第9話 初めての商談

「あの早速だけど、これ買い取ってくれるかな?」


 リヤカーに載ってる、草や竹で出来た籠を見せながら。


 その時気づいた。


「あ!ごめんごめんこれじゃ中に何が入ってるかわからないよね」


 なんだそれって顔してたから、慌てて詫びを入れて籠を二つ手に取って、中身を見せることに。


 草籠には魚の燻製、竹籠には燻製肉各種とベーコンが入ってる。


 これは事前に用意した、サンプル用に全種類入ったもの。


 その他の籠には種類別に入ってる。本当に準備段階で色々考えたんですよ、どうやって商談するのがいいのかとか。


 それで思いついたのが、サンプル、味見用の準備。


 食べ物ですからね味も解らないのに、当然買いませんよね。それに燻製という加工方法が知られているかもまだ解らなかったので。


 案の定、商人は物を見ても何だそれって顔してました。燻製肉はまあ肉の塩漬けがあったせいか、少し違うな程度の反応でしたが、流石に魚の燻製は、一見干からびてるように見えるので、怪訝そうな顔をしてましたね。


 ベーコンも見たことないのか、まだちょっと引きつったような笑顔のまま、漸く商品の説明をするように言ってきました。


 それではと思ったのですが、ここは説明するだけより、折角用意した味見用でもあるので。


「これらは炙ったり、焼いた方が美味しいので、竃のある所で味見用の物を調理して説明させてくれないか」


 とお願いしてみた。


 この商人、新しいものや珍しいものに目がないらしく、この辺境で商売してるのもじつは、辺境ならまだ見たこともない物が見つかるんではないかという期待があり、ここに来ることを決めたらしい。(本人からの後日談)


 このように人とは違った感性をもっていたからこそ、俺の持ってきた物にも興味を示し、味見してくれることになったのだ。


 店の奥の厨房に案内してくれることになったはいいけど、他の商品をこのままというわけにもいかず、どうしようかと考えていると、それに気づいたのか、店の裏にそのままリヤカーを引っ張て来るように言ってきた。


 店の裏までくると、サンプルを持って入ってくるように、裏口を案内された。


 裏口から入るとそこは通路と少し外れたところに厨房があった。


 厨房には料理人らしい人物もいて、一緒に味見してくれると言うので、料理人にフライパンを借り、竃で調理することに。


 丁度お昼の準備を始めてたようで、竃に火も入っていたので直ぐに調理できた。


 調理を初めて直ぐ、燻製独特の香ばしい臭いが厨房に広がり、商人と料理人はうっとりした顔になっていた。


 ベーコンは厚めに切って焼いた物と、薄く切ってカリカリになるように焼いた物の両方を準備した。


 出来上がった物を皿に乗せ、味見をしてくれるように商人に差し出した。


 すると、臭いに我慢できなかったのか、奪い取るように皿を受け取り、早速料理人と味見を始めた。


 そこからは全てを食べ終えるまで、二人とも無言……


 食べ終えると同時に、美味しいし初めての味で、食事にも携帯食にも、保存食にもなり、酒にも合いそうだと絶賛、是非取引をしたいと子供のような目で顔を俺に近づけながら言ってきた。


 そこからは早かった、俺が辺境の物価や相場がわからないと、正直に言ったのが気に入ったのか、辺境の相場だったり、他の町の相場など俺にとっては喉から手の出るような情報を、警戒心無く教えてくれた。


 この人本当に正直でいい人だな、普通商売人なら少しでも安く仕入れるために、口八丁で誤魔化してくるのに……


 あくまでも俺の印象だから、本当は騙されてるかもしれないが、この人ならもし騙されていても、最終的に俺に見る目がなかったと思えるぐらいの人物だった。


 それから商品別に値段を決め、後は店の従業員が数の確認をし、合計のお金、銀貨15枚を受け取った。


 それから次は何時頃納品できるかとか、数はどれくらい用意できるかなど、いろいろ取り決めていき、商談は一応終了。


 今度は俺の用事を済ませることにした。欲しいものがあると伝えて、店に案内してもらい、色々と物色しながら、モノの値段とかを聞くことによって、お金の価値や種類を聞き出していった。


 結果わかったのが


 鉄貨  1枚 10円

 小銅貨 1枚 100円

 銅貨  1枚 1000円

 銀貨  1枚 10000円

 小金貨 1枚 100000円(10万)

 金貨  1枚 1000000円(100万)

 白金貨 1枚 10000000円(1000万)


 大体こんな感じがこの世界の貨幣価値。


 材質や含有量も決まっているのでこれで不正をするとその国は世界中から総スカンをされたり、世界中から戦争を吹っ掛けられ、間違いなく滅ぶそうだ。


 以前に一度だけあり、本当にあっという間にその国は滅んだそうだ。


 フライパンや鍋、包丁、物を作るのに必要な道具や、釘なども購入。今までなかった小麦粉とか野菜の種とか本当に色々と、有り金全部に近いぐらい買ってしまった。


 それらの商品と俺の商品を入れてた籠を、リヤカーに積んで時間の許す限り村を見て回ろうと思っていたのだが、商人、いやそろそろ名前で呼ぼうかな、商談が始まった時に、お互い名前を名乗り挨拶はしてたので。


 彼の名前はフランク、30歳 


 平民なので名前だけ。その時に俺もユウマとだけ名乗った。17歳だと言うことも。

 村を何故見て回れないかというと、そうそのフランクが離してくれないのだ。何処に住んでるのかとか、何故とか?もうそれはそれはしつこく、年の離れたかわいい弟をかわいがり心配する兄のように聞いてくるのだ。


 このままではまずいと思い、俺の最大課題を実行することにした。







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