第123話 やべ!
大使の視察が色々ありながらもなんとか終了して、ラロックにひと時の平穏が戻って来た。
俺の休暇はまだ予定の半分を消化したところ、物作りが楽しくて他人から見れば休暇か? と見える状態ですが、本人が趣味だと思っている以上どうしようもない。
特に今俺が取り組んでいるのが飛行船の製作だから、本人は楽しくてしょうがない。
飛行船、建造用兼倉庫の建物まで作ってしまっている。
ここまで来るまでに、飛行船のミニチュアを造る事から初めて、ヘリウムの代替えガス、この世界特有のオーキスというガスを製造して、重量軽減魔法を造って試行錯誤した。
オーキスは何から作れたと思います?
そうご想像通り、万能生物スライムからです。
スライム素材を燃やすと発生するガスがオーキスなんですよ。
鑑定で検索した時にはもうその結果に呆れて驚きも無かったですね。
これ程ご都合主義で良いのか? 神様って地球の歴史を参考にこの世界を作っていない?
地球の歴史のヒンデンブルク号の爆発事故を参考にしてるよね、水素の危険性を考えて、ヘリウムにしたかったけど、この世界では燃料形態が違うから天然ガスの副産物は使えないから、スライムに別のガスを仕込んだって感じかな?
甜菜の代わりがロームだったしね。この考え方からすると、飛行機を作るとしたら、燃料は魔力に成るんじゃないかな?
石油や電気の代わりが魔力なんだから、そう考えるのが自然だよね。
魔力で足りないところは魔法で補う、今回のようにね。オーキスで足りないところは魔法で補っているから。
スライムって他にも利用法があるんじゃないかな?
ミニチュアで上昇下降させるにはどういう仕組みにするか、推進力はどうするか、方向はどうやって変えるか、重量に対して気球の部分はどのくらいの大きさがいるかなど、実際に製造する前に色々思考錯誤してみた。
そして今現在、気球部分の骨組みを作っているところ。
この骨組みの材料なんだと思います?
今回もまたスライムです。スライム素材に炭を混ぜて加熱、それを型に入れてプレスすると、カーボンもどきが出来ます。
異世界のご都合主義万歳です! というか神様がそう仕組んでますよね。
カーボンもどき、これも物凄く利用価値ありですね。だけど今、世の中に出して良い物か?
これで自転車のフレーム作ったら軽いよね。リヤカーにも使える、補強は必要でしょうが…… これは流石に文明を進め過ぎだよな。
それでも趣味の為なら平気で使うのですが……オ・レ!
「ふぅ疲れた。今日も趣味全開で遊んだな」
そんな独り言を言ってる時、何やら人の叫び声が?
「ユウマ~~~ 何処にいる~~」
この声はフランクの声だな、どうしたんだろう? 病院で何かあったのかな?
緊急時には呼びに来てくれとお願いしていたから。
「ここにいますよ~~~」
何も考えずそう返事してしまった俺は……! あ! やべ! 拙い! 超拙い! こんなの見られたらいい訳のしようがない。そう思った時にはもう時すでに遅し。
飛行船を作っている建物の入り口にはフランクとロイスが口をあんぐりと開けて立っていた。
まだ骨組みとはいえ、それなりの大きさがある謎の物体、恐竜の骨格標本のような見たことも無いものがあれば普通驚愕する。
「ユウマ! そ! それは一体なんだ? 魔物の骨か?」
「ユウマさん! 今度は何を作ってるんですか?」
こうも二人の反応が違うと答え辛い。片や壮絶な勘違い、もう一方はある意味冷静に根幹をついて来ている。
「う~ん、まずこれは魔物の骨ではありません。そしてこれの正体を知ると夜も眠れなくなります」
フランクにあてた返事はそのものズバリだけど、ロイスへの返事はおもいっきり誤魔化しに掛かっている。
「嫌々、何か解らない方が気に成って眠れないぞ」
答えが解ったフランクは一気に冷静に成り、誤魔化そうとしてる俺にそうはさせないと反論してきた。
「これは~~ 聞きたいです? 聞いたら最後もう逃げられませんよ。地獄のそこまで付き合ってもらいますよ」
あれ? 地獄ってこの世界の人に通じるのか?
「地獄とはなんだ?」
やっぱり通じないのね。そりゃそうだ宗教が違うもの……
この世界の宗教観は知らないから、どう説明したもんか?
「俺は神様がいるところが天国、神様に罰を与えられた人が行くところが地獄と呼んでいるんですよ」
わぁ~ やべ~~ 宗教観を俺が作っちゃったよ。
この世界に新しい宗派が生まれた瞬間でした。そんなナレーションが入りそうだけど、断じてそんなつもりはない。
え~い、こうなったら正直に話そう。賢者計画はスタートしてるんだし、オーバーテクノロジーの家電なんかはローズたちにも見せているからな。
家電と違って刺激が強過ぎるとは思うがしょうがない。
「しょうがないな、でも本当に戻れなくなりますよ。人生変わっちゃいますよ。それでも聞きます?」
二人は声には出さないが唾をごくりと飲み込むと首を縦に振った。
「これはね、空を飛ぶ乗り物。どう凄いでしょ!」
ユウマの答えを聞いた二人はきょとんとして反応が無い。
「何バカなこと言ってるんだ。そんなこと信じられるか」
「流石にユウマさん、それはないですね」
嫌々、ちょっと待てよ、正直に答えたのに信じない?
「本当ですよ! 本当に空を飛ぶんです!」
全く信じようとしない二人に腹が立ったので、証拠を見せる事にした。
「ほら! これをみてください」
二人に見せたのは製作前に実験や試行錯誤をするのに使った飛行船のミニチュア。
そこにあったのは種も仕掛けも無いのに空中に浮いている小さな物体。
「な! なぜ? 浮いている」
「糸はどこにあるんです?」
「触ってみたら俺の言ってる事が理解できますよ」
二人が色々確認をしてる時、俺は確か文明を進め過ぎたら駄目だとか言って飛行船なんかもってのほかだと、言っていた事を思い出していた。
ほんと駄目だね~~ このままだといずれ車や飛行機なんかも作っちゃうかも?
ラノベじゃないんだよ。現実世界、いくらご都合主義だと感じても自重するところはしないと。
自重? それっておいしいの? とかいうセリフが出て来そうだが、実際自分が体験してみると、それも本当の事だと思える。
チートがある時点でご都合主義なんだよね。それでも世界の仕組みの一部であって、特別なのは他の人より成長が早い事。創造魔法だって魔法はイメージと殆ど変わらない。
何を言い訳してるんだか、自重、自重、忘れるな自重……
暫くミニチュアと格闘していた二人が戻って来て、やっと俺の話を信じてくれた。
信じたのはいいが、ここからがもっと大変だった。
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