第106話 未来への一歩

 薬師の受け入れ準備でまたもや、社畜のように働いたが、これ社畜でも何でもないよね。社畜でも給料は出るから……


 教育方針などは決まったから、それに必要な物を兎に角準備することで受け入れまでの時間全てを費やした。


 まだまだ実際に受け入れて見ないと不足してる物があるかも知れないが、そこもこれからの課題になるから今回はこの状態で受け入れる。


 王都からの薬師の到着を拠点で待っていると、何と馬車10台以上の車列が向かって来ていた。

 今回はそれに騎士の護衛もついて来ているので人数的には相当な人数に成る。


 拠点に到着した一行を休憩させてあげたいが、患者がいるので患者優先で症状別に馬車がトンネルを使えないから担架で病院に運んでもらった。

 今回は症状を聞くふりをしながら、俺の鑑定で病状を把握しながら、病棟を俺が決めて運んでもらった。


 鑑定の結果緊急を要する人は居なかったので、取りあえず入院して貰って、落ち着く明日から治療に掛かる。


 今回此処に来た薬師は王宮薬師3人、王都の薬師10人 患者32人、護衛騎士は10人だった。

 事前に王都から病名が解らない患者や薬師が病名は解っているが手の施しようがないと判断した患者、残りは怪我の酷い人を送ったと連絡が来ていた。


 これはこちらからの要望でもあった。普通に治せる患者では医者の育成には物足りない。

 それに改良ポーションの臨床にも必要なので重症患者が必要だった。


 護衛騎士はもう何度か此処に来たことがある人達だったが、流石にトンネルや病院の規模には度肝を抜かれていた。

 薬師たちは当然の如く、放心状態から戻ってくるまでにかなりの時間が掛かった。


 旅の疲れはあるだろうが、挨拶や明日からの予定を話してからゆっくりして貰うことにした。


「初めまして、病院を任されているユウマと申します、若輩者ですがよろしくお願い致します」


 俺が挨拶してもきょとんとしてる薬師たち。なんだこいつという目で見ていますね。


「私は王都で薬師をしている、ニックと申します。現在は此処の学校で薬師の教師とユウマさんより医者に成るための医学について学んでおります」


 ニックが薬師たちの反応を見て助け舟を出してくれた。

 王都の薬師で顔を知っている者もいるし、結核の薬でニックの名前は王宮にも知られている。ニックが俺から学んでいると言う事を言えば少しは心象が変わるだろうと言う事。


「私はグラン商会のフランクと申します。一つ付け加えておきますが、ユウマは結核の薬を私どもに教えて下さった。流浪の薬師様に一時期師事しておりましたから、知識に問題ありませんので明日から驚くことも多いでしょうが頑張って下さい」


 フランクまで事前の打ち合わせ通り、薬師の弟子という設定で俺の援護をしてくれた。


「明日から本格的に医者という資格を持つための研修に入りますが、一つだけ守って頂きたいことがあります。質問は問題ありませんが反論はしないでください。明日から経験することは未知のものです。今までの常識は通用しません。ですが必ず患者は救いますので安心して任せて下さい」


 必ずと普通なら言わないだろうが、鑑定を済ましている俺には確信があった。全員完治できると、だから敢えて必ずと断言した。


 これ以上何を言っても口だけでは信用出来ないだろうから、今は明日の予定だけを告知して、宿泊場所に案内して解散、後は温泉銭湯などで寛いでもらうことにした。


「おい、あのユウマという青年、本当に優秀なんだろうか?」


「そうだな、かなり若いようだが、結核の薬をもたらした薬師の弟子だといっていたから、全く駄目だということはないだろう」


「確かに、それに国がこれ程動いている案件だし、グラン商会が認めているからな」


 温泉銭湯からもどり、初めて食べる食事や酒に翻弄されたからか到着した当初よりは、薬師達のユウマに対する印象が変わって来ていた。


「皆さんおはようございます。食事が済みましたら早速治療に掛かりたいと思います」


 研修のやり方は色々考えたが、やっぱり薬師達に医者とはどんなものなのか、それを解らせないと始まらないと思い、先ずは緊急性の高い患者から治療してみせて、その本領を分かって貰う。


 まず最初に選んだ患者は、多分この世界ではまだ認識されていないガンがかなり進行している患者。


 内臓の病気でもこの世界では軽いものなら薬やポーションで治るのだが、ガンという病気は自覚症状が出た時には手遅れというものがあるから治せない。

 だからこの患者は上級ポーションやどんな薬でも治せなかった。


 丁度良いと言ったら不謹慎だが、しょっぱなから全員の度肝を抜く、受け入れ前に外科手術もありだと認識してから、急きょ手術室と麻酔薬、手術道具を用意していたので、この患者には臨床第一号に成って貰う。


 本当にここまで文明を進めても良いのだろうかとも思ったが、人の命に関する事だけは躊躇しないと俺は決めた。


 全員を救えないのも事実ですが、目の前に救える命がある、その方法も知っている、それなのにそれをしなかったら俺は一生後悔すると思うんだよね。


 まして医者を育てるのにも時間が掛かるし、未知の病気も出てくるかもしれないから、早すぎると言う事は無いと思うから……


 麻酔薬は簡単に作れました。ただこの世界には注射器も無いので吸引タイプの麻酔薬にする必要があったので、ちょっと大変だった。


 闇魔法のスリープは使いませんよ、これまでパワーレベリングの時に結構使ってるから今更なんだが、王都の関係者には絶対見られたくないから使わない。


 手術室に薬師13人全員を入れる訳にもいきませんので、今回は半分の7人だけに手術を見せる。


 残りの薬師は一段高い所にガラス張りの部屋を作っているから、そこから見学してもらう。


 TVの医療物で良くあったでしょ、私失敗しないのでのあれですよ。











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