第319話 法律
国の根幹は法律と言っても過言じゃない。だって国王を決めるのも法律だからね。国王の子供が後を継ぐというのも法律で決められているから、そうなるのであって。決まり事が無ければ誰でも成れてしまう。
貴族だってそうだ。貴族の爵位だって法律で決められているから成り立っているんだよ。明文かされていなくても決まり事はある。ただ王政の場合は法があってないような場合もあるからややこしい。封建主義とはそういう物だからな。
「お義父さん、それぞれの国で法律は違うと思いますが、元はどうやって作ったんですか?」
「それは難しい質問だね。元々国が無い所から始まっているから、法律の元はないんだよ。簡単に言うと一つのグループの掟がどんどん増えていって、最終的に法律に成ったという感じかな」
グループの代表の後継者はグループの家族からというのも一つの掟というか決まりを作ったのか、自然とそういう物だとなったのか、実際は分からない。その背景にあるのが政治力なのか物理的力なのかで違ってくるからね。帝国なんかは力によるリーダーが始まりだろうし、神聖国は治癒魔法という力が始まりだけど、今の形に落ち着くまでにはリーダーの交代もあったのかな?
そういう意味では神聖国は特殊だな。前世の教会の教皇は交代するけど、今の神聖国は世襲だ。宗教を背景に今は持っているけど、始まりは力だからこうなったんだろうな。
共和国も元は王制だったと聞いているから、商人たちのクーデターでもあったのかな?
話がそれてしまったが、今のユートピアで法律を一から作るのは先ず無理だよね。それなら何かを参考にするしかないけど、以前考えた日本のような天皇制で議院内閣制が一番良いんだけど、それも今の現状では俺がリーダーシップを取らないといけないから完全に同じことは出来ない。
「お義父さん、グーテル王国には法律を管理してるような役人はいるんですか?」
「いるよ。新しい法律を作ったり、変更したりしたら、それを記録したり、国民に知らせる役人がね」
前世でいう法務省なようなものはあるという事だね。それなら先ずはこの役目をする役人を集めるのが先決かな。その人達と俺で協議しながら国の前世でいう憲法、法律の元を作るしかない。そこから細かい法律を決めて行けば国の法律が出来るかな?
マジに手探りだけど、これしか思いつかない。この分だと建国宣言は出来ないかな? いや、取りあえず宣言だけしてそれから役人を集めても良いのか?
わぁ~~~ もう頭がこんがらがって何から手を付けたら良いのかさえ決まらない……。
「あなた、法律は後回しで良いんじゃないですか? 今は兎に角ユートピアが国に成るという事を皆さんに知らせれば」
そうか! 先ずは国に成ると宣言して、その国の王が俺であると宣言すればそれだけで今は良いのか。現状法律はないけど、善悪という道徳はあるんだから、それ程このユートピアでは混乱は起きないな。
「サラの言うようにそれで行こう! ただ役人は試験で選抜する事と、各村や町のリーダーは選挙で決める事は一緒に発表する」
「ユウマ君、役人を試験で決めるのは無理じゃないかい? そこまでの教育を受けていないだろうここの住民は」
「勿論それは分かっています。読み書き計算は出来ないと困りますからね。だけど俺が考える役人は、一番がこの国の為に役立つ人かですから、試験もそれを見ます。試験の問題はこの国をどうしたい、どう出来る、この二つだけです。答えは文章でも良いし口頭でも良いです。読み書き計算は後からでも勉強できますから」
俺の狙いはこの国の役人は役人に成るのが目標ではない人。この国をどうにかしたいから役人になるという、そういう人が欲しい。役人に成るのが目標だという人は権力が欲しい人だ。勿論権力が無ければ何も出来ないが、志を大事にしたいというのが一番だから試験の問題があの二つなのだ。
「建国宣言はどういう風にやれば良いですかね?」
「そうだね……、住民全部を集めるのは無理だから、普通は王都のような場所で宣言を貴族の前でして、それを王都の住人に知らせる。貴族は領地に戻ってそれを住民に知らせるというのが建国宣言に限らず現状の国がそうしてるかな……?」
このユートピアは王しか決まっていない。いや王も正式には決まっていないのか? 宗主だから王に成れだからな。そうなると俺が王に成るという事を住民が認めたらその時点で建国宣言したことに成るのかな? 先ずはそれをしてからどんな形でも宣言をすれば建国宣言をしたことに成るよね。
建国宣言は形、形式上の物で、本質は俺が王として認められるかだから、先ずはそれから始めよう。
翌日早速代表のロベルトに会いに行って、副代表の二人に連絡を取って貰い此処に来てもらう様に頼んだ。今はこの三人が実質ユートピアを動かしているから先ずはこの三人の承諾を貰わないと何も始まらない。
俺がこのように悩み苦しんでいる時に、カルロス達は休養も取れたので、ユートピアをフランクの案内で視察していた。基本的にラロックと変わらないので、見る所と言えばガルスの養鶏場と造船所だけだから直ぐに終わってしまったが、そこからが大変だった。
「それは本当かね? フランク男爵。それが事実なら、世界の成り立ちも分かるし、世界が変わるよ」
「全てが完全に解明された訳ではないです。推測も交えての話ですから。ただミスリルという金属の特性は間違いありませんし、島に鉱脈があります」
「また、とんでもない物を……。どうすれば良いんだ?」
「カルロス様、先ずは陛下とご相談ください。ただ私の意見を言わせてもらえば秘匿が良いとは思います」
これは俺がフランクに頼んで、魔境の魔力スポットの事やミスリルについてカルロス達に報告して貰った時の会話。一言一句同じではないが、フランクから後から聞いた内容ではこんな感じだった。
これぐらいで俺は大変何て言わないよ。この後が問題だったから大変と言っている。
当然、魔力スポットの話も重要な事だけど、この二人にとってはやはりミスリルの方が特に重要で、ミスリルについての質問が尽きないし、実物をフランクが見せたものだから、更に食いつき、やれ魔刀の実演をしろと、魔物狩りにまで行かされたそうだ。
そこで終ればまだ良いが、今度は当然のように二人は欲しいと言い出し、フランクに懇願したが、これを作れるのが俺だけだと言われたので、一度は諦めそうになっていたらしいが、今度は俺に頼んでくれとフランクに懇願したそうだ。
いやいや、男爵に辺境伯と一国の宰相が懇願するっておかしいでしょ。まぁ男爵と言ってもフランクの立場は賢者でもあるから命令し辛い事は確かだから、あってもおかしくはないが……。
結局、フランクが最終的に折れて、俺に頼んでみるけど必ず作って貰えるとは限らないという事で、その場はおさまったそうだ。良くこの状態で直接俺に頼みに来なかったなと思ったからフランクに聞いたら、直接行ったら島には連れて行かないと脅迫したそうだ。
脅迫というのは言い過ぎかもしれないが、二人の希望に島の視察も入っていたから、それを盾に取った、交換条件かな……?
それにしてもカルロスは良い年だし、お義父さんみたいな脳筋じゃないんだから、必要ないだろうと思ったが、フランクから聞いた話では、お義父さんの引退生活が羨ましくて、国王と共に引退してラロックに移住を考えているから、体を鍛え出したらしい。そのせいで魔道具のように良い武器にまで執着するように成ったようで、この騒ぎに成ったそうだ。
こんな事をフランクから聞かされたから、この二人が此処にいると俺の仕事が進みそうにないので、取りあえず、フランクとロイスに頼んで、二人を島に連れて行ってもらうことにした。
ついでにフランクにはミスリルの調達も頼んである。最終的には二人に魔刀は作ってやらないといけなくなるだろうから、ミスリルが多めに必要だからお願いした。
だってこの二人に作れば、その先は見えているからね。当然国王が欲しがるのは……。
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