第180話 これ売ったらいくら?

「ユウマさん、なぜそんな顔して黙っているのですか?」


 どうしよう? 答えていいものか? 俺が異質なのはサラには分かっているだろうけど、俺のスキルが異常なのも教えていいものか?


「えっとですね、魔石にスキルは付与できたんですが、俺のスキルを付与するには高魔力帯の魔石にしか出来ないんですよ」


「それはどういう意味ですの?」


 ここまで来たら正直に話そう。生涯を共にする人に隠し事をするにも限度がある。転移者という事だけは絶対に言えないが、それ以外は話しても大丈夫だろう。


 創造神の加護の事も言えないかな? 今まで沢山の人を鑑定してきたけど加護持ちの人を見たことないからな。もしかしたら、人類最高レベルの人なんかは加護を持っていた可能性はあるけど、確認の使用もないし、俺の知る限り記録にも出ていなかった。


「高魔力帯の魔石にしか付与出来ないということは、俺のスキルの習熟度が高すぎるという事です。スキルにレベルはありませんが習熟度が上がると出来ることが増えるのはサラも知っているでしょ」


「はい、フランクさんやグランさんの鑑定スキルは称号まで見えると聞いています」


「そうです。錬金術でも同じです。習熟度と魔力量で出来ることが増えたり、完成品の品質が良くなります」


「それでもまだ分かりません。なぜ高魔力帯の魔石にしか出来ないのか?」


 そうだよね。俺も、もう一つの実験をしないと確証はないんだよ。グランクラスの鑑定がどのクラスの魔石に付与できるかで、答えが変わってくるから。


「これはまだ仮説なんですが、俺の鑑定スキルがグランさんたちより高レベルだから高魔力帯の魔石にしか出来ないという事です」


「え! グランさんたちより高レベル。ユウマさんの鑑定は何が見えるんですか?」


 しょうがないこうなったら数値の事を話すしかないな。


「俺の鑑定では称号はもちろんの事、個人の能力というか、潜在力のようなものが数値化されて表示されるんです」


「数値化?」


 分からないよな? こんな説明では……。 実際見せないと理解出来ないよね。


 仕方がない、サラの鑑定結果を紙に書いて見せるか。


 名前 サラ・ミュラー       

 種族 人族

 状態 良好

 職業 貴族(王族)

 レベル 18

 HP 910/910

 MP 1450/1450 

 スキル    

 魔法  生活魔法

 称号  生還者


 力  14

 速さ 15

 知能 28

 器用 18

 運  30

 

 サラの称号、生還者は死の淵から生還した人に付く称号。病院で助けた人に多く付いていた。それを鑑定すると病気に掛かり難いと出た。


 ちなみに俺の現在のステータスは


 名前 ユウマ (コンドウ) 

 種族 人族

 状態 良好

 職業 商人、大賢者

 レベル 35 (70)

 HP 1800/1800 (3550/3550)

 MP 2820/2820 (5620/5620) 

 スキル(言語理解EX) 鑑定(EX) (インベントリEX)アイテムボックス

    気配遮断 気配感知 魔力感知 付与術 木工 陶器 錬金術 剣術 体術

 魔法  風魔法 水魔法 闇魔法、火魔法 土魔法 光魔法 無魔法

(固有スキル) (創造魔法)

 称号  (創造神の加護)


 力  38

 速さ 35

 知能 50

 器用 45

 運  50


 比較するのに必要だろうからエリーさんのステータスも書いておくか


 名前 エリー・サザーランド

 種族 人族

 状態 良好

 職業 貴族

 レベル 8

 HP 410/410

 MP 650/650 

 スキル    

 魔法  生活魔法 裁縫

 称号  慈愛


 力  9

 速さ 7

 知能 19

 器用 23

 運  18


「サラとエリーさんのステータスはこんな感じです。数値という意味が分かりますか?」


「これが数値。この数値のことを教えてください」


 気になるよね。だから数値についても俺の知っている限りの事を説明した。


「そうすると数値はレベルでも変化するし、日頃の生活でも変化するという事ですね。そして数値によってスキルの修得率や速さが変わると」


「ユウマさん、その説明ですと、わたくしが裁縫のスキルを持っているのは器用の数値が高いからという事ですか?」


「数値が高いから持っているというのも間違いではありませんが、スキルを取得したから数値が高いとも言えます」


 正直、この分野の事もまだまだ研究が必要なんだけど、そんな時間が無いんだよね。


 今現在の俺の知識だって5年以上かかってこの程度しか分かっていない。この数値の事でも、数値がいくつ以上だとスキルを覚えやすいかとか、スキルを取得すると数値がどう変化するかとか研究しようと思えばいくらでも出来る。


「数値については何となくわかりました。そうするとユウマさんの鑑定は物凄く精度というか習熟度が高いという事ですね」


「そうです。だから高魔力帯の魔石にしか付与できないし、付与できてもこれを世の中に出して良いものか悩んでいます」


 スキルが魔石に付与できることを公表すれば、この鑑定を付与したのは誰かという事になる。グランクラスの鑑定を付与したものなら誰がとはならないと思うけど、付与をするには付与術のスキルがいる。


 現状鑑定持ちのフランクは錬金術のスキルも付与術のスキルも持っていない。もしかすると錬金術のスキルが無くても付与術のスキルを取得できるかもしれないが、現状付与術を持っているのは錬金術師だけ。


 錬金術と付与術が相性が良いのは証明されているからな……。


 あれ? そうすると属性魔術師と付与術とはどうなんだろう?


 俺は錬金術も属性魔術も持っているから、分かり辛いが、魔道具の生産上錬金術師に付与術を習得させたけど、属性魔術師にやらせたらどうなるのか?


 やばい、調べたいことがどんどん増えていく。こんなことばかりしてるから、職業に冗談のように大賢者なんて出るんだな。 あとで隠ぺいしとかないとな……。


「この鑑定の魔石は世の中に出せませんね。それだけは断言できます」


 サラが断言するぐらいだから出すのは止めよう。そしたらあれも駄目かな?


 あれとはアイテムボックスが付与できた魔石の事。これもインベントリではないが、収納量が物凄く多くて時間がほぼ停止に近いもの。


 これはサラにも言うのをやめよう。言わなければ無いのと同じだからね。


「ユウマさん、ユウマさんはアイテムボックスのスキルを持っていますよね。それは付与できなかったんですか?」


 なんで~~~ そこに気づくかな……。そこはスルーしてよ……。


「それは……」


「ユウマさんが口ごもるという事は、アイテムボックスも鑑定と同じように習熟度高いんですね」


 本当にサラって鋭いよね。知能の数値が高いのもあると思うけど、性質何だろうか?


「そ、そうです。ちょっと世間には出せない物が出来てしまいました」


 スキルの状態なら他の人には分からないことでも、魔道具にしてしまうと全てばれてしまう。この世界のアイテムボックスは魔力量で容量や時間の遅延が決まってくる。


 ダンジョンからでるアイテムバッグは魔石の大きさで決まっている。これも出る階層が深くなれば、高魔力帯の魔石同様、容量と時間遅延が変わってくるのかもしれないが、現状深層まで行っている冒険者がいない。


 こちらは創造魔法で作った物なら容量も時間遅延も調節できるから、世の中に出そうと思えば出せるけど。それをしなかったのは作れるのが俺だけだからだ。


 創造魔法はサラにも言えない。これは固有魔法でこの世界の人は絶対に持っていないものだから。


「どういう物かは聞きません。聞くのが怖いですから」


 偉い! それが大正解! 聞くのが怖いと思えるその感性、素晴らしいよ、俺の未来の嫁。


「ちなみに、ダンジョンから出るアイテムバッグはいくらぐらいで取引されているの?」


「そうですね。ダンジョン産の物は、国に権利がありますからアイテムバッグのような特殊な物は国が買い上げますから、ギルドと冒険者にいくら払われているかは知りません。ですが、国から貴族に払い下げられる時は、最低、白金貨1枚からだと聞いています」


「ユウマさん当家も所持していますが、ご当主様の話だと白金貨5枚だったそうですよ」


 白金貨5枚、日本円で5000万、俺の財産は今いくらなんだろうな?以前グランさんに聞いた時から相当経っているから、聞くのが怖いんだよね。


 間違いなく日本円にして億単位だろうし、下手したら0が一つ増えているかも……。








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