第48話 後ろ盾決定

 髪がサラサラになったローレライはそれはもう飛び切りの笑顔でローレンにこれらの商品はこれからも購入できるのかと聞いて来た。


「勿論です。購入せずともローレライ様には毎回献上いたします。」


「流石にそれは申し訳ないわ。これ程の物を毎回献上させるなんて」


 良し此処まで来たら一気に後ろ盾の話まで持って行きましょう。


「ローレライ様今回お持ちした商品は殆どが女性向きの商品ですが、我が商会ではこの他にもこの世にまだ存在しない新しい商品があります。それらは正直、多くの現存する職人、ギルド、教会、貴族の方々に影響が出る物ばかりなのです。ですから是非辺境伯様に後ろ盾になって頂きたいのです」


「そうね他の商品がどんなものか解らないけど、このガラス一つとっても新しいものだし、この女性向きの商品だけでも貴族や大商会は黙っていないでしょうね」


「そう言えば貴女の所から売り出された物だったかしら、ベーコンは?」


 辺境伯のお屋敷にまでベーコンは広まっているの?


「はい、さようでございます。他にも川魚や肉の燻製品なども販売しております」


「そうなのね、主人が酒のつまみに丁度良いと言って最近喜んでるのよ」


 これは良い情報だ、出来たら辺境伯様も引き込みたいな。


 そんな事を思ってると、なんと噂の辺境伯様が応接室にご登場、「何という事でしょう」このナレーションは違うか……ローレンも知らないしね。


「何やらそわそわしてるローレライが気になっていたんだが、その理由がローレンだったか」


「これはご領主様ご無沙汰しております」


「良い良い畏まるな、グランとは酒を酌み交わしたこともある中だ、ローレンも気楽にすると良い、グランは息才か?」


「はい、ご領主様、グランは引退はしましたが、現在とんでもない案件で引退を撤回しそうな勢いです」


 実際グランは現役の時以上に飛び回っている。


「ほう、それは興味深い。差し支えなければ是非聞きたいものだ」


「貴方、丁度良い所に来られましたね。今ローレンより素晴らしい物を献上して頂いたの、是非貴方もご覧になって」


 そこからはローレンが説明することも無く、ローレライが全部説明してしまい、ガラスの説明までしてしまった。


「このガラスというものは素晴らしいな、透明な物や色付きで用途も色々ありそうだ。このグラスで酒を飲んだら美味そうだのう」


 これは好機、このまま畳み掛けましょう。


「ご領主様、先ほどグランについてご報告致しましたが、こちらにお持ちした商品以外にもこの世の中がひっくり返るような物を現在色々と試作中です、中でもこれはご内密にお願いしたいのですが、家の次男の嫁のシャーロットの事はご存知でしょうか?」


「うむ、風のうわさで聞き及んでおるぞ、不治の病で臥せっていると」


 曲がりなりにもグラン商会は領都では大きい商会だし、辺境伯家とも先代からの付き合いだから知っていても不思議ではない。


「さようですか、ではそのシャーロットが完治したことはご存知ですか?」


「なんと! 完治しただと、領都の医者も匙を投げたと聞いていたが」


「誠に存じます、その不治の病に効く特効薬が作られシャーロットは回復いたしました」


「なんとそれは凄い事だのう、して誰が作ったのだ?」


 当然そう聞いてきますよね、でもこれだけは言えないユウマさんの事だけは


「実は流浪の薬師様に作って頂いたんです。その方は世界を放浪しながら色々な病気や薬の研究をされているそうで、たまたまラロックを訪れたさい、フランクと懇意になり、妻の病気について相談したところ、薬を作ってくれたそうです」


 流石商人の妻ローレンの作り話は凄い。


「流浪の薬師とな、してその薬剤の作り方は教えてもらったのか?」


「はい、ですがその材料にちょっと問題がありまして」


 流石に言いにくいよね雑草や毒茸なんて


「ですが、我が商会に所属してる錬金術師から有用な情報がありまして、現在王都でこの病に似た病気が広がりつつあると言うことを知りまして、王都の薬師を通じて薬の検証をお願いしてる所です」


「もし違う病気の時は大丈夫なのか?」


「それは大丈夫でございます。その病以外では効果や副作用も一切ないと聞いておりますし、我が商会でも試しに健康な者に飲ませて確認を取っております」


 ここまでは何とか誤魔化せたから、ここからが勝負


「薬を送って暫くたちますから、そろそろ何らかの返事が来ると思います」


「そこで先ほど申しましたことなんですが、この薬師様は錬金術にも精通されている方で、色々と教えを乞うたのですが内容がとんでもない事ばかりで、軽はずみに世の中に出す事が出来ない物ばかりでして、ですから是非ご領主様に今後我が商会の後ろ盾になって頂きたいのです」


「しかしの~ 領主たるものが一つの商会をひいきし過ぎるのも問題なんだ」


 此処は最後の一手


「ローレライ様、このシャンプーやリンス、化粧水などの作り方を教えて下さったのはその薬師様なのです、他にもこれから作られるものもございます」


「何ですって他にも……貴方様何をグチグチおっしゃっていますの、これは大変良い相談ではございませんか、是非後ろ盾になって差し上げて下さいまし」


 領主のビクター様の愛妻家は有名ですから、これで決まりでしょう。


「そうだな、我々が損をすることもないし、それどころか領が潤う話のようだからな、良かろう、後ろ盾になってやろう」


 決まったこれで大体の所からの圧力なんかには対抗できる。


 その後は現在作っている物を近いうちに献上すると言う約束をして面会は終了した。


 その頃、領都の例の医者スベンはある家の一室で会合を開いていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る