第159話 魔法の考察、時々屋敷

 サラと二人で森に更地を作ったので、今日から屋敷の建設に入る。


 まぁ全部俺がやったんだけどね。それなら何故、サラを同行させたのか?


 サラに俺が使える魔法がどういうものか、この世界でも使える魔法にはどういうものがあるのかを、見せる為です。


 魔法はイメージですから、イメージを覚えさせる為ですね。俺が前世で見ていたアニメや漫画の魔法を同じように、アニメではなく現物を見せて覚えて貰う。


 イメージを覚えたから、全部の魔法が使えるようになるとは思いませんが、サラの適性が分からない以上、色んな魔法を見せるしかない。


 これまでの魔法の考察では、属性魔法も後天的に発言する可能性が大いにあると、思っているのでその実験でもある。


 サラは何もスキルを持っていなかったので、言い方は悪いがサンプルとしては最適なのです。スキルを持っていないサラが、レベルを上げただけで身体強化をマスターしたことで、一つの答えを導き出したのです。


 身体強化にはHP、MP以外の条件はないということが確定しました。


 ロイスが持っていたスキルは計算スキルだったから、身体強化には関係なさそうなスキルなのでこの時点でも、ほぼ分かっていたんですが、それでもスキルは持っていたから、確定では無かった。


 確定したのは良いのだが、もしかしたら、関係ないようなスキルを持っていると、逆に身体強化を覚えるのが遅くなるかもしれないという疑問も生まれました。ロイスが覚えるのが一番遅かったですからね。


 まぁフランクも計算スキルと鑑定を持っていたけど、ロイスよりは早かったから、何とも言えませんが……。


 後天的に属性魔法を発現する可能性の根拠は、魔法も一応スキルと考えらるからです。そうじゃないと、アイテムボックスの説明がつかない。


 スキルのアイテムボックスの時間経過、容量はMPで決まるから、これも一種の魔法だと考えられる。


 それに多くの人が持っている職業スキルも無制限に使えてるように見えるが、本当は、微量だがMPを消費している。


 これは木工とか鍛冶のような魔力を使わないスキルの人が一日作業した後に、鑑定を掛けた時に判明した。


 一日作業したらHPがどれくらい減るのか調べたくてやったのだが、思わぬ副産物的に知ることが出来たのです。


 量の差はあってもスキルも魔法もMPを消費するなら、どちらも魔法と言えるし、どちらもスキルと言える。


 スキルを魔法というのにはMPの消費が少な過ぎるので、魔法もスキルと言う方がしっくりくる。


 スキルなら後天的に発現しても全くおかしくない。だけど魔法の場合は適性があると考えれば違和感がない。


 実際、属性魔法としてはステータスに表示されていないが、闇属性のティムやスリープを魔方陣なしで使える人もいる。


「サラさ……、俺が使っている魔法をイメージして出来なくても良いので、見てる間に練習していて下さい」


「はい、私もあの木を切る魔法を使ってみたいので、練習してみます。あの木を切るつもりで練習していますね」


 サラのMPなら理論上は魔法を使うことは出来るはずだ。これでもし風魔法で木が切れて、属性魔法がステータスに表示されたら物凄い発見だ。


 直ぐには表示はされないだろうな。これで表示されたら無属性も闇属性も表示されているはずだから……。


 あれ? でも俺は魔法を使ったら直ぐに表示されたよな? 俺はチートだからと気にもしなかったけど、よく考えるとそれもおかしいんだよな。


 あ! これってもしかしてそういうこと?


 スキルの発現には条件があるという事で、それを効率的にさせた結果、発現を早めたけど、これも経験値=習熟度ということ?


 俺のチートの一つ経験値100倍はレベルだけだと思っていたけど、スキルや魔法の発現にも関係してたのかも?


 スキルの発現には条件があることも確かだけど、経験値も必要と考えれば辻褄が合うよね。


 学校ではスキルの発現をする為に条件を満たすようにやっているけど、直ぐには発現しない。それなりに時間が経って発現する。これも良く考えれば人より多くやった人は適性もあるだろうが他の人より早い。


 そういう人は経験を多く積んだ、経験値が多い。俺は経験値が100倍……。


 これを魔法に当てはめると、魔法の種類じゃなくて経験値と考えれば、俺が一つの魔法を使っただけで、ステータスに表示されたことに違和感がない。


 スキルは条件と経験値、魔法は魔法の使用と経験値、これが揃った時ステータスに表示される。


 これが正解なら、結界魔法と身体強化が使えるエマはこれを使い続ければ無属性の表示が出るかも? 勿論、身体強化だけでも使い続ければ同じだけど。


 これも魔法の種類で必要な魔力量が違うように、種類によって経験値が違うと考えれば物凄く納得できる。


 これは是非サラに魔法を成功させてもらいたい。そしてそれを毎日練習として使い続けて貰えば、属性がステータスに表示されるかも?


 これも練習としての経験値だけじゃなく、魔物を倒すことで得られる経験値も関係するなら、サラのレベル上げを魔境の深部でやれば、属性の表示が早くなる可能性がある。


「ユウマさん! また考え事ですか?」


「あ! またいつもの悪い癖です。いけませんね。いつもサラに声を掛けられるまで気が付かないなんて」


「それで、今回は何を思いついたんですか?」


 サラはいつも傍にいるから、俺がこの状態になった後、必ずと言って良いほど何かをやるので、当然のようにそう聞いてきた。


「それがね、スキルと魔法について考えていたら、凄い仮説を思いついたんですよ」


「仮説? それはどんな?」


 そこで俺はサラに、今思いついた仮説について話して聞かせた。当然、俺の経験値100倍は伏せているが……。


「成る程、その仮説が正解なら、私もステータスに魔法が表示されるかもしれないんですね」


「そうです。身体強化や結界の魔法は日頃そんなに使いませんから、表示されるまでの経験値が増えない。でもそれを意図的に毎日MPの限界まで使えば、表示される可能性が高いという事です」


「それには先ず、魔法を使えるようにならないといけませんね。あ! それなら一日中身体強化し続けてもいいのでは?」


「サラさ……、それは無理ですよ。身体強化してるとドアも開けられませんよ。軽くやってるつもりでも、ドアノブを壊しますよ。それに身体強化は外に漏れる魔力が少ないですから、MPの限界まではちょっと……」


「あ~~ そうですね」


 聡明でもこういう事は間違えるのね。まぁスキルや魔法なんて考察したこともないだろうから、当然だね。


 一応、結論も出たので、それぞれのやることを始めた。


 俺は木材で囲いを作ることから始めて、いつものように囲いの外側には堀を作った。もうこの作業も慣れたものだから、ほぼ一日で完成させたら。


「人間? ……」


 サラがそう呟いたのが聞こえた。 


 それは俺も分かっているよ。人外認定されるのは仕方がないと思っている。でも流石にサラに言われるのは心に来る。


 これから二人で生きていくんだから、隠し事は減らして行かないといけないから、余計に人外認定されるだろうが、サラには慣れてもらうしかない。


 全てを話せれば問題はないんだけどな……。


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