第10話 主人公あるある回避のため

 では始めようか、俺の異世界人生の課題。


 フランクが矢継ぎ早に質問してくるのを、手をフランクの顔の前にかざし、強制的に止めさせた。


 そこから真剣な顔で、俺との取引が続けたいのであれば、決して俺のことを他人に話さないようにお願いしておいた。


 兎に角目立ちたくないことを解ってもらうために、一生懸命説明とお願いをするしかなかった。


 今回は仕方なく店で商談したが、これからは出来るなら、森の入り口で商談したいと持ち掛けてみた。


 勿論勝手を言ってるのだから、その分値段を下げても良いと。


 フランクは暫し考えて、出来るだけこちらの言い分のようにすると、約束してくれ森の入り口に来るのも今回関わった人以外は行かないようにしてくれるというありがたい申し出までしてくれたので助かる。


 特に貴族とは絶対に関わりたくないと何度も言って、誠心誠意お願いして帰ることに。


 その際にフランクが絶対に俺との取引を続けたくなるように、駄目押しの意味を込めて、最終兵器を渡すことにする。


 これは結構賭けでもあったのだが……。


 そう、それは滝つぼで見つけた宝石の原石だ。


 フランクはそれを見て少しすると、顔が引きつってきた。鑑定したのだろう、俺はフランクと会ってすぐに、フランクを鑑定してたので、フランクが鑑定持ちだということは知っていた。


 勿論変な称号がないことも確認済み。


 物が何なのか解ってからすぐにフランクは慌てて返そうとしてきたけど、俺は宝石に興味もないし、持っていても何の価値もないといい。お金に替えるよりこういう取り引きの口止め料にするほうが俺にとっては価値があると説明した。


 また見つけたら持ってくるともちゃんと伝え、継続されるかもしれないと期待させるのも忘れないでおく。


 ただ最後に、フランクの命に関わるようなことがあればこの約束も反故にしていいとだけはちゃんと伝えて、次の商談日の約束をして帰ることにした。


 リヤカーには来る時よりも多いぐらいの荷物が載っている、それを軽々と引っ張てるのを見る、フランクの目。


 これはどちらだ? 俺が異常に力が強いと思ってるのか? この大量の荷物を人の力で運べる、リヤカーへの興味か?


 はい! 両方でした……。


 やっぱりあの森に住んでるぐらいだから、それなりに強いのだろうとは思っていたみたいだが、それでも目の前で見せられる異常な力。見た目は17歳だし、筋骨隆々の大男でもない俺が引っ張っているのだから、それは目を見開くよね。


 それに、これだけの荷物を人の手で運べるリヤカーの便利さにも興味を持ったようだ。


 この世界ではまだリヤカーのように人の力で大量の物を運ぶ道具がなかったみたいで、誰が作ったのかとか?


 燻製のサンプルを食べさせた後のように、俺の目の前まで顔を近づけて聞いてくる。 

(怖いよフランク)と心の中で思いながらも、俺が作ったと正直に答えた。


 そしたらもう、これ幸いとでも思ったのか、同じものを作ってくれないかと言ってきたので、作るのはいいが、俺一人では次来る時に二台は持ってこれないというと、確かにそうだと残念そうにしていた。


 本当は、二台目を上にかぶせるようにすれば持ってこれるのだ、本当のステータスならだが。


 でもそこはちょっとこの若さでは異常な強さだなという位に思ってもらわないといけないので、自重しておいた。


 残念そうなフランクに、それにこれはまだ完成品ではないと告げると、


「どこが?」


 と聞いてきた。


 車軸が木製だし、木枠に直接穴をあけて車軸を通しているから、使ってるうちに摩擦で穴が広がり安定しなくなり、いずれ負担が大きくなり壊れると教えたら、今度は、完成ではないと言うなら当然完成させることは出来るんだろうと、問い詰めてくる。


 どうしょう? ベアリングは流石にまずいよな? 馬車でもリヤカーと殆ど同じ構造だから、車軸と車軸受けが金属ではないとだけ伝えるか?


 それとも、車軸関係の他に骨組みも金属で作ったほうが良いと伝えるか?


 少し考えて、ベアリング以外の作り方を教えて作らせることにした。だって俺まだ金属加工できなし、材料も持ってないからね。


 将来的には、錬金術と鍛冶も出来るようになって、男のロマンの剣とか刀とか異世界あるあるの馬車の改造とかやってみたいじゃん。


 目立たないと言うのは大前提だが、だからと言って何もしないとは思っていない。


 そんなことしたら、折角異世界転移した、いや、させてくれた両親や神様に申し訳ないし、楽しまない人生なんて誰も望んでないだろうからね。


 勿論、俺も望んでない!


 作り方を教えるから、何か書くものは無いかというと、フランクは従業員に書くものを持ってくるように指示を出したが、店に入って戻ってきた従業員が持っていたのは、やはり紙ではなく羊皮紙だった。


 羊皮紙ってこんな感じなのか、映画では見たことあったけど。実物は見たことも触ったこともない。


 ここで俺の悪い癖が発動、羊皮紙? この世界に羊いるの? 疑問に思ったので早速フランクに聞いてみたら、答えは、やっぱり異世界あるあるでしたよ。羊によく似た魔物の皮から作られているので羊皮紙もそんなに安くはないそうだ。


 だから普段ちょっとの書き物なら、木の板に竃に残った炭を加工して書いているそうだ。


 何だかこの世界は酷くアンバランスだ。鑑定を阻害するようなとんでも魔道具が存在するのに、一方では紙やリヤカーのように生活に役立つものが遅れている。

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