎ黙らせた。


「騒がないでくださいと言ったじゃないですか、手をどかしますが決して騒がないでくださいね」


 うんうんと首を縦に振ってノームは返事をした。


 それを確認してからフランクはゆっくり手をノームの口から離した。


「おいおい、こりゃどうやって作ったんだ?」


「知りたいです? 知りたいですよね? でしたら一つ条件があります」


 そこからフランクはこの色鮮やかな陶器はフランクの店で独占的に販売する予定であること、当分は製作場所は魔境の森の入り口に拠点を作ってそこで製作する事、いずれはこちらの工房でも作って貰うことなどを説明、作るのに特殊な窯と他にも必要なので当分は拠点以外では作れないことも教えた。


「成程、そういうことなら職人を貸せと言うことで合ってるか?」


「正直に言えば引き抜きたいというのが本音です。将来的にはノームさんの所でも作って頂きますが、うちもそのまま作り続ける予定なので、技術を教える代わりに職人を下さいと言うお話ですね」


「現物があると言うことは職人はもういるんじゃないのか?」


「それはそうなんですが、その方はある事情で人とあまり関わりたくない人なんですよ。今回も無理を言って技術を教えていただいていまして、もし引き受けて頂けるとしても守秘義務の契約も結んで頂きます。どうします?」


 ノームは目をつぶって腕を組み5分ほど考えたすえ


「解った。その条件のもうじゃねぇか。しかし誰を行かせようかな?」


「でしたら、まだ駆け出しの人で構いませんよこちらで修業して頂きますから」


 それから二日後ノームから呼び出されて、駆け出しの職人を2人紹介された。





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