第47話 辺境伯夫人
ローレンは領都に戻って直ぐに行動を開始、辺境伯夫人に面会の申し込みをするために、手紙をしたため従業員に持って行かせた。
手紙の内容にはとても珍しいものが手に入ったので是非献上したいと言う内容を書いた。
勿論、夫人が興味を引くように、美容に良いものだと言うことも忘れずに。
申し込みの翌日、異例ともいわれる速さで明日の面会が許された。
通常面会の申し込みをしても1週間は待たされる。当然辺境伯夫人ともなれば面会の申し込みは後を絶たないので、通常なら1週間は必ずと言っていいほど待つのが当たり前。
それがわずか2日、これは手ごたえがあるとまだ面会もしていないのに、ローレンとフランソアは思った。
面会当日、時間より少し早く辺境伯領主邸に馬車で到着、門番に面会の旨を伝えると問題なく玄関に案内される。
二人が馬車を降りるとそこには夫人の専属侍女が待ち構えていた。
ローレンは何度か夫人には会ったことがあったので、彼女が専属侍女だと言うことは知っていた。
年の頃はローレンより少し上ぐらいだろうか?
辺境伯夫人はまだ若くフランソアと同じぐらいの年齢。
先代から若くして領主を譲られたので辺境伯自体もまだ30代半ばだ。
「お待ちしておりました。夫人が応接室でお待ちです」
え~~~なんで、普通貴族の面会って、面会者が先に部屋に通されて、後から貴族が部屋に来ると言うのが通常のはず……
「それは申し訳ありません、遅かったでしょうか?」
「いえいえ今回はローレン様よりのお手紙に非常に興味を持たれた夫人が待ち切れ無かったと言うことです。お気になさらず」
良かった~~もしかして時間を間違えたのかと思いびくびくしていた。
「さようですか、それではこれ以上お待たせしてはいけませんので急ぎましょう」
部屋の前で侍女がノックをし返事を待ってから入室、ここからが正念場、夫人を必ず引き込んで後ろ盾になって貰いましょう。
ローレンとフランソアは気合を入れていざ戦いへ……
「辺境伯夫人ご無沙汰しております。グラン商会のグランが妻のローレンです。この度は面会の申し込みここ良く受けて頂き感謝申し上げます」
「まぁまぁローレン久しぶりね。グランが引退してから会っていないから何年振りかしら? そんな貴女からの面白そうな手紙にワクワクしてますのよ私」
「かれこれ3年程でしょうか、私の様な者を憶えていて頂き感謝いたします」
「もう、ローレンたら久しぶりだからと言ってそんな他人行儀にしないで、私寂しいですわよ、貴女とは先代の時からの付き合いじゃない」
「有難きお言葉、それでは以前のようにさせていただきますローレライ様」
「早々それよ名前が似てるから、貴女にはそういう距離感でいてもらいたいわ」
これは先代当主夫人から言われたことですが、名前が似てるから親子のようですねという言葉から来る距離感。
久しぶりだったので少し心配していましたが、これはとても良い感触フランソアを紹介してから一気に行きましょう。
「ローレライ様、こちらにいるのは現グラン商会店主のジーンが妻のフランソアです。お見知りおきを」
「そうなの、フランソアもよろしくね。ローレライよ」
「お初にお目にかかりますフランソアと申します、義母様同様お引き立て下さいますようよろしくお願い申し上げます」
「はい、宜しくね。貴女もあまりかしこまらくていいから、私そういうの疲れるの」
良かったこれから後ろ盾になって貰う人がこれぐらい気さくな人で、そうじゃないと毎回緊張して大変だったと思うフランソア。
「ローレン挨拶はこの辺でいいでしょ、手紙に書いてあった美容にいい珍しいものを早く紹介して」
本当に待ち切れ無いのであろう、ローレライ様のワクワクしてる様は本当に可愛らしい。
「では、ご紹介させて頂きます、フランソア例の物を此処に」
今回持参したのは、石鹸、シャンプー、リンス、化粧水、ハンドクリームの五点
商品を並べ終わったら、石鹸から順番に説明していく。
説明を聞きながらローレライ様の表情がどんどん変わって行く、石鹸、シャンプーやリンスの話に移って行くと視線が私やフランソアの髪にちょくちょく行く。
化粧水やハンドクリームに行けばこれも顔や手に視線が行く。
全部の商品の説明が終わる頃にはローレライ様のみならず、傍で聞いていた専属侍女のロッテや端に控えている他の侍女たちも目がらんらんとしていた。
「ローレン失礼だけど、ちょっと髪を触らせて頂いていいかしら?」
「はい勿論です。不躾で無ければ髪の臭いも嗅いでみてください」
ロッテが一瞬嫌な顔をしたが、そこはローレライ気にすることも無く、髪に触り臭いも嗅いでみた。
「なんなのこれ! 髪はサラサラで臭いまでいい香り」
まぁ当然の反応なんですよね、自分達も同じだったから、ローレライは直ぐにロッテにも同じことをさせて感想を言わせた。
「奥様これは素晴らしいものですね、髪に油も付けていないようです」
「そうなのよ、今までは髪の油分が抜けてぱさぱさだったから、油は絶対必要だったのに、この二人の髪はサラサラしていて、櫛通りもよさそう」
ここまでの掴みはOK、本命の化粧水の容器、ガラスに夫人が気づくかどうか?
「ちょっと待って、この化粧水というものが入ってる容器はなに?」
「色は付いてるけど、陶器ではないようね、これはなんなの?」
流石は辺境伯夫人、ちゃんと見ていてくれました。
「これはガラスというものです」
「ガラス? 聞いたことも無いものね」
「この化粧水は陶器では品質が保てないので新しく作った陶器に代わるものです」
「そんな凄いものなのね」
夫人もこれ以上は考え付かないようなので、此処は辺境伯様へのアピールの前哨戦として他にどんなものに使えるのか説明しておこう。
「このガラスですが、このように容器としても使えますが、お屋敷の窓にも使えますし、食器にも使えます」
そこで追加で透明なお皿と色のついたグラスを出す。
「まぁ綺麗ね、透明な物を見るとガラスを窓に使えるのが理解出来るわ」
本当に聡明なお方だ。
その後はローレン達と同様早速使ってみたいと言うことで、侍女たちに準備をさせ髪を洗いシャンプーとリンスの使い心地を、石鹸で顔を洗って、化粧水をつけてもちもち感を堪能、ハンドクリームは侍女のロッテに使わせた。
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