第284話 魔力濃度測定器
ワイバーンを活かすと決めたら、此処にはもう用はない。下手にこれ以上近づいて刺激したらいやがおうにも倒さなければいかなくなるので、直ぐに方向転換してその場を離れた。
「ユウマさんさっき話していた魔力スポットの話と高度で魔力の濃度が違うというのは何となく分かったんですが、それを計ることは出来るんですか?」
「それはですね、今の所感覚と推測だけです」
「感覚というのは魔力感知の事ですよね。では推測と言うのは?」
「それはもう少し詳しく話さないと理解できないと思います。そもそも魔力が濃いとはどういうことからね。正確には魔力が濃いのではなく魔素が濃いなんですよ」
「魔素? 初めて聞く言葉ですね」
この際だからサラには知っていて欲しい事だから教えておこうと思う。寿命の変化にも関係するからね。
「俺達が吸っている空気の中には魔素という物があります。人間も魔物もその魔素を吸って体の中で魔力に変えているんです。人間はそれを魔法と生きる為に使い、魔物はそれを生きる為や強さの為の使っている。それを貯めているのが魔石です。人間は違いますけどね」
「魔素とは空気の中にあるんですね」
「その空気は温度や気圧の影響で下降上昇します。上昇すると空気は薄くなる。二酸化炭素、酸素は高くまで行けないのです。空気中の成分の重さは空気を1としたら比重は 二酸化炭素>酸素>空気>窒素>魔素の順番です」
「だから高度があがると魔素ばかりに成るから濃くなるんですね」
「それともう一つが魔力スポットによる魔素の濃さです。正確には魔力スポットではなく魔素スポットです。魔素を吹き出してそこで空気と混ざるからその周辺は魔素が濃くなるのか、魔素を多く含んだ空気を出しているというのが俺の推測です」
「言われてみるとその推測は合っているように思いますね。現状の理屈に合っています」
あくまで地球の法則に当て嵌めたらという事だけどね。
「それでさっきの濃さを計れるか? の答えですが、出来ると思いますよ。実際にやってみないと分かりませんが」
今までやったことないけど、空の魔石に魔法を付与すれば出来ると思うんだよね。魔石は魔力=魔素を吸収するんだから、魔法も吸収するはず。魔力はあくまで燃料、魔法の為のエネルギーだから、エネルギーが無くても魔法は付与できる筈。魔法を付与した魔石に魔力が追加できるんだから、同じことだと思う。
さてどういう魔法を付与しようか? 一つは周囲の魔素を吸収してその濃さで色が変わる魔法。もう一つは周囲の魔素の濃さを感知して色が変わる魔法。最初の魔法は起動時に魔力がいるし、吸収しながらそれを魔法のエネルギにも使うから、タイムラグが出るな。それに満タンに成ったらそれ以上計れない。あれ? 二つ目の魔法なら、空の魔石の必要ないよな。その代わり計ってる間は魔力を消費するから、空に成る前に補充する必要はある。
ただ二つ目の魔法は色の変化をどうするかだな? 何処かを基準にしてそれよりどのくらい濃いかで色の変化を決めないと計れないな。まぁどちらの方法でも基準はいるという事だけどね。
ん~~~、これどちらも中途半端な気がしてきた。それならいっそのこと、魔素に反応する物質を探した方が早いかな? 前世で読んだ漫画にあったように、魔力によって膨張する金属とか……。
膨張はしないけど魔力に反応する物ならあるな。ミスリルとスライム素材……。単体では無理でも、この二つを合成したらどうだろう? スライムのレベルって1,2,3,とあるもんな。もしかしたらこれ基準に使えそうな気がするな。
まぁ兎に角最初に思いついた、ミスリルとスライム素材を合成してみてからだ。
合成するにも配合の分量は変えた方が良いよな? どちらを基準にするか? 取りあえずは両方試すしかないか。
ミスリル1,2,3グラムに対してスライム素材(レベル1)も1,2,3グラムこの組み合わせは9通りあるから全部やってみよう。合成自体は錬成陣ですれば良いだけだから簡単だ。それで出来た物に正確にステータスを見ながら俺も魔力を1,2,3と入れて行った時の反応を見れば良いか?
嫌、それじゃ駄目だ。反応を見るのは良いが、実際に測定するのとは違うから駄目だな。やはりそうなると、レベルの違うスライムが生息してる所の反応をみて比べるしかないな。
ん? これだけでもやはり不安だな~~~。
それならこの9通りの合成物にレベル1の魔物の魔石を合成してみるか? スライムには魔石が無いからホーンラビットかな? 嫌、それなら核でも良いな……。
わぁぁ~~ 9通り、次は27通りが二つ、全部で63通りも出来ちゃったよ。数は減って行くだろうけど、それを全部持って、最低でも、レベルの違うスライムがいる所を3か所も回らないといけない……。マジか~~。
それに同じ規格のガラスの試験官も作らければ行けなかったから、結局テストの準備だけで一日、テストに半日、試作品を作るのに半日掛かって、漸く魔力濃度測定器、試作品第一号は出来上がった。
見た目は前世の温度計その物。試作品も一種類ではなく小型の物から大型の物まで三種作った。レベル1~5の魔物が生息しているところまで計れるもの。1~20、1~40と三種類。本当は1~60の物も作ろうとしたが大き過ぎるので今回は諦めた。
後はこれが実際に魔物のレベルと整合するかだけど、完全に一致することはないと思う。だって魔力濃度が奇麗に境界線のように分かれているわけがないからね。それに魔物だって好む濃度に範囲はあるはずだから、誤差は出る。
それでも目安にはなる筈だから、十分だろう。
「サラごめんね。俺がずっと濃度計を作っていたから殆ど操縦させて」
「大丈夫ですよ。停泊中はゆっくりしていましたから。でも夜一人で寝るのは寂しかったですよ」
おうふ! 新婚の嫁にそれを言わせるとはなんという情けない男。この旅行は冒険旅行でもあるけど一番は二人だけの新婚旅行なんだから、夜の方はしっかりしないとね。
「それはごめん。以後気を付けます」
「それでその濃度計は出来たんですか?」
「うん、一応出来たけど目安に出来る位かな? 後は実際そのレベルの魔物がいる所で試してみないと、どのくらい誤差があるかは分からないね」
しかし、実際魔物のレベルが40なんていうのに出くわして、俺が勝てるかということの方が問題なんだけどね。人間のレベルと魔物レベルが強さの面で同じなのか分からない。推測では強力な魔法や特別な武器が無いと同じレベルでは人間の方が弱いと思う。特にレベルが上がれば上がるほどね。
だから勝てるかどうかを決めるのは魔法や武器の強さという事になる。まぁ人数というのもあるけど、それは通常の武器が通じる相手迄だし、単体という条件が付く。
今の所俺のレーザー系の魔法なら負けることはないとは思うけど、レーザーをはじくほどの外皮を持っている魔物がいたらその時点で俺に勝ち目は殆どない。もしあるとするなら、目や口の中を攻撃出来たらぐらいかな……?
それにこの世界は現実でゲームではないのだから、死んだらそれまで、やり直しは出来ないのだから、絶対に過信してはいけない。
「ところでユウマさん、この旅行の目的地は何処なんです?」
「それなんですが、初めは魔境の森を冒険しながらこの大陸を一周しようと思っていたんですが、いきなりあのワイバーンなんていうのに出くわしたから、あまり無茶は出来ないなと思っているんですよ。それで今この先どうするか考えているのは別の大陸や島を探しても良いかなと思っています」
「別の大陸ですか?」
「そう、この星にこの大陸だけというのは無いと思うので、他の大陸を探すのもおもしろいかと、ただそれだと日数的に厳しいかなとも思っているんですよ」
サラには星や宇宙という概念? は教えてありますが、他に大陸が二つあることは教えていません。
「予定は三週間ですもんね」
「この先どこにも寄らなければ残りの日数で、大陸を一周するのは余裕で出来ると思うんですが、ちょっと予測が甘かったですね」
「それなら魔境の森の範囲だけでも確認したらどうです?」
魔境の森の範囲はこの大陸の三分の二を占めていることは分かっている。でもこれは誰にも言っていないというか言えないんだけどね。どうやって知ったと追及されるのが目に見えているから。
さて本当にこの先どうしよう……?
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