第334話 もう直ぐ建国
王宮のお披露目はサラのお陰で、思惑とはかなり掛け離れた結果だが無事に終わった。後は予定通り異種族の居住区を作れば、取りあえず建国宣言は出来る状態に成る。
「お義父さん、建国宣言は各国に通達しないといけないんですか?」
「本来ならした方が良いとは思うが、この国は同盟国に囲まれているし、小国だから宣言すれば、自然に噂としてでも広まるだろう。それにエスペランスとグーテルとの関係はもう知れ渡っているから、気にしなくて良いと思うぞ」
「そうですね。それにもしこの国と関係を持ちたいなら、向こうから行ってくるでしょう」
俺としてはあまり関係はもちたくないが、こればかりは外交だから全く持たないとは行かないだろうな。特にこの国に飛行船があるのは知られているからね。でもそれもフランクに丸投げすれば俺は気にしなくて済むかもしれない。もう作り方はフランクも覚えただろうから、フランクが商売として売れば良い。まぁ売り先は考えるようには言うけどね。
あぁ~~、それも厳しいな。良く考えたら、飛行船の離着陸にはロープを引く人でか身体強化が使えないと運用出来ない。それを飛行して戻るだけなら良いが、何処かに着陸しようと思えば、身体強化で飛び降りなきゃいけないし、ロープを引く力か巻き取り機が無いと出来ない。
「ロベルト、建国祭は何時することに決めたの?」
「エスペランス王国とグーテル王国、フリージア王国の国王ご夫妻が到着してからになりますから、三週間後でどうでしょうか?」
「三週間後というと、二月の終わり頃か。それなら区切りの良い三月一日にしよう」
「そうですね。三月一日なら春の始まりでもありますから、建国に相応しいですね」
確かもうエスペランス国王達は出発しているそうだから、後二週間もあれば到着す筈。旅程が遅れても余裕はあると思うから、これで決定としよう。ただ、この旅程の途中にある共和国がどう出るか気にはなっている。
一国の王が国を只通過するだけ何て普通出来ない。当然共和国に表敬訪問しなくてはいけないし、どういう目的かも言わなければ行けない。その目的をフリージア王国への訪問と誤魔化すことも出来ない。何故なら国王一行には異種族の団体も同行しているからだ。
「共和国がどう出てくるかな? ロベルトはどう思う、普通に通過させてくれるだろうか?」
「そうですね……、賢者様方や学校の教師の方々の話では神聖国、帝国、共和国の三か国とは上手く行っていないのは聞いていますから、簡単にはいかないように思います。下手すると同行するとか言いかねません」
そこなんだよ。俺もそれを心配している。直接的な事はあまりしてこない国だが、商売になると思うと貪欲だからな。特に飛行船の事を知っていれば必ずこの国と接触を図りたい筈、でも現状接点がないし、神聖国のように情報を持っているとも思えないから、それを知る為にもエスペランスに同行させろと言い出しそうなんだよな。
只、招待はしていないから、勝手に来ることも出来ない。来るなら必ずこちらに一度は了解を求めなければいけない。
「もし、共和国が了解を求めてきたら断れると思う?」
「その辺の事は私には判断出来ません」
そりゃそうか、ロベルトがいくら優秀でも、元は農家だからな。そうなるとここはやっぱりお父さんに聞くしかないか。国同士の儀礼なんかは貴族じゃないと分からないからね。俺との話が終わって、離れていたお義父さんにもう一度近づき聞いてみた。
「お義父さん、陛下たちが建国祭に参加するのに、共和国を通過するので、もしそれに共和国も同行したいと言ってきたら、断れますか?」
「あぁそれはわしも気になっていた。招待はしなくて良いと言ったが、参加を希望されたらどうすべきかな」
「そうなんです。希望されたら外交儀礼上断れませんよね」
「断れんな。戦争をしてる国でもないんだから、それをすれば国が無礼を働いたことに成るから、悪評を立てやすくなる」
悪評ぐらいは問題ないが、ユートピアだけの問題じゃない。当然同盟国すべてに色んな形で迷惑を掛ける。特にフリージア王国が被害を被りやすい。この国が発展して交易を始められれば、それもなくなるが、現状はいろんな面で一番困る状態に成りやすい。
「一応そうなったら、拒否はしないようにします。ただあまりに横暴なことを言ってくるなら、俺にも考えがあります」
「ユウマ君、考えがあるのは良いが、神聖国のような事はあまりしないでくれよ」
「勿論分かっています。商売絡みで向こうが色々やって来るなら、こちらも商売で対抗します」
近いうちに大型の飛行船も作る予定だから、これでフリージア王国の貿易をうちが引き受ければ、共和国は通行税やフリージア王国の品も一切入らなくなるから、物凄く困る筈。
「ロベルト、建国祭の日時を正式に国民に知らせてくれる。その日が近くなって天気が悪いようだったら日にちの変更を知らせて。君達の気象スキルならそれが出来るでしょ」
「はい、お任せください。三月は元々雨は少ないですが、期日が近づいたらもっと正確に予想して通達します」
俺が気象スキルの使い道を示してやったからか、その時のロベルト達の顔に幾分喜びが現れていた。天気を当てるスキルは本当に役にたつから、もっと自分のスキルを誇って欲しい。
皆への城のお披露目とこれからの予定について話が終わった翌日から、俺はまたまた土建屋になり、異種族用の居住地を建設していった。その他にも今後の為に先ずはこの王都エデンに下水処理を兼ねて、スライム養殖場を作った。
「これが噂に聞くスライム養殖場ですか?」
「どんな噂かは知らないけど、この養殖場を全部の町と村に作る予定だからそのつもりでね」
「噂通りなら、これでレベル上げをしろという事ですね」
「あぁそういう噂なんだ。それもあるけど、スライムは色んな物に使える万能素材だから、これからもっと沢山必要になる。特にここのスライムはレベルが低いからレベル上げにもかなりの量が必要だから、ミル村側にも大きな物を作る予定だよ」
「そう言えば最近フランクを見ていないけどロベルトは知らない?」
「それなら、ご家族でラロックの魔境に行かれていますよ」
はぁ~~、俺に一言も言わずに出かけているのかよ。それも勝手に飛行船を使って。まぁ使って良いと言ったのは俺だから、文句は言えないが、それでもせめて出掛けるぐらいは言って行けよな。
「それじゃ他の賢者は?」
他の賢者も時々しか見かけないんだよね。それもはっきりとグループに分かれているようにそのグループだけ一定期間見かけない。
「他の賢者様方も交代で出かけていらっしゃいますよ。何処に行かれているかは知りませんが?」
段々と皆が俺の知らない行動をするように成って来た。これは良い事なんだが、やはり何時も行動を共にして来た俺としては少し寂しい物がある。
「そうかこっちも似たようなことをしているのかな? まぁそれは良いとして学校や病院の方はどんな感じ?」
「学校ではまだスキルの発現はありませんが、先生の話ですと近いうちには第一号の生徒が出そうだと言われていました。病院は目下の所殆ど稼働していません。殆どポーションで治る怪我ぐらいしかありませんから」
病院が暇なのは良い事だけど、これまではそうじゃなかった。兎に角長い過酷な生活を送っていたせいで、体に何処か病気を抱えている人が多かったから、開業当時は毎日手術があるくらい忙しかった。
「それだとニックは何をしているんだ?」
「ニック様だけは何か研究をされているようです」
「ニックだけ? 従者は?」
「従者の方は他の皆さんとご一緒してるみたいです」
あぁこれで皆がしている事が大体分かった。フランク一家が魔境に行っているなら、他のメンバーは全員では人数的に無理だから交代で言っているんだな。特に従者のレベル上げが目的だ……。
ちゃんと考えているよな。何をするにも魔力量が足りないと何もできないし、これからの事を考えればレベルは高い方が良い。それを自分達の経験から判断したんだから、凄い事だ。
そんな生活が二週間と少し過ぎた頃、とうとうエスペランス国王一行が到着した……。
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