第263話 いよいよ結婚式?
島でのやることが全て終わったので、いよいよラロックに帰還することになった。今回の旅行? では色んなことがあった。目的以外の事が多すぎた感はあるが、この世界が未開の部分が多いからしかたがないのだ。
「サラ、エリーさん、それじゃ帰りましょう。戻ったら忙しくなりますがそれが終わったら暫くゆっくりできるでしょう」
「いよいよ、結婚式ですね。お嬢様の準備も終わっていますから、後はその日を待つだけです」
何だか意味深な言い方をするエリーだが、そこは気にしないようにして飛行船に乗り込んだ。
帰りは何事もなく順調な飛行で、魔境の森に帰り着いた。その日のうちにラロックに向かうことも考えたが、ラロックに行けば最後、とんでもない日々が待っているのが予想できたので、魔境の森で一泊後、次の朝一番でラロックに向うことにした。
何時もの様に普通にラロックに到着したのだが、森を抜けた瞬間その風景を見た時、俺は言葉を失った。
「ユウマさん、あ、あれはどういう事でしょう?」
そこには人が歩くスペースがやっとある程度に、テントらしきものや貴族が使う天幕がびっしりと建てられていた。魔境の家に帰る時はラロックの上空を通過していなかったから分からなかったが、この状況はどうみても一日やそこらで出来た光景ではない。
「これは拙いですね。このまま森から出て行くところを見られたら、確実に俺達だと分かってしまいます。取りあえずは拠点に行く方が無難でしょうから、森を通って病院経由で拠点に向かいましょう」
この状況はどう考えても俺たちの結婚式に参列する人達だろうし、恐らくビクターから報告されたことが王家から多くの貴族に伝わった結果だろう。そうじゃないとこれだけの人達が俺たちの結婚式に来るはずがない。
俺の予想では王家との話し合いぐらいだと思っていたんだが、この状況はそれだけではすみそうにない。王家との話し合いでせ面倒だと思っていたのに、これはどう対処したら良いんだ……。
今は病院も森の開拓で外部から見える状態だが、最初に使っていた地下通路もそのまま残しているから、病院にさえ見つからないように入れれば、後はどうにかなる。
最悪、病院にフランクなりを呼んでもらうか、病院にいる可能性が高いニックかスーザンに事情が聴けるかもしれない。
結婚式までにはまだ五日の余裕があるんだぞ。それなのにどうしてこんなに早くラロックに来ているんだよ。結婚式後にはこんなこともあり得るかとは思っていたが、流石にこの状況は予想できなかった。
結婚式後なら、新婚旅行という理由を付けて、短時間の面会だけ逃げられると思っていたのに、これでは新婚旅行だからという理由では引き下がらないだろう。ここまで来るのに相当のお金と労力を使っているから、そんなこと言ったら物凄いことに成りそうだ。それにどうみても貴族だけじゃないんだよな。
商売人はまだ分かるが、どうみても冒険者もいる。商売人は商売につながることが多くあるからまだ分かる。飛行船やユートピアの事は伝わっているか分からないが、今回の結婚式がこれまでラロックから発信された多くの事の中心人物であると言うことはバレているならくるだろう。
しかし、何故冒険者まで来ているんだ? これだけはどうしても分からない?
何とか見つからないように病院の敷地内には入れたが、そこで待っていたのは思いもよらない人物だった。
「やぁ~~お帰り。やっぱりここに来たね」
そこにいたのは、グラン一家やサラの両親、賢者候補と見習いのメンバー、それと俺に声を掛けたビクターがいた。それだけならまだ良かったのだが、どうみても高貴なお方だと分かる風貌の人達がいた。勿論、その中には面識はないが俺が一方的に知っている、カルロスの姿もあった。
「お前は本当に分かりやすいな。この状況をみればお前は絶対に病院経由で拠点に来るだろうと踏んで待っていたら案の定だ」
悪かったな、どうせ俺は分かりやすい性格だし、顔にすぐ出る人間ですよ。まぁ長い付き合いで家族同然のフランクだからというのもあるが流石にここまでバれやすいのはどうにかしないといけないな。これからの陰のフィクサーとしての行動の為にも……。
「ビクターよ、わしらにも紹介してくれんか」
「そうでした。こちらが例のあの御仁で、ユウマ殿です」
やめて~~、王様に紹介するのに殿付けなんてされるとむず痒いよ~~。
「おう~、これは初めましてだな。いろんな意味で付き合いは長いが、会うのは初めてだな」
やめて~~、物凄い嫌味を込めた挨拶は罪悪感が凄いからやめて欲しい。確かに逃げ回っていた俺が悪いが、直に言われると心に突き刺さる。
「は、はじめまして、ユウマ・コンドールともうします」
「おお、そうであったな。すまん! ユウマ殿は名誉伯爵だったな。すみません陛下紹介の仕方を間違えました」
本当はユウマだけで呼んでもらいたいが、義両親の手前もあるし、グーテル王家もいるからこう言わないと申し訳ないからな。サラとの婚姻の為にわざわざくれた爵位だからね。
俺の行動を読んでここで待っていたのは分かるが、その目的はなんだろう。それもゆうなれば関係者全員が勢ぞろいしている。まぁあそこに集まっている人たちが関係してるのは想像がつくが、果たしてそれだけだろうか?
「ユウマも感じていると思うが、今度の結婚式は大変なことになりそうなんだよ。それで前もってお前と話し合いが必要だと言うことで、ここで待っていたんだ」
フランクがこう言った後、俺の耳元で、
「王家が参加することは俺も考えていなかったんだが、ビクター様とカルロス様にどうしてもと頼まれて断れなかった。すまん」
王様たちもここまで来ていて、ビクターが会っているのに、自分達だけ会えないというのは気分が悪いよな。前から会いたいとは言われていたしな……。
「仕方が無いよ。覚悟は決めてるから問題ないです。今回は元から会うつもりだったから気にしなくて良いですよ」
影のフィクサー計画を実行するには王家との繋がりは避けては通れない。それでもどうするかな? 結婚式前に島の事やダンジョンの事も公表した方が良いかな? ビクターがどこまで王家に話をしてるかで変わるけど、それを気にしていたらまた隠し事が増えるだけ出しな。
「そうですね。結婚式の前に今後について話し合っておいた方が良いと思いますので、じっくり話し合いましょう」
それからの二日間はもう徹夜に近い状態でこれまでの経緯をもう一度話して、最後に島の事ダンジョンのことまで全てを話した。
フランク達も今回の旅行の事については知らなかったので、物凄く驚いていたが、まぁ俺との付き合いが長い分、驚きも一瞬で、それをどうするかの方に思考がすぐに向かった。
「いやはやビクターから話には聞いていたが、これ程迄とは……。それにほんの数日でまた新たな発見までしてくるとは、正直どう対処したら良いか直ぐには結論が出せないな」
「それにユートピアとミルと言ったか、フリージア王国の村のこともかなり問題が大きいです。両方とも他国の事ですから……。外交もやる私としては頭が痛いです」
すまんカルロス。以前砂糖の事だけでもビーツ王国とかなり揉めたのに、今度は二か国だからな。それに正体は偽っているが、俺の事がバレたら一大事だ。他国を侵略したと言われる可能性すらある。
「ユウマよ、お前は休暇を取ると必ずと言って良いほど何かやらかすな。まぁ俺達も島の事は関係してるから偉そうな事は言えないが、ダンジョンとはまたとんでもないものを見つけて来たな」
「ダンジョンも確かに物凄い発見ですが、位置的に利用価値は今スグにはないのでそうでもないと思いますよ。ただダンジョンで発見された転移陣と保存の魔法陣はかなりの問題になると思います」
「そうだな冷蔵庫や冷凍庫が少しづつ普及し始めたばかりだ。それを完全に無視するような魔法陣が発見されれば色々問題が出てくる。それに転移陣をどうするかだな?」
転移陣に関しては当然メリットとデメリットを話してある。これをどう使うかは王様に決めてもらうということも言ったから、後は丸投げだ。
「それにしても、これだけの事を全て公表するのは危険じゃな。ビクターが公表した話もここまではしていないからな」
そうなんだ? 全部は公表していないのか? ビクターはやはりやり手だな。問題が起きにくい所までしか公表しなかったんだ。当然フランクやグランとも相談して決めたんだろうけどね。今回はお義父さんもその中に入っているのかな?
「ユウマ殿、そなたは学校でも全てを公開すると言っていたが、それは少し待ってはくれぬか?」
「王様、待てと言うことは何かお考えがあると言うことですか?」
「そうじゃ、学校で公表すれば大陸中に伝わる。それが良い方向に行けば良いが、以前の帝国の例もある。出来るなら穏便に進めたいから、考える時間をくれぬか」
流石一国を預かるだけの事はある。やり方を間違えれば即戦争という事もあるし、そうならなくてもいつかはそうなる可能性があると考えているんだろうな。だから考える時間が欲しい訳だ。
結婚式まであと三日、俺はやりたいことがあるから早く会議を終えたいがそう簡単にはいかなそうだ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます