第57話 襲撃
グランとローレンは、拉致事件の報告の為のビクターとの面会が終わって少ししたら、ジーンを残してラロックに戻って来ていた。
領都ではスベンからの直接的な行動も無くなり、冒険者風の男達の監視しかなくなったので、これ以上対策も取りようがないし、燻製品事業が盛況過ぎて対策が必要になったので燻製品の担当であるグランはラロックに戻る必要があった。
対策といってもラロックではこれ以上の生産は物理的に無理だった。原材料である魚も肉もこれ以上はラロックでは手に入らない。これ以上乱獲すれば何時かは枯渇する。
だからと言って、肉や魚を他から持ってこれるかと言えばそれも出来ない。
そうなると出来る事はただ一つ、他の場所で作って貰う他ない。
ただその場所が問題だ、今現在はグラン商会の専属で作って貰っている。取引は製造業者直接でもできるが、売り上げはグラン商会の物だ、その売り上げから業者にグラン商会から利益を配分してる。
特許の法律が無いので、今はその方式を取っている。だから別の場所で製造してもらうにしてもこの方式を取らないと製法が漏れてしまう。
今に至っては燻製品の製法が漏れてもさほど問題はないのだが、拠点構築や商品開発にはそれなりの資金が出ているから、法律が出来るまでは安定収入は取っておきたい。
だから他の場所で製造してもらうには条件が出てくる
1つはゾイド辺境伯領の商圏から離れた所。
2つ目は魚と肉が出来れば同時に手に入る所。
この二つがクリアー出来ればグラン商会に被害はない。だから最悪製法が漏れても問題ないのだ。
解決策としてグランはフランク達と相談した結果、この際だから今後の事も考えて商業ギルドを巻き込むことにした。
商業ギルドは商売人の便宜を図る事や商売人から税金を徴収する役目もある。
その際の手数料や会費でギルドが維持されてるので、商売人が儲かればギルドも儲かるから、ギルドに条件に合った場所を探させて、仲介を頼む事にした。
グラン達が商業ギルドに依頼して一息ついた頃、事件は起こった。
夜、ラロックの囲いの門が閉まって数時間後、拠点の周りには暗闇に紛れて多くの人影があった。
「よし、そろそろいいだろう村から反対側なら多少の火ぐらいは見えないだろう」
その言葉を聞いた別の人が拠点の囲いに火をつけた。
「ある程度燃えたら火を消せ、燃えて脆くなったところを蹴破って中に入る」
多分この集団のリーダーなのだろう、その人物が次の指示も出す。
火を消して脆くなった木材を蹴破って中に入ろうとした時、集団に信じられない
事が起きた。
木材は蹴破れて、入り口は出来たのに入ろうとしても何かに邪魔されて入れないのだ。
その答えは、ユウマが作った結界の魔道具によって悪意のある者は入れなかったのだ。
結界なんていう魔法はこの世界にはまだない。その存在を知っているのは拠点の関係者でも一部だけ、昼間しか作業していない職人たちは当然知らない。
昼間も結界は作動してるのだが、職人たちに危機感などは無いので、拠点の護衛がいなくても何も感じていなかった。
グラン一家や錬金術師たちは扱っている物が希少価値があると分かっているし、ポーションなども作っているから、護衛がいない事に危機感を持っていた。
そんな感じで襲撃者が騒いでいるとその声に反応して、建物から人が出てきた。
出てきたのは錬金術師の女性三人、領都での拉致事件後三人は拠点に辺境伯訪問の折りに出来た宿泊施設で寝泊まりをしていた。
ユウマの拠点とまではいかないが、風呂もあるし食堂もあるのだからフランクの店にいるより快適だし、何より移動が無い分安全である。
「誰です! こんな夜分に門からでもなく入ろうとしてるのは!」
そう言ったのは年長のミランダ、三人の手にはライトの魔道具がある。
襲撃者たちは驚いた。人は居ないと思っていたので覆面もしておらず、ライトに照らされて顔を見られてしまったのだ。
「な! これは拙い引き上げるぞ!」
本来なら人がいない拠点を襲撃して中を物色してそこにある物を持ち帰る予定だったが人がいた。尚且つ入る事も出来ず顔まで見られてしまったのだ。
襲撃はあっさり失敗に終わった。襲撃者たちは一目散で逃走、暗闇に消えて行った。
残されたミランダ達はすぐさま次の行動に、今回のような事があった時の為にユウマが持たせていた、個人用の結界の魔道具で身を守りながら村へと走った。
門は閉まっていたが、門番は領の警備兵だからビクターからの通達もあり、事前に何かあった時の対処法は打ち合わせ済みであった。
門の詰め所にいた夜勤の警備兵に門を叩いて開けてもらい、事情説明をした後、フランクの店に向かった。
そこからは大騒ぎである。警備兵達はすぐさま拠点に行き侵入経路の確認、それと同時に周辺の捜索。
グランとフランクも拠点に確認に行ったり、ミランダ達から事情を聞いたり、朝一番で領都に早馬を走らせる準備をした。
警備兵達の周辺捜索で馬車が見つかった、襲撃者達は物色した物を馬車で運ぶつもりだったようだ。
夜でも人が歩く速度ならライトの魔法で明かりをつければ馬車でも移動できる、しかし今回は逃げる事が先決だったので、馬車を置いて逃げたようだ。
翌朝、予定通り早馬を走らせたグラン達は拠点をフランクに任せてグランとミランダで領都に向かった。
フランクは先ずラロックの警備兵に今日出入りする人の確認を襲撃者の顔を見てる、エマとローズと共に頼んだ。
出入りと言っても確認が必要なのは入りだけ、夜のうちはどこかに隠れていたとしても、領都に向かっていないならラロックに入るはずというフランクの予想からだ。
そして確認が取れた人を後からフランクが鑑定、称号を確認する。
鑑定疎外の魔道具何てかなり裕福でないと持っていないから、称号に犯罪者である称号があれば拘束する。
エマ達も全員の顔を見てる訳では無いので、今日ラロックに入る人物は全員名前を控えられた。身分証と共に、そうすれば後からでも拘束できる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます