第322話 島 命名
ロベルト達に大体の話が終わったので、先ずは戸籍作りと俺が王になることを広める仕事をやって貰う事にして、その後の事はそれが終わってからもう一度話そうとその場は終了した。
「国を作るって本当に大変だね。サラはグーテルの建国の歴史を勉強した事があるの?」
「ありますよ。ただ物凄く建国の話は美談にされていますね」
「何で美談にされてるって分かるの?」
前世の建国の話ってどこの国でも神話から始まっているところが多いから、美談というより神が創ったという話だったよな。この世界の建国話は美談から始まるの?
「だってエスペランス王国とグーテル王国は元は一つの国だったんですよ。それを神のお告げで分割したなんて建国の歴史の本には書いてあるんですから、美談にしていますよ。普通一つの国が分かれるって喧嘩別れしかないじゃないですか」
絶対とは言えないけど、確かに国が分かれる時って意見の相違や継承争いの結果と言う方が一番筋が通るよな。神の存在は信じていても見たことも無いんだから、お告げなんて信じないよね。
まぁ神聖国の建国話もどちらかと言えば美談にしているか……。
「そういうもんかも知れないね。でもこの国はちゃんと成り立ちから記録に残せるから、美談には出来ないね。いや、俺達が残さなかったら、今のユートピアの住民の子孫が作り変えるかも?」
「あなたを崇拝していますから、あり得ますね」
「そうなる原因は記録がないか、残した記録が少ないかだろうから、建国の経緯を本にして沢山作れば良いのかもね? そうすれば流石に全部は抹消できないからちゃんとした歴史が残るでしょう」
サラにこう言いながら、前世の歴史が都合よく変えられていた事を思い出して、無理かもという悲壮感が胸を
「そう言えばあなた、何時の間にユートピアの地図を作ったんですか? 出かけていたのは知っていますが」
「サラが寝てからだよ」
「それじゃ、殆ど寝てないんじゃないですか?」
「そうだね。久しぶりに徹夜したよ」
この世界に来てこんなに頑張ったのは初めてじゃないだろうか? 徹夜に近い事は今までもしたことはあったけど、それは義務感じゃなく研究に没頭したとかだったからね。でも今回は国の為と思ってやったから意味が違う。
それにこんなに時間が掛かったのは、もう一つ理由がある。それは俺の所有物と成っている島をどうするかも考えたから……。
ユートピアが建国すれば当然、島をどうするか決めなくてはいけない。個人の財産とするなら、島から得られるものはユートピアが国として買い取ることに成る。そうじゃなく島もユートピアのものとすればその必要はないが、今度は立場上だがフランク達は自由に利用できなく成ってしまう。
国を作ったり、俺が国王に成るという事はこういう今までなら問題なかったこともちゃんと決めて行かないと、中途半端な国に成って後からもめることに成る。本当にめんどくさい。
「それで島はどうすることにしたんです?」
あぁ~~またやったか……。
「島は国のものにするよ。そうすれば他国からの干渉は出来なくなるからね。ただ俺の許可があれば他国の者も利用できることにはする」
「それって今と殆ど変わらないんじゃ?」
「その通りなんだけど、形式上は決めないといけないからね。もしだけど俺の後継者に跡継ぎが生まれ無かった時に王が変われば、島は誰のものでもなくなる。そうなった時にどの国にも権利が生まれてしまうでしょ。だからユートピアの国土にしてしまえばそういう問題が起きないという事」
「国のものにするなら呼び方が島ではいけないですね。名前を付けないと」
「それ! それを考えているうちに夜が明けたんだよ」
名前を決めるって本当に難しい。一生どころか島の名前なんて其れこそ永遠に残るかもしれないものだからね。島の命名が初代国王である俺の名前と共に記録に残るんだから、変な名前は付けられない。それだけならまだ良かったんだけど、その時に俺の悪い癖だが今度生まれてくる子供の名前も考えてしまって余計に時間が掛かってしまった。
一度考えだすとあれもこれもと成るのは本当に俺の悪い癖だ……。ブツブツ口に出すのもね……。
「それで島の名前は決まったんですか?」
「決めたよ! 島の名前はパラダイス」
この世界の人には分からないだろうが、国名をユートピアにしているから、似た系統の名前が良いと思って、パラダイスに決めた。
国名 ユートピア 理想郷 島の名前 パラダイス 楽園
これを造語に出来ればこの世界にこの国名と島の名前の意味が残るんだけど、無理かな? 理想郷をイメージしたのがユートピアとか通じないよね……。いや、国王ならそれぐらい出来るかも? 挑戦する意義はあるな、ユートピアとパラダイスを認めさせよう!
だって天国や地獄だって宗教から生まれた言葉なんだから、出来ない事はない。
「そう言えば、俺は国作りの事ばかり最近は考えていましたが、他の賢者の皆は何をしてるんでしょう?」
「私もずっとあなたと居たから知りませんね。両親と婆やが何をしてるかだけは知っていますが」
何だ? この不吉な予感は? 三人が一緒に行動してるという事がどうも気に掛かる。
「何をしてるんです? 物凄く予想がつきやすいんですが、当たって欲しくはないですね」
「しょうがないんじゃないですか。そうなる様にあなたがしたんですから」
いや、ちょっと待って俺が仕向けた? ――そうなるのか? そうなるか……。
一言も何をしているとか、お互いに言っていないのに会話が成立している時点で予想が当たっているという事なんだが、一応聞いておくか?
「もしかしなくても、森や山に行っています?」
「はい、本当はカルロス様達について島に行きたかったみたいですけど、使っている武器があれですから、良くないだろうと諦めて、森と山に行っているみたいですよ」
サラの一族は戦闘狂なのか? まぁエリーは違うけど……。もしかしてサラの兄もそうだとすると下手に魔法武器はプレゼント出来ないな。一応義兄弟だし、両親やエリーにまであげているから、今度カルロス達の魔刀を作るついでにと思っていたけど、これは考え物だな。
カルロス達が戻るまでにはまだ時間もあるし、ロベルト達も暫く掛かりそうだから、取りあえず俺が今する事は無くなったので、村の状況を見て回ることにした。賢者達が何をしてるのかも気になるからね。
「サラ、俺は村を見て回るけど君はどうする? 今は大事な時期なんでしょ」
「そこまで気にすることは無いですよ。激しい運動や重い物を持ったりしなければ普通に生活して良いんですから。ただ今日は止めておきます、やりたいことがあるので」
サラのやりたい事? 今までのサラのやりたい事って殆どがスキルや魔法に関することが多かったけど、また何か始めるのかな?
「そう、何をするのか知らないけど無理はしないようにね」
さてどこから見て回ろうか? 先ずはこの村……、あれ? ずっとここを村かユートピアと呼んでいたけど、この村の名前を知らないよな。ユートピアはこれから国名になるから、この村の名前は元の物を使うか新しくしないと駄目だな。
「あのうちょっと伺うが、この村の名前は何というのです?」
「これはこれは宗主様、この村の名前がお聞きになりたいと……。名前と言えるものは無いですね。強いて言えばここは昔第四村と呼ばれていました」
第四村? という事は他の村も第一、第二のように呼ばれていたという事?
「それは領都のエジン以外は番号で呼んでいたという事ですか?」
「そうです。南部の領主にはそういう人が多くて、皆そんな感じでしたよ。村に名前が付けば栄誉だと喜んでいましたからね」
何という統治の仕方。ナンバー呼びのロボットに名前を付けるような感じだな。それだけ住民を只の働くロボットのように見ていたという事だ。元酷い言い方をすれば奴隷と同じだ……。
「それじゃ、これからこの村はエデンと呼ぶ事にしよう。ユートピアのエデン。理想郷の園という意味だよ」
「理想郷の園、ユートピアのエデン村! 凄く良い名前です! 宗主様が付けてくれたと皆に知らせてきます」
これで少しは広まるかな? 何処の言葉だと突込みが入りそうだけど、その時はその時という事で、このまま広めて貰おう。
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