第183話 教育……。

 秘密会議は大体基本的なことが決まったが、これだけではこの国は息詰まる。それを回避するためにはやることがある。


 今回、国王が来るという事で、俺がフランク達に頼んでおいたことがある。今回の訪問は静養や視察が表向きの理由だったが、他に絶対思惑があると思っていたので、この際だから、将来的に全てを国に移行しようと思っているので、その為の準備をお願いした。


 その準備とは国王の教育である。カルロスが言ったようにこれまでは国が何時も後手に回っているのは分かっていたから、その原因が何かと考えたら、それは国のトップの知識不足だという結論になった。


 国のトップに知識が無いから、言われるがままになるし、主導できない。


 視察程度では駄目なのだ。国のトップよりここから育った、役人や貴族の子息、庶民の方が知識があり、研究や改良という基本的なことが身についている。


 賢者候補のように論理的に考える思考力も国トップの方が劣っている。


 国のトップだから、それなりに教育も受けているからこれまではやってこれたが、その教育が何段階も進んでしまったから、これ以上は主導できない。


 だって現状、見方によっては俺が国王のようになっている。俺は研究者になりたいのだ。世界を見て回って、のんびり暮らしたい。


 この数年で基礎は作った。あとはこの世界の住民がやるべきだ。それには国のトップが変わらなければいけない。交代するという意味ではなく、国王自らが学ぶという事。


 今は報告されたことにただ対応してるだけ、そうではなく国王が主導しなくてはいけない。その為には学ぶしかない。


 今までは宰相であるカルロスが助言できたが、現状はカルロスも学んでいないから助言も出来ない。カルロスでさえ対応しかしていないのだ。


 新魔法が出来ても魔法士だけが学ぶ、魔方陣が出来ても同じだ。錬金術という物があることは知っているが、錬金術がどんなものか知らなければ、主導できない。


 改良ポーションが出来ても効果だけしかしらない。どうやって作っているかを知らないのだ。前世でいうと漢方薬にひとつの薬草を足すと効果が上がるものがある。その漢方薬の薬効が上がったことは知っていても、何を足したのか知らないというのと同じ。


 改良ポーションは水を蒸留水に変えたものだが、蒸留水という物を知らなければなぜそうなったかを論理的に考えられない。


 水に不純物がないのが蒸留水。それから分かることは不純物があると効果が下がるという事。改良と言っているが、逆に考えれば改良型が正規で、その前が不良品とも取れる。知識があればこういう解釈もできる。これが論理的思考。


 本人が作れという事では無い。知識として知っているべきだという事。前世は教育システムがあったから、基本的なことは多くの人が学んでいる。


 賢者教育の初期に植物の栽培を教えたように、植物がどう育つのか知っている国のトップはいない。この世界ではね……。


 この世界特有の魔法やスキルについても、論理的に研究がされていないから、改良も開発もされていない。


 論理的思考が出来るトップなら、魔法はイメージと教えるだけで色んなことが指示できる。ここ数年で魔法はイメージというのはこの国ではそれなりに広まってきている。ましてや国王はスーザンなどから報告を受けているのだから、一般の人より良く知っているはずなのに、王宮魔法士に魔法の研究すらさせていない。


 学校の卒業生がいくらでもいるのだから、囲い込んで研究をさせることも出来たはず、それすらしていない。


 国のトップに研究や改良の概念がないのだ。グランとロイスを俺の家に初めて招いた時になぜ? を連発して考えさせた。その時に本人たちが言ったのが、どうして自分たちはそれに気づかなかったのかだった。


 現状国王たちは、便利なものが出来て良かったで終わっている。改良馬車が出来たら、道路を整備しようにならなければ本来はいけないのだ。


 まぁ今回此処で会議を開こうと思ったことは進歩はしてるんだけどね。


 会議の翌日から、視察という名の教育が始まった。本来の予定では10日間の滞在だったのだが、政務を王太子に両国とも任せてきていたので、期間の延長は手紙だけで出来たので、最終的に1か月の滞在となった。


 これで少しは国の考え方も変わるだろう。そうすれば今まで此処で学んだ人たちが、より一層活躍する事が出来る。


 全ての施設を王都に移転出来るまでにはあと何年かは掛かるだろうが、最低でもその準備は始めるでしょうね。


 国王たちが帰ったら、フランクに知らせてくれるように頼んでいたので、フランクが俺の所に来るまでの間、エリーさんのレベル上げと研究は続いた。


「ユウマさん、今日は何をするんです?」


「最近、研究ばかりで脳が疲れているので、今日は飛行船を作る予定です」


「飛行船とはあの建物で作っている大きなものですか?」


「エリーさん、そうですよ。空を飛ぶ乗り物です」


 本当はもっと集中して作りたかったのだが、中々家に帰ってくることが出来なかったので、前回フランク達が来た時から、あまり進んでいない。


 飛行船の骨組みはスライム素材で出来るようになったから、意外と簡単に出来たのだが、気球部分の外装の材料を何にするかで悩んだ。


 今回もトイレのスライムを処理したら、かなりの量の素材が手に入ったので、スライム素材でやろうとしたが、ガラスに出来る程、透明性があり、レンズのようになるので、そのままは使えない。


 そこでやってみたのが、スライム素材に石灰と炭を混ぜて着色してみた。スライム素材を極限まで柔らかくして、そこに石灰と炭を溶かした水を練るこむように混ぜて、最後にローラーで薄く延ばして、灰色の板を作った。



 その板を魔力を通しながら少し柔らかくして、骨組みに張り付けていった。これがまた不思議で骨組みも張り付ける板も同じスライム素材だからなのか、魔力を接着部分に流すと溶けるように一体化する。


 骨組みははめ込み式で後から何かで固定しようと思っていたが、この外装の接着方法と同じに魔力を流して一体化させた。


 溶接やボルト固定がいらないスライム素材、まして超軽量だからこれ程万能な素材はない。


 今作っている飛行船は4人乗り。もっと大きな物も作れるけど、着陸する場所に困らないだろうという事でこの大きさにした。


 推進力は風魔法の魔方陣を使い、魔力は魔石と魔方陣をミスリル配線で繋いで、魔石の数で出力を変えたり、スイッチでON、OFF出来るようにした。方向や高度の調整は尾翼で出来るようにして、操縦席のなる客室を取り付けて完成した。


 エリーさんのレベルも13にまで上がり、サラは22まで上がった。


 名前 サラ・ミュラー       

 種族 人族

 状態 良好

 職業 貴族(王族)

 レベル 22

 HP 1110/1110

 MP 1770/1770 

 スキル    

 魔法  生活魔法

 称号  生還者


 力  16

 速さ 17

 知能 28

 器用 19

 運  30



 名前 エリー・サザーランド

 種族 人族

 状態 良好

 職業 貴族

 レベル 13

 HP 660/660

 MP 1050/1050 

 スキル    

 魔法  生活魔法 裁縫

 称号  慈愛


 力  11

 速さ 10

 知能 20

 器用 23

 運  18



 これはちょっと上げ過ぎたかも、サラは良いとしてもエリーさんは拙いよね。仕えてる当主よりもレベルが上ってバレたら拙いよ。特に脳筋のお義父さんだから……。


 サラも調子に乗ってエリーさんに自分の鍛錬のついでに、剣術、体術と身体強化まで教えているから、もしマスターしたら本当に超人お婆ちゃんの誕生だよ。


 サラは結界魔法は練習していないから、教えられないけど、風魔法なんか教えたら……。





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