第11話 ようやく帰宅できそう

 羊皮紙の話を聞いたから、木の板でもいいぞと言ったけど、作らせる工房に渡すものだから羊皮紙じゃないとまずいと言われた。


 仕方がないので勿論、使ったこともない羽ペンで羊皮紙に構造がわかり易いように、多角度から見た絵を描いていった。


 寸法は敢えて書かなかった。何故って? だってまだこの時はこの世界の長さや重さなどの基準や単位を知らなかったもん。


(もん? かわいくない元アラフォーが言っても)


 だから大きさは用途や好みだからと濁しておいた。


 いや~ホントこの時はボロが出ないか、冷や汗もんでしたよ。フランクが突っ込んでこなかった時は心底ほっとしたよ。


 工房に頼んで作ってもらうから、完成したら見て欲しいとお願いされたので、快諾しておいた。


 ここでふと思った。紙がなく羊皮紙もそれなりの値段ということは、本はこれまた当然異世界あるあるで高いんだろうと予測し、これはどうにかして情報を聞かなくてはいけないと思った。


 そこで閃いたのが、森に住んでるから病気になった時困るから、薬草とか調合のやり方が載ってる本は無いかと聞いてみたら、あるにはあるけどやはり高額だそうだ。


 いくらぐらいかと聞いたら、内容や種類によって様々で、安いもので銀貨5枚位からだそうで、貴重なものは金貨や白金貨が飛び交うらしい。


 どんな内容か知らないけど、銀貨5枚からってびっくりだよ。日本円で5万円ぐらいだよ本が、地球なら実用書でも何千円かだよな。


 それならと、図書館のようなところはないかと聞いてみたら。


 これまたあるにはあるけど、この村にはなく、領都と呼ばれるこの地方の領主がいる所にあるそうだ。


 ここから馬車で1日半の所。この世界の馬車の速度とか道路事情が分からないので、距離感がつかめないので今いちピンとこないが。


 歩きなら3日と聞いてやっと距離感がわかった。


 俺が森の中の家からここまでの行程を一般人なら1日から2日かかると予想した距離から換算すると、森よりは魔物も出ないだろうから、ここまで2時間ぐらいだったから、俺なら6時間もあれば着くということ。


 機会があれば一度行ってみるか?  図書館には行きたいからね。


 かなり高いから今回は諦めようとしたら、フランクからとんでもない申し出がされた。


 何と!珍しい物好きのフランクは薬草の本とか調合の本、そればかりではなく、錬金術の本まで持っているから、貸してくれると言うのだ。


 もしかしたら、あの宝石の原石がきいたのか? 本当の価値は解らいが、それなりの価値があったのだろう、フランクのあの慌てぶりは凄かったからな。


 ここで遠慮するのも損だし、取引は続けるのだから儲かったぐらいの気持ちで借りることにした。


 少し待ってるように言われたので、見送りに来ていた味見をしてくれた料理人と雑談をして待つことに。


 料理人の名前はケイン 35歳 フランクの店で働きだして10年になるそうだ。

 従業員が5人いて全員住み込みだからその食事を作ってる。


 ちなみに後日談だが、このケイン嫁さんがいて、元この店の従業員で28歳。

 名前はエリザベスで二人だけは別に住んでるそうだ。子供が2人いる。


 ケインのあれらは本当に美味かったからはじまり、料理人らしく他にどんな食べ方があるのかと聞かれたので、日頃はどんな料理を作ってるのかと逆に聞き返して、この世界の食事情をそれとなく聞きだした。


 かなり苦労したけど、ボロを出さずにこの国の調味料と調理法を聞きだせた。

 焼く、煮るはあるけどやはり蒸すはないようだ。


 調味料もみそ、醤油は当然なく、基本塩、砂糖、香辛料、ハーブで味付けしてる。

 勿論砂糖、香辛料は高い。ここは辺境で、まして輸入品らしいから。


 だから、庶民はだいたい塩とハーブで味付けしてる。


 ちなみに塩もここでは岩塩、では甘味はといえば、果物とはちみつ。


 当然ながらはちみつも、はい! 魔物のハチの巣からです。


 果物は普通にとれるが、当然冬には殆どとれない。


 俺のいる森の中は魔力が多いので、季節に関係なく果物がとれる。それに美味い。

 だから、冬に果物を取り引きに持って行った時はトラブルになりかけた。


 この村を中心に考えると、東に森、北に山脈、西に領都、この国の王都は南西に馬車で10日の所。(当然南西に直接行く道はありません)


 岩塩はこの北の山脈で取れる。この山脈まで何と馬車で1日かかる、北門から向かえば麓の村に付く。その村では岩塩の他に鉄鉱石も取れる。


 しかし岩塩の採掘量が少しづつ減少してきてるらしく、ましてこの国は内陸にあり海から遠いので、将来的には死活問題になるかもと、この国では最重要課題だそうです。


 いや~ フランクを待ってる間だけで、此処まで聞き出すのは大変でしたよ。


 異世界小説に良く出てくる田舎から出てきたとか、人里離れた森で爺様と暮らしてたとかの常識知らずの設定は、この村では使えないのですよ。ここが田舎で、森も魔境ですから。


 だからこそ門でもこういう設定は使わなかった。何某かの理由があって森で暮らしてる、変わり者で通した。


 本当にここの門番が厳しい人でなくて良かったよ。


 漸くフランクが本を抱えて戻って来たので、受け取り、今度こそ帰ることにした。


 帰りにも東門で門番が不思議そうな顔で見てたけど、気にせず真っすぐ森への道をリヤカーを引いて帰って行った。


 当然だよね、リヤカーで森の中は行けないのだから……


 結果アイテムボックスは直ぐにばれました。


 だが、ただでは起きず、このアイテムボックスのスキル持ちを理由に森で暮らしてるということにした。



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