第66話 次の一手は
法律施行から早三か月、特許も利用者が増えてきた。それでも増えてるのはレンガと耐火煉瓦が殆ど、燻製もそれなりだけど業者が元々そんなにいない。
レンガと耐火レンガは需要が元からあるのが解っていた、家の竃も作り替えられるし、鍛冶や陶器の工房からの依頼もある。
レンガの利用法もある程度はサービスで公開してるから、セメントもどき(たたき)の元に成る石灰石が見つかれば一気に広まるだろう。
ただ今の所新規参入より、元々窯を持っていたような業者が多い。
それでもグラン商会は大口契約を貰っているので特許はあまり関係ない。
その大口とは領都ゾイドの防壁づくり、正直何年掛かるか解らないような工事、レンガの足りない分の製造は外注にしても、左官職人が少ない。
スキルは無くても作業は出来るけど早さと仕上がりが全然違う。
それでも1年もすればスキル持ちも増えるだろうから、10年は掛からないだろう。
戦争も魔物のスタンピートもないのだから防壁何て必要ないように思うだろうが、これからは分からないのだ。
スタンピートは今まで無かったのだから起きる可能性はかなり低いが、戦争は分からない、この国は多分後10年もすれば世界から注目される。
その時に平和的に解決できれば良いが、中には強硬手段に出る国が無いとも言えない、だから防壁なのだ。
今まで戦争が無かったのは、どの国も団栗の背比べで侵略するうま味が無かっただけ、しかしどこかの国だけが突出すればその限りでは無くなる。
この話をグランからビクターに伝えてもらった結果、防壁を作ることになった。
王都でも作りたいらしいが、如何せん石灰石が見つかっていない。今全国の貴族に探させている。此処は辺境だからここから送るにはコストが掛かり過ぎる。
全国で探してはいるけど、出来れば王都に近い所が希望みたい。
見つかればどこでもこれからは産業になるから、王都から遠い貴族も当然探してる。
レンガ担当だったロイスは現在はお役御免に成っている。ラロックでの生産も落ち着いたし、大口の領都の方が主力になっているからロベルトさんに引き継いだ。
では今ロイスは何をやってるのか? 答えは……
俺の秘書!
だって俺一人では無理なんだもん。
そうそう他にも変わったことがある。フランクの店は現在フランクの店にいた従業員だけで廻している。どうしてもの時はグランもいるしローレンもいる。
そしてケインは店を出している。俺から覚えた料理で食堂を始めた。資金はグランが出し、条件は従業員の食事は無料、当然拠点に勤めてるメンバーも行くことがあれば対象に成る。殆ど行かないけど……
拠点にも料理人を3人雇った。拠点の従業員だけでも結構な人数がいるし、半数以上が寮生活だからこれぐらいは必要。昼食は全員分だからね。
化粧品関係の特許が一番利用が少ない。ガラスや陶器は陶器工房などが兼業しだしたのでそれなり、化粧品がなぜ伸びないか?
答えは簡単、男性の錬金術師が手を出さないことと女性の錬金術師が少ないから。
うちの錬金術師は経験者組は全員錬金術スキルが生えた。未経験者はまだだが1年以内だと踏んでいる。
5~6年も生えなかった人がたった3か月で生えたのだ。それも一番遅い人でだ。早い人はひと月も掛からなかった。
スキルが生えた人はポーションは止めて化粧品作りに回って貰った。
未経験者もスキルが生えたら、全員のパワーレベリングを考えている。
将来的に改良版上級ポーションまで作れるようになってもらいたいから。
王都の薬師ニックの息子エリックは2か月拠点にいたけど、薬師スキルも無事にはえ王都に帰りました。
途中帰りが遅いのでニックから手紙が来たが、エリックが此処で修業したいと返事を出して滞在を延長、俺のチートで現存する薬よりレシピを少し変える事で効果が上がる物を教えたり、毒も他と混ぜる事で薬に成る事を教えた。
実際使うには鑑定が必要、それもグランクラスの習熟度の鑑定が。
病名は解らくても、出来た薬が無害か薬の薬効が解れば使うことは出来るから色々作って臨床実験すれば新薬も作れる可能性はある。
ガラス工房はフランクが中心に頑張ってはいるが、辛うじて商品に成る程度の物が作れているだけ、しょうがないよね全員未経験者だから。
貴族や裕福な人に売る物は俺が作ってる。予約待ちにはなっているけど。
フランクの珪砂分離も今ひとつ。
陶器工房はラロックの工房と協力して生産してるし、そして拠点の工房だけで磁器の研究も始めている。
残るは鍛冶工房、鍛冶工房では俺も参加して馬車の改良に取り組んでいる。
一番初めに取り組んだのがベアリング、次に板バネとサスペンション。
試作品はもう色々出来ているけど、材質による強度の違いや乗り心地など完成までにはもう少しかかるだろう。
なぜ鍛冶で最初に取り組んだのが馬車なのか、それは流通と交通をもっと早く快適にしたいから。
リヤカーは一応少しづつ広まって来てるけど、まだそれほどでも無い、ベアリングがないから引くのにそれなりの力がいる。
人間が一人でそれなりの荷物を楽に運べてこそのリヤカーだからね。だから馬車なんです。両方に利用できる技術だから。
これが完成したら、領都まで今1日半掛かってるのが、下手したら1日掛からなくなるかも。
今の馬車ってベアリングが無いから凄く重い、だからスピードも出せないし、馬が凄く疲れる。早馬ほどは無理だとしてもかなり早くなるし荷物も多く運べる。それに車軸も鉄にすれば壊れにくくなる。
産業革命にはいつの時代でも流通の変革が絶対不可欠、大航海時代の帆船、近代の鉄道と車のように、だからこの世界で出来るのはやはり馬車でしょう。
馬車でも大量輸送は可能、四頭立ての馬車で大型の馬車を引くとか、カーブの無い道なら馬車の連結も考慮に入る。
これに将来街道も整備出来れば、今はレンガだけど石材の防壁も作れるようになる。だって現状だと石材は運べない。
大量輸送が必要になるのにはもう一つ大きな理由がある。
そう紙の輸送、紙はまだ本格的に生産していないが工房はもう作って俺が暇を見つけては作っている。
鉛筆も片手間で作ってはいる。しかしこの二つはまだ特許登録はしていない。
馬車が完成してから本格的に動こうとは思っている。紙もポーション並みに反響があるはずだから、これは世の中に出すタイミングが難しい。
馬車が完成したら、ロイスとフランクを暫く森の拠点でパワーレベリングするかな。
そうしないと今の現状だと俺が森から出てくるしかないけど、二人が俺並とはいかなくても半日ぐらいで移動できるように成れば、戦闘力は無くても結界の魔道具があれば問題なくなる。
俺は引きこもりたいのだ。 適度に……
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