第139話 会議は続く そして・・・
冷蔵庫と冷凍庫、予想外にクーラーまで作ることは決まったのだが、どこで、どうやって、誰がを決めないといけない。
ここでは当然秘密厳守だから、拠点ということは決まりなんだが、正直もうこれ以上建物を建てる余裕がない。
拡張するということも出来るが、それをやると人目に付きやすいので、ただでさえ注目を集めているグラン商会がまた何かを始めたという事が直ぐに広まってしまう。
今回の事は単純に全てが完了するまで少なくとも半年は掛かると思っている。だから余計に人目に付くところではやりたくない。
「俺が拠点の地下に実験施設と小規模な工場を作るよ」
「地下?」
「そう地下。地下なら人目につかないし、穴を掘るだけで済むからね」
地上なら建物が必要だけど、地下なら穴を掘って部屋を作るだけだから、効率がいい。
次はどうやってだが、これは研究してみてからの結果次第だね。魔方陣がスタンプでまともに発動するか、しないかで大きく変わってくる。これは誰がにも関係してくる。
スタンプが有効なら、必要な人は外側を作る人が多くいる。そうでないなら魔方陣を書く人が多く必要になり、魔方陣を書くのに時間が掛かるから外側の製作する人数はそこまで多く必要ではない。
「取り敢えずは、地下に工場と実験室を作って実験の成果次第でその次を考えるで良いんじゃないかな?」
「そうだな。魔方陣のスタンプが出来なければ製作方法が全然違うからな」
「そこでしばらく俺は地下に籠って研究をしたいから、病院の方をニックさんとスーザンに任せたいんだけど、大丈夫かな?」
「問題ありませんよ。患者の治療もここ最近はユウマさんが指示を出していただけですから」
そうなんですよね。ここ最近は治療のやり方を教えて生徒たちがやっているのを監督してるだけだった。
だからこの監督をニックに任せれば問題ない。もしものことがあっても俺は拠点にいるから、直ぐに対応できる。
なぜこんなに生徒の成長が早いかというと、それは前世なら不謹慎でしょうが、この世界だとそうでもないことがあるからです。それは魔物での練習が多く出来るからです。
ゴブリンなんてこの世界に必要ないと言えるぐらいの魔物ですからね。手術のシュミレーションをしても、そのゴブリンは直ぐにポーションで回復するので極端に言えば何度でも使えるのです。最終的には回復が遅くなるので休ませる必要は出てきます。
ですが最近は魔方陣によるスリープとティムの魔法が使えますから、被検体の確保が物凄く簡単になっているので、時間を空ける必要もなく、技術の向上が半端ない。
一日に3~4体も解剖出来たら実力は直ぐに伸びます。まして生きてるのですから……。
失敗して殺しても何の罪悪感もない。こんな動物前世にはいないし、人間と構造が似てるなんて、これほど実験や練習に適してる魔物はいない。
前世の外科医なんて切ってなんぼと言われるぐらい経験が実力を上げますけど、それほどの経験は簡単には出来ません。それなりに時間が掛かります。
この状態を見ていると、依然考えた長期間の研修というのも、もう少し短く出来るかな?
だってね、前世のTVの医療ドラマとかによく出てくる、縫合の練習なんて必要がないんです。ポーションで簡単に塞がりますから。勿論、血管の縫合も必要ない、完全に再生させますからね。
この世界で出来ない事と言えば輸血ですかね。ですがこれもこれからの研究で出来るようになるかもしれないし、造血ポーションなんていうものが作られるかもしれない。
「俺の助手としてサラさん、ローズさん、ロイスさんの三人に手伝ってもらいたいんだよね。勿論、他の人も手が空いてるときは遠慮なく参加してもらって知識をつけてください」
「了解だ! みんなそれでいいな? 先ずは試作品が出来るのを待つとしよう」
それから数日で拠点の地下には大きな空洞と、小さな小部屋がいくつかできていた。
土魔法の習熟度が病院を作ったり、牧場を作ったことで、物凄い勢いで上がっているので、穴を掘るなんて造作もない。
施設が出来れば、先ずはスタンプ作りだな。素材を色々試さないとな。
ゴム? 一番に浮かんだ素材だけど、これ魔境の森の奥にしかないんだよ、でもそれと同時に浮かんだのがスライム素材。硬さが自由に変えられるから、これほどゴムの代用になるものはない。
スライム素材で先ずは作ってみるか?
「サラさんこのスタンプでここに魔方陣を押してみてください」
「はい、ここでいいんですね」
スタンプは数日で完成した。硬さを色々試して、文字が歪まない硬さを決めるのに時間が掛かっただけで、魔方陣の形にするのには苦労しなかった。
これは飛行船の骨組みを加工するときに判明した、魔力を通すと一時的に柔らかくすることが出来るのが解っていたから。
初めに魔方陣の形に柔らかくなった素材を切り取って、硬くなったらそこにまた柔らかいスライム素材を流し込めば反転したスタンプが出来上がる。
勿論、スライム素材同士がくっつかないように間に銀を張っている。
最後に歪なところを修正してスタンプの完成。
「それでは、この魔方陣に魔力を流します」
これで冷気がでれば、一段階目は成功という事。
「どうです? 冷たくなっています?」
「魔方陣の周りはひんやりしていますね」
「はい、私もそう感じます」
これで温度計でもあれば、正確に分かるんだけどな。ないものはしょうがない。
普通、 冷蔵室の温度は 約2~6℃が適正温度、野菜室の温度は 約3~8℃が適正それと湿度が必要。基本は4.8度らしい。
今のところはどうしようもないな。兎に角この魔方陣でどのくらい保存できるかを確認するしかない。
冷蔵庫の外側は簡易的に扉付きの四角い箱を作って、パッキンにはスライム素材を使った。
これで冷蔵庫に入れたものとそうでない物の腐るまでの日数を比べてみる。
同じように冷凍庫も実験する。冷凍庫の魔方陣は物を凍らせる魔法だから、物を入れたら瞬時に凍ってしまう。その魔法をかけ続けてることになるから、魔力消費が冷蔵庫よりもかなり多い。
「痛い! 手が~~」
これは拙い、改善が必要かも? 物を入れる時には魔法を切らないと、自分の手も凍ってしまう。
最後にクーラーだが、これは二つの魔方陣が必要。冷気だけでも良いがこれでは部屋が冷えるまでに時間が掛かる。だから冷気を風で送る方法をとる。
前世では風量や温度を変えられたが、そこまでは現状できないので、先ずは一定の温度の冷気を一定の風量の風で送るという単純なものにする。
スイッチも俺は完成させているが、それにはミスリルが必要だから今は魔石を外すことで止まるという構造にする。ミスリルはまだ公表できないからね。
この後も色々と実験は繰り返さられ、商品として出せて、大量生産が出来るようにするまで……。
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