第43話 研修終了

 フランク達が拠点に来て7日目どうにか石鹸、シャンプー、リンス、化粧水、ハンドクリームの作り方は伝授できた。


 錬金術師が使う器具は当分は俺が作ることにして、森の入り口の拠点が出来てから職人や錬金術師に教えて行く。


 6日間のパワーレベリングのおかげで最終的に全員が4~5にレベルが上がった。


 こりゃ村に残ってるグランやジーンは嫁さんの方が強くなってるからこれから夫婦喧嘩何てしたら大変だ。


 殴り合いはしないだろうけど、ちょっとつねるだけでも相当痛いだろう。

 グランが鑑定しないと解らないだろうが、ステータス見たら何か言ってきそう。


 ジーンは何故か鑑定を持っていないんだよね。父親の近くにずっといたからフランクと違って鑑定スキルが発現していない。


「今日で研修は終了、明日村に行きます」


 夕食時に皆に伝えた。


「え~~ もうですか? 今日でこの美味しい食事、お風呂ともお別れですか」


 エマがそう言うと女性陣だけでなくフランクまで不満そうな顔する。


「村に残ってるグランさん達が心配するでしょ」


 この人達目的を忘れてるんじゃないだろうな?


 なによりシャーロットとフランクは子供を置いてきてる事忘れていない?


 これから大仕事が待ってる事、その為の研修だったんだよ?


 俺は森の入り口に拠点も作らなければいけないから、時間を見てせっせと木材やレンガを作っていたと言うのに、拠点の便利さが染みついてしまったのかな?


 解りますよ、この拠点は本当に便利だし、居心地いいもんね。


 だがしかし言わせてもらおう、俺は出来るだけ一人でいたいのだ。


「時々は此処に来てもいいですから、暫くは新しく出来る拠点で頑張ってください」


「それにフランクとシャーロットはキース君が待ってるよ」


 此処まで言ったらやっと全員これからの事を考えたのか、食事を静かに済まして

 明日の森の移動に備えて早めに就寝した。


 翌朝荷物は全て俺の偽装アイテムボックスに入れて、移動開始。


 全員が来る時よりレベルが上がってるから、移動速度も速いし、魔物に対する恐怖心も薄れているのか、避けて通れない魔物は俺に眠らせて全員で攻撃する余裕すらある。


 帰りまでパワーレベリングしなくてもいいんだけど……


 移動速度が早かったのに、結局森の入り口についたのは来る時と同じ1日半掛かってしまった、とほほ……


 森の入り口で少し待っていると、いつものように馬車が三台、いつもの顔ぶれでやって来た。


「お帰り、みんな無事でよかった」


 グランがそう言うと、全員何とも言えないような顔で


「ただいま、全員無事ですよ」


 なんというか微妙な再会? グラン達は嬉しそうにしてるのに、フランクや女性陣は不満が顔に出てるというか、半笑いというか、感動が全くない。


 これではまずいと思い、俺は兎に角通常の取引を済ませるためにアイテムボックスから荷物と商品を出していく。


「ユウマさん、あちらに必要な木材と粘土を用意してますから何時からでも拠点作りは出来ますよ」


 ロイスはいつものようにマイペース、本当に助かるわ、こういう時は。


「解りました、俺も必要になるであろう木材とレンガは持ってきましたから、この後早速拠点作りに掛かりますね」


「場所はあのあたりで問題ないんですね?」


「えぇ森から少し離れていて、木材の搬出に問題ない所でしたら大丈夫です」


「問題は水をどうするかなんですよね」


「あ! そうですね、川からは離れていますし、井戸もないですからね」


 拠点を作ると言っていた時から俺はそれが気になっていた。これから色んなものをここで作るのに、水は必要不可欠。


 一応、解決策は考えてはいるんだが、今すぐと言う訳にも行かないし、言えない。

 最悪魔道具で解決できるから今はいいか。


「とりあえず、拠点は此処にしか作れないのですから、先ずは作ってから考えましょう」


「忘れていた自分が言うのも何ですが大丈夫ですか?」


 ロイスは魔道具見てないもんな、しょうがないここは強引にでも納得してもらおう。


「大丈夫、まかせて」


「ユウマさんが言うなら大丈夫なんでしょうね」


 何とか納得させて、先ずは拠点の範囲を決めていく。


 俺の拠点より少し広いぐらいでいいよな、あまり大きくすると目立ちすぎるからな。


 農地でもないところだから、自由にしても領主からお咎めは無いそうだけど、大きすぎると変に勘繰られても困る。


 この時は知らなかったが、後に領主に後ろ盾になって貰う工作をグラン一家は考えていたからそこまで気にする必要はなかったんだって。


 取りあえず此処からは一人で作業するから、他の皆は今後の事の相談や商品の搬入をして貰う為一度村に向かってもらった。


「それじゃ、夕方には一度村に顔を出すから後でね」


 正直目の前で異常な魔法は使いたくないと言うのが本音だけど、違和感なく

 誘導できたと思う。


 姿が見えなくなるまでは囲いの位置決めの線を引いたり、粘土の確認なんかをした。


 もう大丈夫だと思ってからは一気に土魔法で囲いの木材を立てる為の穴を掘り、

 掘っては立て掘っては立ての繰り返しでほんの二時間ほどで囲いが完成。


 今度は囲いから少し離れた所に深さ2mほどの空堀を掘って行く。


 掘った土はそのまま囲いの前に積んでいき囲いの補強にする。


 この世界の建築様式をそのまま再現。この世界に空堀はないけどね。


 門を作る所だけは掘らないでそのままにしておく。


 跳ね橋何て必要ないだろうし、最終的には囲いの内側はレンガで補強するから

 門さえ守ればそう簡単に侵入できないようにする。


 囲いの内側は中世のお城と同じで総レンガだから火にはめっぽう強い一種の要塞。


 レンガの製作が始まっても最初は練習も沢山しないといけないだろうから、販売の前に製作したもので囲いの補強をして最悪俺が強化魔法を付与すれば、不出来な物でもそれなりの強度にはなるだろう。


 これもこれからこの世界にセメントもどきを普及させる練習にもなるから一石二鳥。


 これが後に世界初の左官職人、左官スキルの誕生の第一歩







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