第164話 怒られた

 屋敷のお披露目で仕返しも済んだので、後は自分たちでどう使うかは決めて貰うよう頼んで、俺達は拠点に戻った。


 もう一仕事残っているからね。それは研修組をどうするかです。


「ユウマ、お前は何か考えているだよな? どうも落ち着きすぎているからな」


 流石はフランクだ。付き合いが長いから、俺の態度で先読みしてきた。


「フランクさん達には言っていなかったけど、来期から学校も変えていこうと思っています」


「学校? それが屋敷の事や研修組とどう繋がる?」


 そこで俺は学校の変革や土魔法士の事などをフランクに説明した。


「はぁ~~ そういう事は早く言えよ。拠点の変革の話を話し合った時には始めていたんだろう?」


「そうですね、始めて言いました。始めていたから報告を忘れていました」


 計画の段階だといつも色々考えているから覚えているけど、実行してるものは言い方は悪いがもう終わったことになっているんだよね。俺の場合……。


 そうなるから、報告を忘れる。今まで殆どが事後報告だったのはこれも一つの原因。


「お前な~ 前にも言ったよな。始める前に報告しろと! お前は何度言われれば分かるんだ? これからはサラさんに定期的に俺に報告して貰うようにしないと駄目だな」


「フランクさん、流石にそれは人を馬鹿にしていません?」


「お前が出来ないんだから、仕方がないだろう。嫌なら自分がしっかりすれば済むことだ」


 ここまで言われると流石にぐうの音も出なかった。俺の悪い癖の一つだからな。


「しかし、研修組はどうするんだ? 学校の変革は来期からだろう?」


「それなんですが、俺も急な話ですから、これと言って良い案はないんです。ただ一つ考えているのは、フランクさん達か見習いの人達に教師役になって貰うのはどうかなと思っています」


「それは全員でという事か?」


「全員ですけど、一度にではないですよ。交代制です。この時は専門分野の講義をしてもらいます。日頃は専門外に重点を置いて勉強してるでしょ」


 これも結果的に賢者計画の一つと言える。これからは表に出て人に教えるのはこの人達がやるんだから、これもいい勉強になる。


 実際フランク、スーザン、ロイスの三人は人に教えたり、説明することで大きく成長してるからね。


 見習いの人達も国に帰れば、それが普通になるのだから、損になることは決してない。


「取り敢えずは計算力を全員につけさせてから、それぞれに必要な知識を教えて行ってください。やり方は任せますので、皆で話し合って決めてください」


「その中にはいつも通り、サラさんは含まれていなんだな?」


「はい、勿論。サラとは別にやることがありますので……」


 そう当たり前のように答えたら、フランクは呆れたような顔で俺を見ていた。


「忘れるところだったが、まさかとは思うが学校の事スーザンさんには話してあるよな?」


「勿論、フランクさんに言っていないのに、スーザンさんに言ってるわけないじゃないですか」


「ば! 馬鹿野郎! さも当然のように言うな! スーザンさんは仮にも国から送られている人だぞ。国立の学校の事を報告もなしに変えていい訳ないだろう!」


 わぁ~~ おもいっきりフランクに怒られた。俺って38歳まで生きていたのに、今更ながら良くこれで仕事出来ていたよな……。


 あの当時は、毎日仕事に追われ、上司と部下の板挟みだったから、精神が休まる時間がなく、張りつめていたから、報告を忘れるとか無かったのかもな。


 今は忙しくても楽しいから、精神的に余裕があるので、どこか抜けてるのかな。これをやらなきゃじゃなく、これをやりたいが多いから……。


 これじゃ、やっぱりサラに秘書のように管理して貰うしかないかな?


 翌日、フランクに怒られたので、直ぐにスーザンに報告して、来期の学校の変更を国に報告して貰った。勿論、この時にスーザンにもこってり怒られましたよ。


 そしてフランク同様、サラに管理して貰えと言われました。我ながら本当に情けなかったです。


「サラさ……、申し訳ないんですが、俺のスケジュールとか身の回りの事を管理して、フランクさんやスーザンさん等に報告入れて貰えます?」


「もう~ まだ、さんを付けそうに時々なりますね。気を付けてください。その件でしたら、フランクさんとスーザンさんからもうお願いされていますから、大丈夫ですよ」


 何と信用のない事か、俺が言い忘れるとでも思ったんだろうな。もう依頼済みだったよ……。


 精神的には前世と合わせて52歳なんだけどな。それが20歳のサラに管理される。見た目的には24歳だから問題ないけど、やっぱり来るものがあるな。


 こういう面でも多少は精神が肉体に引っ張られているのかな?


 年の事を考えていたら、物凄い事を思い出した。少し前にジーンに頼まれていたことがあった事を……、これも忘れていた……、やばいよ、物凄く大事なことなのに……。


 これは絶対忘れていたとを気づかれないように、何食わぬ顔で準備してやらなきゃ。


 これは忘れては絶対にいけない事でした。だって人の人生に関係してることですから。


 この前、ジーンの息子のボスコが15歳になり成人したから色々頼まれたんだよね。出会った時は10歳だったけど、俺が転移してきて6年目なので、もう大人なんです。


 長女のキャロラインも13歳、確か彼女ももう直ぐ14歳だと言っていたな。フランクの息子のキースも10歳で今年11歳なる。


 子供の成長って本当に早いな。その分俺も年を取っているけどね。


 それはさておきジーンに、ボスコの将来について頼まれたのは、商売人として身に着けるべきこともあるけど、グラン商会がさま変わりしてしまったので、出来たらフランク達のように教育して欲しいという事だった。


 これまでも一応は英才教育として、読み書き計算は教えているし、母親たちがレベル上げもしてる。それに子供たちは三人とも拠点が遊び場だったから、毎日のように色んな職業の人と接していたから、遊び半分でも基本的なことは覚えてしまっている。


 この三人こそ本当の意味で賢者の卵なんだよね。だからこそ、敢えてスキルが発現しないように仕向けていたぐらいだ。


 成人前の人にスキルが発現しても良いのか分からなかったんだよ。だってこの世界の人は成人してから、弟子入りしたり職業に就くから、それまでスキルを持つ人がいなかった。


 スキルも魔法だから、子供達も生活魔法が使えるんだから、子供でもスキルが発現しても問題ないように思うけど、何が起きるか分からない以上出来なかった。


 ボスコが成人したのが良い機会だし、子供達全員にスキルを発現させてみるか?


 肉体的にはキーンが少し心配だが、それ以外は問題ない。この世界は15歳が成人だから、精神的には10歳を超えれば、思考もしっかりしている。


 平民なら7歳になれば家の手伝いをするのが常識だからね。


 しかし、このラロックではそれが無くなってきている。好景気で収入も多くなり、子供たちを労働力にしなくて済むようになっている。


 そろそろ小学校を作るべきかな?


 こりゃまた忙しくなりそうだし、色々揉めるな……。


 子供たちの教育はサラに任せよう。やり方は俺が指導すれば問題ないだろう。


 教科書はサラに読ませている本を簡略化すれば良いだろう。バレないうちに大急ぎで作れば無問題……。














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