第126話 帰らないの?

 鬼畜強化合宿も無事に終わり、俺の家に帰って来られた。


 二人は疲労困憊で無口です。これは魔銃が見られなかったからでもある。


 もし見られていればフランクが疲れぐらいで、引き下がるわけがない。


 魔銃のお披露目はするつもりだったが、あくまで見られたらの話し、見つからなければ当分は見せません。


 だって見せたら、フランクが煩いんだもん。それに魔銃の説明をするには、魔法陣やらなにやら、いちから説明しないといけないからめんどくさい。


 もう少し、物理や魔法陣の事を学んでからなら、説明が簡単に成るから、それまではこちらから積極的に見せる事はしない。


 グラン、フランク、ロイス、この三人は本当にめんどくさいの、グランは年のせいで少しは制御出来るけど、フランクとロイスは無理、兎に角しつこい。


「フランクさん、レベル上げは終わったけど、明日帰る?」


「はぁ! 何を言ってる? 俺たちはユウマの休暇が終わったら一緒に帰るぞ」


 はぁ~~ 何を言ってらっしゃるのかな? この人。


 まだ、俺の休暇は10日残ってるぞ、その間ここにいるつもりかよ。


 それならそれで、こちらにも考えがある。鬼畜モードパート2を発動してやる。

 その選択をしたことを後悔するがいい。


 翌朝、日が昇ると同時に、俺はフランク達を叩き起こし朝から剣の修練をさせ、朝食の後からは、物理と魔法の講義、昼食を挟んで今度は科学と魔法陣、その後夕食まで、スライム素材の加工、夕食後翌日の朝食と昼食の準備を手伝わせる。


 ここまで終わったら、入浴、就寝。これを俺の休暇が終わるまでやらせた。


「ユウマ、お前は鬼か? お前の休暇とはこれか?」


「旦那様、あの時帰ると言えばこんな事にはならなかったのに……」


 鬼畜モードパート2の途中、二人はこれと似たような会話を繰り返していた。


 思い知ったか! 俺の休暇と趣味の時間を奪った報いだ。あはは


 それから数日後、鬼畜強化合宿フランクバージョンも無事終了したので、明日の朝、仕事復帰の為に俺の家を離れる。


 出発の朝


「それでは出発しますが、その前に約束通りこれを二人に進呈します」


 魔刀、「雪華せっか」をロイスに「雪月せつげつ」をフランクに渡した。


「お~~ これが魔刀雪月か、なんという輝き」


「私のは魔刀雪華ですか、まさしく雪の花のようです」


 この二本の魔刀の名前の由来は、「雪月花」をもじったもの。

 雪月花とは 雪と月と花。四季の自然美の代表的なものとしての冬の雪、秋の月、春の花。四季おりおりの風雅な眺めという意味。


 だからロイスが言ってるのはちょっと違う。まぁ本人がそれでいいなら良しとしましょう。


 ちなみに最後の一本の魔刀「雪風ゆきかぜ」は雪で統一したかったので、前世の本で読んで印象に残っていた、強運の駆逐艦「雪風」の名前を拝借した。


 この魔刀の配り方は魔力量で決めている。一番魔力量が少ないロイスがミスリルを一番多く含んでいる雪華、一番魔力の通りが良いからね。


 二人は新しい玩具を買って貰った子供の様に、出発しても魔刀を鞘から出したまま、オークやオーガの集落を自分達だけで壊滅させたのが自信になったのか、結界の魔道具も使わず、出てくる魔物を魔刀に魔力を通して瞬殺していく。


 やべ~~ なこれ、戦闘狂にしてしまったか? 魔物を切りながらニコニコ笑っているよ。商人なんだよね? 賢者候補ではあるけど、ちょっとやり過ぎたか?


 いつもなら二人のペースに合わせても、八時間もあればラロックに到着する。今はレベルも上がっているから、六時間ぐらいで到着しなくてはいけないのに、この分だと以前と変わらない八時間は確実にかかる。


 フランク達のレベルはベテラン冒険者と変わらないのだから、本来これ程簡単に魔境の魔物は討伐出来ないんだが、それを可能にしてる、身体強化と魔刀の威力は絶大。


 この先、身体強化と良い武器があれば、冒険者の実力が底上げされて、魔境の開拓も行われるかもしれないな。


 魔境の規模は今現在全く解っていない。俺が一週間探索してもどこまで出来てるのかさえ分からない。


 飛行船が完成したら、是非調査してみたい。この世界ではまだ飛行系の魔物にあったことはないが、ドラゴンがいる事は分かっているから、ワイバーンはいるかも?


 鬼畜モードのレベル上げを するようになって、魔境の奥に行くようになった時に、考えたことがある。この世界でスタンピートがない理由の一つに魔力の濃さがあるのではとね。


 魔力が濃いと魔物は強くなる。強くなると同時に魔力の薄い所では力が出せない。だから、強い魔物は魔境を出ないし、場所を移動しない。


 これが正解なら、ワイバーンなどの飛行系の魔物を見ていない事の理由にも成る。

 あの巨体の飛行には魔力を使っていると考えれば更に合点がいく。


 この考え方は多分間違いないと思う。魔石の大きさも魔境の魔物は大きい。

 魔石が大きくなればそれだけ魔力の量もいるし、濃度もいる。


 魔物の力の源が魔石ですからね。


 うん? ちょっとまて、これってもしかして人間にも影響する?


 魔力の濃い場所にずっといたら、体に変化がある?


 人間に魔石はないけど、全く影響がないとは言えないよな。


 ここにきて異世界あるあるはないよね?


 魔力が多いと寿命が延びるとか? もしくは魔力の濃い場所だと老化が遅れるとか?


 これはちょっとどころではない、物凄くやばい事に気づいたかも?


 これは調べる必要がある。


 1 高魔力の人の寿命 

 2 ダンジョンに長期間潜っていた人の寿命(ダンジョンは魔力が濃いか?)


 多分、今まで誰もこの事に気づいていないと言う事は、違いがあっても大きな差が無いと言う事だと思う。レベル差が10やそこらの魔力量の違いでは殆ど影響しないと考えればいい。


 ただ俺の様にベテラン冒険者よりも、レベルが50も違えば差が出る可能性は十分にある。寿命の差が20年くらいなら長生きですねで済むが、もし40~50年も違ったらそれは拙い。


 レベル差の魔力量だけでこの考察が出来るのに、濃い魔力の影響まで関係してきたら、俺の寿命が200歳なんていうのもありえる。


 産業がある程度進んで、賢者計画が完成したら、魔境に引き籠ろうと思っていたけど、出来るかな?


 それにこれは将来俺の家族になる人物にも影響する。


 これって俺に独身でいろという事?


 いやだ~~~


 そんな事を考えていたら、もの凄く落ち込んだ状態でラロックに到着してしまった。

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