第140話 あれ? これって・・・
冷蔵庫関係の研究が始まって、毎日のように助手の三人と色々議論しながら研究をしていると、今まで以上に関係が深くなったように思う。
今まではどうしてもお互いに遠慮があったのだが、最近はフランクみたいに俺を弟のように接してる感じに似てきていた。 家族のような感じかな?
「ユウマさん、野菜別に腐るまでの日数がこれだけ判明しました。個体別に誤差はありますが、平均で数値化しておきました」
「サラさんご苦労様。これで冷蔵庫の有用性は証明できましたね」
常温保存のものより確実に保存期間が長くなっている。イモ類は常温でも長期間保存できる物の代表だが、冷暗所だとその期間は飛躍的に伸びる。
「フランクさん冷凍庫の方はどうです?」
「問題ないですね。物の出し入れの時に魔石を外すことだけ注意すれば何の問題もありません。それに解凍の方も冷蔵庫に移してゆっくりやれば美味しさもそれほど変わりません」
「そうですか、それなら次は大型化を試してみますか?」
「はい、それが良いと思います。 輸送と備蓄では用途が違いますからね。それなら馬車に設置するタイプも検証する必要がありますね。日光が当たる場所でも大丈夫かどうか?」
解凍方法もスライム素材でビニール袋もどきを作れば他の解凍方法も出来るんだが、流石にそこまでは今は止めておいた。空気に触れないから冷凍焼け防止にもなるけど、そこまでは今は必要ないでしょう。
ロイスとそんな話をしてる時。
「ねぇ、サラさん最近ユウマさんといる時なんだか嬉しそうね」
「え! な、なにを言ってるの? ユウマさんは関係ありませんよ。ただ色んなことが学べているのが楽しいだけです」
「そうかな~~ どう見てもユウマさんが傍にいる時とそうでない時の顔の表情が違いますよ」
「ユ、ユウマさんは私の命の恩人で先生でもあるから、それで違って見えるんでしょう。そうよ、そうに決まってるわ」
そんな話が二人の間で行われていたことを全く知らない俺はいつものように
「サラさん、この後時間ありますか?」
「は、はい~~ 時間ですか? あ、ありますよいつまでも」
「いつまでも? いや、そんなに長い時間は必要ないんだけど、ちょっと個人的な実験に付き合って欲しくて」
「こ、個人的な実験。二人っきり」
「いやなら良いんだけど」
「と、とんでもない嫌なんてありえません。是非ご一緒させてください」
なんだ? どうしたんだ? サラさんの反応がおかしいぞ?
サラさんとの出会いから、もう数か月が経っている。あの衰弱しきっていて、生きているのが不思議なくらいだった人が、今ではこうして俺の傍で生き生きと生活している。
ズキン!
何だろう? サラさんのことを考えると時々来る、この胸の痛み?
痛みというのもちょっと違うようにな気がするが、表現のしようがそれしかない。
もやもやとかそんな感じでもないからな。
サラさんって本当に美人なんだが、それだけじゃなく物事をしっかり考えられて、忍耐強くもある。一本筋が通ていて非の打ちどころがない人。 ズキン!
何なんだよ。ん? ま、まさかこれが恋? いやいやそんなことがあるわけない。
でも俺って恋愛経験0なんだよね。こんな気持ちになったことが前世の38年間で一度もない。これが「恋」 なんだろうか? 分らない? 分らないからどうしたらいいのか分からない。
「サ、サラさん、今日はありがとうございます。付き合ってもらって」
「つ、付き合う、はぁ~~ ど、どういたしまして」
おかしぞ、二人とも、何かあれからお互いへんに意識をしている。
どうしたら良いんだ? 俺……?
やっぱり男の俺から切り出す方が良いのか? でもこれが恋なのかどうかさえ分からない。俺ってサラさんが好きなの? ズキン!
サラさんがいなくなったら俺はどんな気持ちになる? ズキン!
いやだいやだ! 絶対離れたくない。これが「恋」いや「愛」 なのかも?
前世から入れて40年以上、一人の女性にこんな感情を持ったことがない。
俺はここで悟った。
「サ、サラさん、お、俺と、結婚を前提に付き合ってください!」
「はぁい~~~ 不束者ですがよろしくお願いいたします」
お!~~~苦節42年ようやく俺に春が来た。
「痛い!」
俺はこれは夢ではないかと自分の頬をつねった。
俺はごく平凡な人間だ。特別イケメンでもない。それなのにこんな美人でスタイル抜群、俗にいう容姿端麗のサラさんが将来俺の嫁さんになってくれるかもしれないんだ。こんな事にわかには信じられない。
「本当にいいんですか?」
「はい」
やぁほ~い! 俺は天にも昇る気分だった。こんな奇跡が起きていいのだろうか?
神様この世界に転移させてくれて改めて感謝します。父さん母さん俺結婚できるよ。孫の顔は直接見せられないけど、天国から見ていてくれな。本当にありがとう。
孫の話はちょっと気が早い。なぜならその前に乗り越えなければいけないことがある。そうサラは貴族、それも隣国の公爵家のご息女。
王家に連なる貴族なんだよ。侯爵じゃなく公爵だからね。
そうするとこの国の王家とも全くの無関係ではない。俺は王家や貴族と関わらないというのが大前提なんだよ。これはどんな時でも崩さなかった。
しかし、このサラさんへの気持ちを諦めることは出来ない。どうしようか? 観念して王家と関係を作るか?
「ユウマさん? どうしたんです? 急に黙ってしまって」
いか~~んまた思考の渦に入っていた。
「そのですね、サラさんの良くご存じだと思いますが、俺は王家と貴族とは関わらないというのが、基本姿勢なのですが、サラさんとのことを考えるとそうも言っていられないなと愚考しておりました」
「な~~んだそんなことですか。 それなら大丈夫ですよ。私が貴族籍から抜ければ済むことですから」
いやいや、それはとんでもないことを簡単に言っていますよ。公爵家ですよ。男爵とかならそれもありでしょうが、公爵、王家の次の権力者。場合によっては時期王が出る可能性もある家ですよ。
「サラさん、それはあまりにも無茶苦茶では? そんなに簡単に出来ることではないでしょ」
「そうでもないですよ。実は前々から実家の父にはユウマさんの事、手紙で知らせていたんです。そしたら、もし今回のようなことになれば好きにして良いという許しは貰っているんです」
はぁ~~~ それはどういう事? 俺が王家とかと距離を取りたがっていることも知らせていたという事? それでもOKが出ている?
サラさんの両親てどんな人? 少しどころか大分ぶっ飛んでると思うけど……。
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