第138話 冷蔵庫 冷凍庫
「どうしようかな?」
こんな独り言いいながら、病院に向かっている俺。
冷蔵庫関係を広めるには、魔方陣のこともグランに言わなければいけない。
ちょっと氷魔法を研究しただけなんだが、殊の外、話が大きくなりそうなんだよね。
勿論、初めから食物の長期保存がもたらす世界の変化という大きなことを考えてはいたけど、魔法や魔方陣、付与術など色々なことにも変化が起きそうだということが解って、広がりの大きさに躊躇しているんだよ。
ただ冷蔵庫を作るというだけで済めば問題ないのだが、これは本当に拙い。
説明するだけでも大変だし、それを最終的にどうするかを話し合うだけでも簡単には片付かないのが確定してる。
「言うべきか、言わざるべきか? それが問題だ」
「ユウマさんおはようございます。何を朝からぶつぶつ言っているのですか?」
俺にそう声をかけてきたのは、俺の秘書役でもあるサラだった。
「あ! おはようございます。 いや、ちょっと……」
「はっきりしませんね、どうしたんです? 私で良ければ話を聞きますよ」
そうだよな。ここは一人で悩まず、サラに聞いてもらって助言を貰おう。他国の貴族だとは言っても、サラはもう身内みたいなものだしな。
それにこの人はなんていうのかな年の割に思慮深いし、おかしな言い方だが、包容力があるんだよね。 母性愛?
「ちょっと悩んでいまして、話を聞いてくれます?」
「はい、勿論です。 ユウマさんのお役に立てるのなら」
そこから俺は冷蔵庫の話から始まり、長期保存がもたらす効果や、それに伴って色々変化が起きることを一つづつ丁寧に話していった。
多分サラは魔法のことや魔方陣については完全には理解できていないだろうが、どんな変化が起きるかということは理解できたと思う。
「それは凄いことですね。ですがユウマさんが悩むことではないのでは?」
うん? なんで俺が悩むことじゃないの?
「だって解ったことを報告して、皆さんでどうするかを考えることです。ユウマさんが決める事じゃないでしょ?」
そうか! 確かに今までもそうだったが、俺は色んなことを自分一人で決めていたんだよな。
賢者候補は何のためにいるんだ俺の分身というだけではなく、相談相手でもあるんだよ。なぜそれに気づかない? グランにではなく、賢者候補に話せばいいんだ。
「そうですね。ありがとうございます。吹っ切れました。サラさんの助言は的を射ていますね。これはサラさんの旦那さんになる人が羨ましい」 ズキン!
病院での講義や治療などが終わったので、招集をかけていた賢者候補の前で今朝サラに話した内容と同じことを話して聞かせた。
「「ユウマ!」」
「「ユウマさん!」」
何重奏だよというぐらい重なって名前を呼ばれた。
「だからね、長期保存出来たら良いなということを考えて、魔道具を考えてたら、色々と思いついちゃったんですよ」
「何が思いつちゃっただよ。思いついただけとか言えるレベルの話じゃない」
「そうですよ。私たちが折角頑張った付与術がこうも簡単に広めることが出来るなんて、どうしてくれるんです? 私たちの努力」
「いやそれは、さっきも話したでしょ。 付与術にはまだまだ可能性があると」
「それは可能性の話だし、多分ですがそれには魔力量も関係してくるでしょう?」
いやこれは知識がついたからの発言だよね。複雑な魔法には魔力量が必要になると当然のように理解してる。
「そこはこれから魔力量を増やせばね。大丈夫になりますよ」
「そんなに簡単に言わないでください。 どうせまた鬼畜になるんでしょ」
いや~ そこまで読んでいるか、当然そうなるわな。鬼畜とは行かなくてもレベリングは必要になるのは間違いないし、それに最近は昔と違ってパワーレベリングじゃないから余計に文句が出るのも当然なんだよ。
「それじゃ、付与術の可能性は知らなくてもいい?」
「またそうやって人の気持ちをもてあそんで、知りたいしやりたいに決まってるでしょ。本当に意地悪です!」
錬金術師三人衆のリーダー的存在のミランダの言葉に、ほかの二人も「うんうん」と頷いている。そこに何故か? フランクとロイスも同調していた。
まぁこの二人も魔法に目覚めているし、鬼畜も経験してるから同調するのも当然か。
「それでその冷蔵庫とはユウマの家にあるものと同じと思っていいのか?」
「それは少し違いますね。 あれを作った時と魔法の種類も方法も違っていますから、ただ考え方は同じです。冷やすことで物を長期間保存するということは」
「それじゃみんなどうする? 冷蔵庫と冷凍庫が出来ると物凄い変化が起きるから世界に与える影響が計り知れない。だからと言ってこれをやらないというのも俺は出来ない」
「そうですね旦那様。 私たちは商売をしていましたから、その有益性は痛いほど理解できます」
フランクもロイスも元は商売人? いや今も商売人だから商品が長く持つということの効果は良く分かるみたいだ。
「ユウマさん質問良いですか?」
「ハイなんでしょう? サラさん」
「あのこの冷やすという効果ですが、もしかして夏場に部屋を冷やすことにも使えます?」
いや~~~ そこに気づいちゃうか。そうだよね箱の中を冷やすんだから、その規模を大きくするだけだもんね。しかしそれに気づかれると黙っていない人が居るんだよ。
「おい! ユウマそれは可能なのか? そんなこと出来たら南の方の国には物凄く喜ばれるぞ。そして爆発的に売れる」
やっぱり反応したよ。そうりゃねクーラーですよ。売れますよね、気候が暑い国にはそう思うのが当然なんだけど、今は止めてほしかった。
「可能だけど、お願いだから今は止めて。これ以上作るもの増やすと大変だよ」
「ユウマさんごめんなさい私が余計なことを言ったみたいで」
「大丈夫ですよサラさん。いずれ分かることですから」
そうは言ったが本当は今は勘弁してと思っていた。しかしサラはやはり頭の回転が速いし応用力がある。それに賢者候補とは、いや、この世界の住民とは少し違っている。
最終的に冷蔵庫と冷凍庫は作るということで結論は出たのだが、これだけではすまない。
魔方陣のスタンプが作れるかどうか? 出来た魔方陣が実際に正確に発動するかどうかなどの検証が必要。
出来たらどんな冷蔵庫や冷凍庫をつくかも考えないといけないし、テストもしなくてはいけない。一つの魔石でどのくらい持つかとか本当にたくさんのことを検証しなくてはいけない。
前世の電化製品を作るのとほとんど同じだ。
こりゃまだまだ終わらないな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます