第333話 城のお披露目

 役人の登用試験も何とか無事に終わったが、建国宣言、建国祭に向けての準備がいよいよ佳境に入って来た。


 呼ばないと絶対にひがまれるから、エスペランス、グーテルの国王は招待したんだが、案の定物凄い大所帯で来るらしい。それも異種族の移住組までも引き連れてね。それだけならまだギリギリ許容できたが、フリージア王国の国王夫妻も引率してくるというから、困った。


 まぁビーツ王国の国王が参加しないだけ、まだましだが……。


 こうなると、先ずは移住組の住居だな。予定通りに三か所に分けて作るけど、本当に大丈夫だろうか? 本で読んだ程度にしか種族特性は知らないから、実際に来る人の希望に適っているかは来てからしか分からない。


 ただ辺境伯領のゾイドで見た異種族にはそんなに種族特性があったとは思えない。まぁ町に出て来ている人達だから、そういう環境にもう慣れているのかもしれないが……。


「サラ、また少し家を空けますね。今度は泊りになるので後はお願いします」


「あなた、それは良いですけど、城の事は皆さんに話さなくて良いんですか?」


 あぁ、それもあったな。いきなり建国宣言の時にお披露目は厳しいよな。一応、関係者というか、俺に近い関係の人には先に見せて置いた方が良いよな。特にお義父さん達や、グラン一家、賢者、ロベルト達、議員、役人、兵士……。あれ? 結構な人数だな。


 これは確かに拙いかも? これだけの人が知らない何てあり得ないよな。それもフランクとロイスだけが知っているのはなお拙い。


「ちょっと行って来ます」


「その方が良いですよ」


 どう考えてもあの城は度肝を抜くからな。事前に知っている人を増やしておかないと、建国宣言の時に皆が動けなくなってしまう。特に ロベルト達、議員、役人、兵士は城が職場だ。


 ロベルト達に公開する人たちを集めて貰ったが、急な話だったので、みんなぶつくさ言っている。


「ユウマさん、急に集まれと言われても研究の段取りもあるんですから、その辺を考えて下さい」


「そうだぞ、皆それぞれやることがあるんだから」


 特に文句を言っているのは賢者組なんだが、この人達も良い意味で成長したからこういうことを言えるようになった。今までならどちらかと言うと俺が指示を出したり、ヒントをあげないと動けなかったのが、今では何でも自分達で考え行動している。


「まぁまぁ、そう言わず面白い物を見せますからそれで勘弁してください」


「ユウマ君、その言い方も変えた方が良いですよ。国王に成るんですから。それに皆さんも、これからはその辺に気を付けた言葉遣いにしてください。下で働く人に示しがつきません」


「そうでしたね。済みませんでした。以後気を付けます」


「お義父さんのいう事も正しいですけど、賢者はまた別ですから今まで通りでお願いしたい。そうしないと気軽に研究の話も出来なくなりますから。ただユートピアの国民に対しては態度を変えるように努力します」


 前世から典型的な庶民の俺がいきなり国王風に話せと言われても難しいが、努力しないと、威厳が無くなり、国民がついてこなくなる。封建制である以上それに慣れなくてはいけないのは事実。それだけじゃなく、王が嘗められれば国民も嘗められるから、小さなユートピアは大げさなぐらい強く見せないといけない。そうしないと他国から嘗められるからね。


 そういう意味では今から皆に見せる城は効果的だろう。ついでに飛行船も建国宣言に登場させれば、更に効果が上がるかも。


「そういう話はもう良いでしょ。さぁこれが俺の、いや、ユートピアの王宮です!」


「「……」」


 ここまでの道中、みんなそれぞれで会話していたから、近くに来るまで殆どの人が気が付かなったようですが、それでも一人二人と巨大な城に気づき始めると、サラと同じように、開いた口がふさがらない状態で、足だけは動かして城に近づいたが、最後の俺の一言で全員が立ち止まり固まってしまった。


「ユウマ、流石にこれは想像していなかったぞ。なんだこの大きさは」


 フランク達が見たのは外壁が出来て王宮の一部が出来たぐらいだったから、まさかあれがほんの一部だったとは思わなかったんだろう。完成した城の大きさに驚愕していたが、今はそれに答えるより先に言わなければいけないことがある。


「ロベルト達や議員、役人、兵士の諸君らの職場だから良く見ておくように。後で中もあんないするからな」


「陛下、私達はユートピアの国民になれて幸せです。こんな偉大な物を御作り成られる国王の国民になれたのですから。皆もそう思うよな!」


「「ははぁ~~」」 「はいな~」 「おう」 「はい」……。


 この前の面接の時のような、奇妙な返事が混じりながらも、ユートピアの家臣たちは片膝をついてこうべを垂れた。


「言いたいことはあるでしょうが、今までの俺を見て来た賢者やグラン一家などは分かるでしょ。これが俺です。今から中を案内しますからついて来てください」


 そう言って俺は、城の中をこれでもかというぐらいに隅から隅まで案内をして、皆の度肝を抜き続けた。


「大体これで全部です。どうですこの城は?」


「どうもこうも無いよ、こんな城見たことも聞いたこともない。これ程の設備がある王宮をわしは知らん」


 いやいや、お義父さん。お義父さんの屋敷も大概ですからね。国王が住みたがったぐらいですから。


「ユウマ陛下、王宮の裏の設備は当然私達も使わせてもらえるんですよね?」


 いきなり変な呼び方になったが、ミランダがそう聞いてきた。


「いいえ、駄目です。此処は俺専用です。まぁ王妃のサラは大丈夫ですけど」


「それはないだ、でしょう。ユウマ陛下」


 フランクまで変な言葉遣いと呼び方になっている。


「駄目なものは駄目です。その代わり魔境の俺の家の設備は自由に使って良いですよ」


「それはないんじゃないだ、でしょう。家族で当分ここに滞在するんだ、ですから」


「フランクさん、気持ち悪いし、慣れないなら今まで通りここでは話して良いですよ」


 変な呼び方はするは、変な喋りもするフランクに普通に話せと俺から助け舟を出してやった。一番付き合いの長いフランクがそう簡単に言葉遣いを変えれるわけがないし、聞いている俺も気持ち悪くてしょうがないからね。


「確かにそうですね。でもフランクさん、レベル上げもしなくてはいけないんですから、魔境の方が都合が良いですよ」


「でもそれだと飛行船がいるじゃないか」


「あぁそれなんですが、皆さんに報告していませんでしたが、現在飛行船は三機あります。知っている人もいるかも知れませんが、一機増やして今は三機です。ですがこれもまだ増やす予定です。ですからこれからは自由にある程度皆さんは使えるように成ります」


「それは本当ですか? それなら島に行き放題、真珠が採り放題……ウフフ……」


 不吉な言葉と気持ち悪い笑いを付けて、質問と答えを一緒に言ったのは真珠の研究がしたいエマ。他にも賢者はそれぞれの研究に飛行船が使えると想像したのか、全員ニマニマした笑みを浮かべていた。


 あれ? 賢者がああなるのは納得できるが、何でお父さん達もニマニマしてるんだ? まさかまた自分達だけで魔境に行こうなんて思っていないよな。流石にそれはまだ無理だ。ラロックの魔境ならいざ知らず。あぁそのつもりなのかも? だってお父さん達の屋敷はラロックにあるからね。隠居した身とは言え、家の主が長く屋敷を離れるのは拙い、それなら飛行船でラロックにちょくちょく戻れば良い。


 でも俺の計画にお義父さん達の分の飛行船は入っていないんだよな。今それを言うのは拙いから、当然数に入れていますよという顔をしておこう。


 そんな事を考えていたら、そこにサラが急に現れた。


「あなた、さっきから聞いていましたが、何、人間が小さい事を言ってるんですか。皆さんに此処の設備を使わせてあげれば良いじゃないですか! あんな大きなプール一人で使っても面白くないですよ私は……」


 サラ、あれは俺達二人が使うのであって、サラが一人で使う訳じゃないんだよ。二人だけのイチャイチャタイムの為のプールなんだよ。そこは察して欲しいんだが……。


 結局最後に登場した、サラの鶴の一声で、俺の目論み(新婚イチャラブ計画)は灰燼に帰した。 サラだけで無くその周囲の人達も含めて貴族的な価値観と言うか、子作りと言う具体的な行為には積極的なんだが、恋愛とかイチャイチャすると言う子作りに至る過程や雰囲気づくりには興味が無いというか、思考がそこに行かない。



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城のイメージ画像を近況ノートに添付しております。良ければご覧ください

「毎日が戦いです^^ ストックが3話に成ってから……。」

https://kakuyomu.jp/users/musasi926/news/16818093074883975370






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