第242話 あぁ~ すっきりした

 フランク達が回復するまで時間が掛かりそうだったから、今日はこの辺で終わらせてくれるようにビクター達に頼み込んで、漸く解放された。


 ここまで来たら俺が腰を据えてゆっくりと全部説明しないといけないのだが、その時俺の頭には一つの悪だくみが浮かんでいた。


 それは……。人任せにするという事。


 いやいや、それは何時もの事だろうと突っ込みが入りそうだが、今回は何時もとは違うのだ。ちゃんとビクター達三人には俺も含めた賢者候補全員で対応する。これに見習いも含めても良いと思っている。人数が増える分個人の負担が減るからね。


 ここまでなら何だ普通じゃないかと思われるだろうが、そこは違うのです。なぜなら俺が絶対に避けたい、国王やカルロスに対する暴露を全て今回参加したメンバーに丸投げしようと思っているからです。


 結婚式が終われば一応の顔合わせは済んだことに成るから、後の面倒事は全てビクターとフランクに任せて俺達は新婚旅行に行こうと思っている。これも一種の逃避行?


 始めは国王達を俺の家に招待することも考えていたから、国王達が泊れるような建物も作る計画だったのだが、今回の騒動で全ての予定が狂ってしまった。それなら狂わせついでに、この招待自体をなくしてしまおうと思ったわけ。


 こんな物があるよ、こんなことが出来るよ、という暴露をしたら、当然自分達にもやらせろとなるのは今回のビクター達で証明されているから、そこの部分を避けるために、新婚旅行に飛行船で行く予定。


 最悪どうしても招待が避けられなくても、勝手に俺の家以外の施設を使わせれば良い事。今のフランク達なら俺の家までなら誰でも連れてこれるぐらいのレベルや技量があるからね。


 これでお分かりだろう、国王より気兼ねなく話せるビクターまでは俺が相手をするが、それ以上は人に任せるという、物凄く往生際の悪い俺です。


 だってね、俺ってば前世も含めて初めての結婚だぜ! あま~~い、新婚生活を楽しみたいじゃないか! それを見たくもない無才男たちに囲まれて、何度も説明などしたくもない。まして飛行船に乗せろなんて言われたら俺はキレるね。


 ビクター相手に一度経験すればそれで十分、いづれは飛行船にも招待しなければいけないだろうが、今回は我慢して貰う。そうだロイスが好きな自転車で気をそらせるか? 飛行船よりはかなりインパクトが落ちるが、それでもこの世界に無い物だから良いでしょう。それに自転車ならロイスに丸投げ出来るからフランク達も納得してくれるだろう。


 一番の犠牲者はロイスに成るが、そこは何時もの事という事で……。 庶民が国際会議に出てるからね……。


 それからという物、俺達は本来通うと言っていたのに、全くそんなことも出来ず。ラロックに一週間釘づけにされた。それでも何とかこれまでの研究成果や俺が調べたことなどは全て説明できた。ただ本当の意味では三人とも理解できていないでしょう。


 しかし、今回の事で良いこともあった。それは見習いや賢者候補でも知識にばらつきがあったのですが、それが無くなったからです。どうしてもそれぞれやることが有ったり、その場に居なかったりがあるので、これは知ってるけどあれは知らないというのが、個人で違っていたのが理解は出来ていなくても存在は知ることが出来た。


「こうやって皆で話すことは良い事だな。知識の共有が出来る」


「そうですよ。これから皆さんは専門的に成っていくでしょうが、やはり基礎はもっと勉強するべきです。魔法の仕組み、スキルの仕組み、世界の法則など基本が分かっていれば応用が出来るようになります」


「それって魔物の進化の事もですか?」


 これは痛いところを付いてくるな。まぁ医者であるニックにしてみれば俺のやった事は禁忌と言えることでもあるし、魔科学者なら研究したいテーマではある。それに島の原種や新種の薬草から魔物までニックにとっては、これも魔物の進化に関係しているから気に成るのでしょう。


 前世の研究者がガラパゴスの研究に力を入れたり、保護しているのを考えると俺達もあの島はこれ以上手を付けない方が良いと思う。ニックはそういう意味でもああ言ったのだろうな。


 ただな~~、あそこにはミスリルの鉱脈があるからそれをどうするか……。


 人工的に作れると言っても大量には厳しいから、そこは俺達の研究の一環だということで、俺達のみ上陸をするということで制限を掛けよう。まぁ今の現状だとあの島に行けるのは俺達、いや、俺しかいないから特に今直ぐ問題が起きることはない。


 結果的にビクター達も含めて、今回殆どの事は公開したけど、その内容があまりにも公開し辛い内容なので、現時点では国の最高機密という事で秘匿する事が此処で決められた。ただ最終的な結論は国王がするだろうが、概ねこれと変わらない判断をするでしょう。


「飛行船か~ いったいどんなものなんだ?」


 そこに戻るか~~ 戻るなよ。そこに戻るとお義父さんまでうずうずしてくるから。ビクターよそれは今は頭から消してくれ! 自転車で我慢してくれよ。


「ユウマさん、それでもいつかはユートピアにお連れすることに成ると思いますから、諦めが肝心ですよ」


 な! 何故に? 俺の考えてることが分かった? 今回は口には出していないはず、それなのにサラはどうして俺の心の声を知っている。


「ユウマさん、顔に出ていますよ。本当に分かりやすい人。うふふ……」


 こえ~ マジか? 俺の表情だけでそこまで読み取れる……。これは絶対に浮気なんてしようものなら直ぐにバレルな。しないけど……。


「そう言えば飛行船もそうですが、ユウマ君真珠というのは物凄いものだね。あれも取り扱いが難しいよ」


 グランよ! そう言いながら顔はにやついているぞ。確かに魔石より手に入れやすいし、用途的にも多様性があるからな。ただあれはこれからもっと研究しないといけないものだ。多分サラとエマがやるだろう? 物凄く熱心だったからな。俺が寝てる間も貝を獲るくらいだから……。


 そう言えば俺とサラだけの秘密は結構あるんだよな。あの状態異常無効の真珠とか、島での研究成果はものすごく多くあったから、もしかしたら伝え切れていない物もあるだろうから、迂闊には何でも口に出来ない。まぁバレたら問題にはなるだろうが、あの真珠以外なら国家機密程度で済むだろう。


「真珠もそうだが、付与というなら鑑定眼鏡はその最たるものだろう。それとマジックバックもそうだ。いったいどうすれば良いのだ?」


 グランとビクターが普通の疑問や意見言ったのに、ここで飛んでもないことをいう人がいた。


「ユウマ君、わしは魔境の奥に行きたいのだ。それもレベル15の魔物がいる所に」


 この人は本当にぶれないな。元公爵なんだからもっと国の為に成りそうなことに興味を持ちなさいよ。流石にグーテル王国の王女であるマーサは真剣に考えてるぞ。


「流石に近いうちとは言えませんがお連れすることは出来ますよ。ただもう少し時間をください」


 流石にお義父さんの要望だから、無下にすることも出来ないからこういう答えに成ったが、これお義母さんがどう思うかな? まさかエリーの影響でお義母さんも行くとか言わないよな。しかし、エリーの変貌ぶりを見ているからな……。


「ビクター様、正直今すぐ全ての物について全部決めるのは無理ですし、マジックバックや鑑定眼鏡などもそうですが、魔法文字の研究や付与魔法の研究によってこの先作れるようにはなります。それにはもうお判りだとは思いますが、レベル上げや知識が必要です。その辺りをどうするかは国王様を含めてお話に成った方が良いかと?」


「そうだな。今ここで何を言ってもどうしようもないからな。この案件は長期的に見て計画を立ててやらないといけないな。国際的にも相当な波紋が広がるだろうから、慎重に扱わなければいけない。それにユートピア王国という架空の国まで登場しているからな」


 そうなんだよ。ビーツ王国には申し訳ないが、ユートピアという国には黒幕が存在する。その黒幕はユウマという一個人で、その片棒を担ぐのがエスペランス王国という立派な国という物凄くおかしな状態。


 これって以前俺が思っていた、世界を陰から操るフィクサー的じゃない?


 意図してやった事では無いけど今回はそうなったね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る