第42話 一方その頃

 錬金術師が魔境の森で石鹸などの作り方を覚えている時、フランクと女性陣は

 燻製やベーコンの作り方を覚えると共に拠点にある、ガラス食器や色鮮やかな陶器、照明の魔道具を筆頭に水の出る魔道具、コンロの魔道具などを商売に出来ないかを三人で相談していた。


「母さんどう思います? ガラス食器や色鮮やかな陶器はこの先販売されるでしょうが、魔道具は難しいでしょうか?」


「そうね、魔道具はユウマさんも言ってたけど、魔石に魔法を入れたものだと言っていたから出来ないことはないとは思うけど、まだ完成品でもないとも言っていたのよね」


「そうですよお義母様、私たち平民は魔法の知識が殆どありませんから良く解りませんが、ユウマさんが言うには錬金術で使う錬成陣があるなら、魔法陣もあるはずだから、魔法陣を調べてもっと多くの人が作れるようにしたいと言っていました」


「そうなのよね、ユウマさんしか作れないでは限度がありますものね」


「そうですよ、燻製やベーコンでさえ今の現状ですよ。魔法や魔力を使うものだと今の俺達では作れませんし、錬金術師は作れるかもしれませんが作るものが多すぎて魔道具までは無理でしょう」


「ポーションでさえこの先とんでもない事に成りそうなのに、魔道具まで世の中に出すと、ユウマが一番気にしてる、貴族や王家が黙っていませんよ」


「そうよねポーションは錬金術師、商業ギルド、冒険者ギルド、教会、貴族、王家、全てに影響や反響があるからね」


 この世界には特許制度がない。元々新しいものを作ったり、改良しようと言う人が多くいないのだ。だから新しい物や改良が出来たら作り方は秘匿した方が独占できるので余計に進歩しない。


 ダンジョンから出る物はオーパーツのように考えてしまい、似たものを作ろうともしないから研究すらしないのも同じ結果を生んでいる。


「石鹸、シャンプー、リンス、化粧水、ハンドクリームだけでも確実に貴族や王家は出てきそうね、私のように年をとっていてもこれらの商品は是が非でも欲しい商品ですからね。そう思うでしょシャーロット?」


「はい、間違いなくそうなると思います、お義母様」


「そうなると本格的に売り出す前にその対策を考えておかないといけませんね」


 フランクは男だからそこまで考えていなかったが、母や妻、錬金術師三人の女性の今回の行動や今の会話から真剣に対策を考えと大事に成ると今更ながら決意するのだった。


 勿論、この先ポーションや魔道具の事を考えると同じ対策が必要になるのは目に見えているから……


「やはりどこかの貴族に後ろ盾になってもらいますか?」


「そうね私は隠居してますけど、辺境伯夫人とは昔から懇意にはして貰っていますから今度商品を持ってご挨拶に行きましょうか、辺境伯も夫人も貴族にしては良民思いの良い領主ですから、悪いようにはしないでしょ」


「お義母様その折には是非私もご一緒しますわ、出来ればお義姉様もこの先の顔つなぎも兼ねて三人でお伺いしましょう」


 そうだな先ずはご婦人からこちら側に引き込んで、この先のポーションや魔道具の交渉に助力して貰う方がやり易いとフランクは思った。


 三人がこんな会議をしている頃、ラロックに残っているグラン、ジーン、ロイスの三人はそれぞれが担当する燻製とレンガの製作の為の準備に追われていた。


「父さん燻製の方はこれで大体準備はOKだね」


「そうだなユウマ君の作る上物の燻製は別にして、作り方は覚えてもらったから後は経験で品質の良いものが出来るだろう」


「ロイス、粘土の方はどうだ?」


「はい、ご隠居様、粘土の取れるところは何か所か見つけたました。後はユウマさんがこちらに来られて森の入り口に拠点を作って頂いてから本格的に始動となります。現在は種類別に粘土を森の入り口に運んでいるところです」


「そうか、それなら材木商に、ある程度の木材も発注しないといけないな」


「父さん、ユウマ君の話だと、あまり多くは必要ないと言う事だったですね」


「殆どは魔境の森の奥から持ってくると言っていたな。それにロイスは見てるから解っていると思うが、ユウマ君の拠点の建物は外壁はレンガで出来ているから、今回の拠点でもレンガを多く使うんだろうな」


 ユウマの構想としては村と同じように木材と土で外壁を作り、その内側の建物は殆どレンガで作り、部分的に木材を使う予定。


 耐火煉瓦は自分で作った物を持ってきて、最初の窯だけはユウマが作ってそれで作ったレンガや耐火煉瓦で他の窯を作り建物も増やし拠点を充実する。


「燻製はいずれ製法は洩れるだろうが、当分は家が独占的に仕入れる約束はしてるし、ユウマ君の肉の燻製の上物は家しか仕入れられないから問題ないだろう」


「そうですね、正直この先石鹸、シャンプー、化粧水、ポーション……なんかを販売するようになったら、燻製なんてやってる暇はありませんよ。世の中がひっくり返りますから」


「その世の中がひっくり返ると言う所に対策が必要なの事実だがな」


 流石は一代でここまで店を大きくしたグランである。森の拠点で三人が話していた対策が必要だと言うことに気づいている。


「フランク達が戻り次第対策を協議しよう、ジーン、ロイスも考えておくように」

「はい!」


 一方、領都ゾイドに一人残っているジーンの妻フランソアは困り果てていた。

 原因はそうあの医者、自分が見放したシャーロットが回復し元気になっているのを目撃して、再三問い合わせに店を訪問していたからだ。


 シャーロットの不在を伝えても一向に諦めないし、今度はどうやって治ったのかと聞いてくる。


 フランソアも薬の材料がどんなものかは知っていたが、どう考えても毒草(茸)や雑草が材料だと言っても納得しないだろうし、教えてもし変な薬を作られたら大変なことになるから何も言えない。


 シャーロットが不在だと言えば本来はフランクの所にいると普通思いそうなんだがそれすら考えが及ばないのか?


 ただ楽をしようとしてるのか? 全く分からない……


「あなた早く帰ってきて」


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