第44話 後ろ盾

 フランクの店に到着した錬金術師とグラン一家は商品の搬入を従業員に任せて

 森での研修の報告とグラン達の進捗など兎に角この先の事に必要なことを話すため、緊急会議を持つことに。


 いつものようにグランが進行役


「先ずは研修の報告から頼む」


 ここは店主であるフランクが報告


「錬金術で製作する物に関してはポーションとガラス器具以外は全て製作可能まで研修を終えました」


「と言うことは、ガラス工房が出来るまではユウマ君が作ってくれるということでいいのだな」


「はい、それはユウマも承知しています」


 そこで口をはさんだのがミランダ


「あれは私達では作れません。あんな方法でガラス器具を作るなんて、練習すれば作れるとユウマさんは言っていましたが当分は無理です」


 他の二人の錬金術師も首を縦に振り「うんうん」と頷いている。


 グランはガラス器具の作り方は実際に見ていないのでそれ以上は追及しなかった。


 続いてグランは


「石鹸などの商品なんだが販売に関してこの先大事に成ると思うからそれなりの対策が必要になると思う、皆はどう思う」


「それなんですがアナタ、森で研修してる時に私たちも同じことを考えて、三人で話し合ったんですよ」


「そうか流石はローレンだな」


 ローレンがそこからは森で決めた内容を報告、先ずは辺境伯夫人を引き込むのに、グラン一家の三夫人で商品を献上して引き込み工作をするという内容の説明をする。


 最終的には辺境伯本人を後ろ盾にすれば、この先のポーションや魔道具の販売まである程度は何とか成るんではと言う対策案。


「ん? 魔道具? なんだそれ?」


 グランとロイスが森に行ってる時はまだ明かりの魔道具しか見ていないし、未完成だとユウマが言っていたからそこまで気にしていなかったが、魔道具の販売とまでローレンが言及すれば当然ライトの魔道具が完成したと思ってしまった。


「ライトの魔道具は完成したのか?」


「ライトの魔道具は完成してませんよ、ただユウマさんの家にはライト以外の魔道具も色々あったんですよ」


 そこからはフランクがユウマの家に有った、水の魔道具、コンロの魔道具、風呂の魔道具などグランが知らない魔道具の説明をした。


 当然これらも魔法陣という庶民では知りえない知識が必要だと言うことで、まだ未完成ではあると言う所まで報告した。


「うん~~~ 魔法陣? それがあれば完成する? そういう事でいいんだな?」


「そうです、ただその魔法陣をどうやって調べるかです」


「ユウマの話では錬成陣があるのだから魔法陣も多分あるだろうと言っていました」


「そうか魔法に関しては庶民では調べようもないからな、そこはユウマ君の研究を待つしかないな」


 未完成でもあの魔道具の便利さを体験してるメンバーにとっては出来るだけ早く完成させて使わせてほしいと思っていた。


 この時まで俺は本当にバカだった。だって創造魔法があるんだよ、魔法陣魔法だって作れたんだよ。それに気づくのはもう少し後……


「石鹸関係は確かに辺境伯夫人を巻き込む方が今後やり易いな」


 グランが全員の賛同を得るように語りかけた。


 しかしそこでジーンから待ったが掛かった。


「母さんとフランソアは大丈夫だけど、シャーロットは拙いかも」


「何でですのお義兄様?」


「実はなシャーロットたちが森に行ってる間に、フランソアから手紙が来たんだ。例の医者が執拗にシャーロットの事や薬について店に問い合わせたり、訪問してるそうなんだ」


 それを言われるとシャーロットはフランソアに申し訳ないのと、どうしたらいいのか解らなくてその先の言葉が出てこなかった。


 未知の病名だから下手に医者に教えるわけにもいかない。特にあの医者には…

 もちろん薬も下手な薬師に教える事も出来ない。


 そこで発言したのがローズ


「何で困ってるんですか?」


 錬金術師の三人は当然シャーロットの病気や薬について何も知らない。

 そこでフランクから事の経緯を説明、これにもユウマが絡んでいて未知の病気の特効薬を作ってしまったことを教えた。


「成程、それで未知の病気と言うのはどういう物ですか?」


 詳しい説明はフランクでも出来ないが症状を説明することは出来たので、発病から完治までのあらましを説明した。


「それって王都ではやっていた病気と症状が似ていますね」


 これは朗報、王都ではやっているなら上手くすれば王都の薬師を通じて特効薬を広められるかも?


「ローズ、王都ではそんなに広まってるのか?」


「そんなに多い訳ではありませんが、知り合いの薬師が困っていました」


「その薬師は信用が出来る人か?」


「私の幼馴染のお父さんですし、子供の頃から知っていますから信用出来ますよ」


「それでは急ぎ手紙を出して連絡を取ってくれ、ついでに薬の見本も送るから一度試してもらおう」


「手紙の内容には特効薬だと言う事とこの件は内密に頼むと言う事を書いてくれ、もし病気が違っても効かないだけで問題ない薬だと言うことも忘れずにな」


 ローズは直ぐに了承、ユウマが絡んだ薬だから間違いないという確信があるのか、何の疑問も持たず、手紙を直ぐに書いた。


 それでも領都の医者の問題は解決してないのだ。さてどうするか?


 話し合いの末、最終的に今回はシャーロットは行かないことにした。


 今、医者なんかに構っている暇はない。取りあえず現状ラロックに居れば問題ないし、最悪ユウマの森の拠点に避難すればいいと言う結論になった。


 領都にはローレンとジーンが戻ることに、辺境伯夫人の引き込みが成功すれば、その後はローレンが領都の店に残り、ジーンとフランソアが子供たち全員連れてラロックに来ることで今回の会議は終了となった。


 その後は夕方ユウマが店に顔を出すまでは、料理が美味しかったとか、風呂が凄かったとか、一度もユウマの拠点に行ったことがないジーン以外は盛り上がり、一人蚊帳の外のジーンだった。かわいそう……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る